第3講 3面等価とGDPの定義

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2014年10月6日更新

GDPの3面等価[top] 

GDPは3つの側面からとらえることができます.
3つの側面とは,(1)生産(2)分配(3)支出.
GDPを,生産,分配,支出の3つの側面からとらえること
ができますが,それらは互いに等しくなることを,
GDP(あるいは国民所得)の3面等価といいます.

生産は付加価値の合計=賃金など生産要素の投入に対する
報酬として分配されます. → 総生産=総分配
分配を受けた所得は,財やサービス等への支出に向かいます.

生産=分配=支出

が成立します.この関係を以下の産業連関表で確認する
ことができます.

産業連関表[top]

経済の中間財と最終財の取引をすべて包括的に記録した表
があります.それがレオンチェフによる産業連関表
(Input-Output table,簡単に I - O表)です.この表からも
3面等価を確認することができます.

  産業連関表の概念図

            産業連関表の仮設例

(注)「雇用者報酬」は以前は雇用者所得と呼んでいました.

テキスト表3-4(P.46)も参照.

産業連関表の見方(国内概念)GDE(Gross Domestic
Expenditure)=国内総支出
(1)ヨコに見る.販売先別
1産業の販売額=(2+10+1)+(7+2+0+1- 6)
       = 中間需要 + 最終需要 =17

(2)タテに見る.費用の構成別 GDP(Gross Domestic
Product)=国内総生産
1産業の生産額=(2+3+2)+(2+6+2+0)
 = 中間投入(原材料費用)+ 粗付加価値 =17
 ここで,粗付加価値=売上額 - 原材料費用
 =固定資本減耗+雇用者報酬+営業余剰+間接税- 補助金

売上額から原材料費用を差し引いた付加価値は,従業員に
対する賃金の支払や,資本提供者への報酬として分配されます.
営業余剰の内容は,営業利潤,支払利子,動産や不動産の
純賃貸料,のれん代,個人業主所得などです.

GDP=GDE

ケータイマクロ問題[top]

【ケータイマクロ問題】====================

上の産業連関表からGDPとGDE(GDP=GDE)を計算
してみなさい(単位は兆円).
答えは以下の選択肢のどれでしょう.
=======================================

【ケータイマクロ,三者択一問題】

上の【問題】の答えは以下のどれでしょう(単位は兆円).
1 239
2 313
3 506

クイズの答え

GDPの正確な統計上の定義と関連概念[top]

GDP=GDE
○国内総生産(GDP)=雇用者報酬+営業余剰
      +固定資本減耗+間接税- 補助金
  GDPは粗付加価値の合計額

○国内総支出(GDE)=民間最終消費支出
   +国内総固定資本形成+在庫品増加
   +政府最終消費支出
   +財サービスの輸出 - 財サービスの輸入
   GDEは最終財への支出の合計

GDEは内容を組み替えて次のようにも表現されます.
新聞の速報値ではこちらが使われます.

国内総支出(GDE)=民間最終消費支出
+(民間住宅+民間企業設備+民間在庫品増加)
+(政府最終消費支出+公的固定資本形成+公的在庫品増加)
+財サービスの輸出 - 財サービスの輸入

実際に発表される表は以下のサイトを参照してください.

(関連サイト)内閣府,経済社会総合研究所による最近の四半期別GDP速報:
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

簡単に表す場合は,次のように書きます.

 GDE = 民間消費+民間投資+政府支出+輸出−輸入

記号では,次のように書きます.

 Y = C + I + G + EX - IM

○国民総所得(GNI)=国内総生産(GDP)
     +海外からの要素所得 
     − 海外への要素所得+交易利得(損失)
   国内概念と国民概念(国内総生産と国民総所得の違い)

(注意)GNIは従来はGNP(国民総生産)と呼ばれていました.

○NNP(Net National Product:国民純生産)
   = GNI - 固定資本減耗
   NNPは市場価格表示の国民所得ともいわれる.

○NI(National Income:要素費用表示の国民所得
= NNP - 間接税 + 補助金
=雇用者報酬+営業余剰+海外からの純雇用者所得
+海外からの純財産所得
 狭義の国民所得がこれ.市場価格と要素費用(価格)

○財サービスの輸出 - 財サービスの輸入
+(海外からの要素所得 - 海外への要素所得)= 経常海外余剰

注意:経常海外余剰は国民所得の概念になります.

テキストP.21の図2-1を参照のこと.

【補足】
3面等価が厳密に成立するのは,「要素費用表示の
国民所得」の段階です.


GDPの公式統計は,内閣府(旧経済企画庁)『国民経済計算年報』


メールマガジン[top]

政府(内閣府)は,2000年10月,GDP統計の集計方法を
一部修正すると発表しました.新GDPでは,以下の点が
変更になりました.
1)受注ソフトウェアを投資項へ計上
2)一般政府の所有する社会資本の固定資本減耗を計上
3)医療費(保険負担分)を民間最終消費支出から政府
最終消費支出(直接の負担者)に移行計上
この結果,新GDPは旧GDPに比べて約40兆円増加しました.
詳しくは,私のメールマガジンを参照してください.

第22回 新GDP統計

関連サイトの紹介[top]

GDP関連データは,ネット上では,内閣府内の経済社会総合研究所のGDPコーナーにあります.

内閣府 GDP関連ページ: http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

最近のデータは特に以下を参照してください.
国民経済計算確報
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kakuhou/kakuhou_top.html

統計の見方
用語の解説
もありますので,読んでおきましょう.

内閣府 SNA産業連関表
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/sangyou/sangyou_top.html

総務省 産業連関表



世界のGDPランキング
http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

県民経済計算
GDP統計の都道府県版に相当するのが,県民経済計算です.
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/kenmin/kenmin_top.html
県民経済計算 統計表一覧
統計データ一覧の中にエクセル形式のデータがあります. 

内需と外需[top]

GDP を支出面からとらえて,記号でかけば,次のようになります.

 Y = C + I + G + EX - IM

左辺が供給,右辺が需要になりますが,正確にかけば,

 Y + IM = C + I + G + EX

となります.輸入(IM)は海外からの供給です.
輸出は海外からの需要です.

内需 = C + I + G
外需 = EX - IM

と呼ぶことがありますが,上でみたように, EX - IMを
外需とみるには問題があります.
また,内需には輸入分も含まれているということにも
注意をする必要があります.

 Y(GDP)= 国内需要+海外需要
C + I + G には輸入も含まれているので IM を引くことで
国内需要だけを取り出すことができます.国内で生産さ
れた財サービスは国内で需要されるか,海外で需要され
るかに分けられるのです.
従って,内需=C + I + G - IM ,外需= EX ととらえるの
が的確です.

以下の日経新聞に掲載されたコラムは,そのあたりを的
確に指摘したものです.

 日経新聞コラム「大機小機」1998年9月19日 
 「外需とは何か」

GDPやGDPの成長率のグラフを見てみよう[top]

講義ノートの「付録B 経済データ」に主な経済データの
グラフがあります.参照してください.
上記の統計集からデータをひろって,エクセルなどの
表計算ソフトを使って,自分でグラフを作成してみましょう.

○日本の実質GDP

○日本の実質GDPの成長率

○日本のGDPの構成:消費が約6割を占める

○日本の実質GDP成長率の寄与度


インターネットでデータを探そう[top]

日本のGDP関連のデータをインターネットから探してみま
しょう.どこのサイトにどのデータが掲載されているかを
見つけることが重要です.データを集めたら,表計算ソフト
を活用してグラフに作成しよう.

ケータイマクロ問題2[top]

以下の数値からGDPを計算するといくらになるか.単位は兆円

政府最終消費支出  95
公的固定資本形成  22
公的在庫品増加    1
財貨サービスの輸出 85
財貨サービスの輸入 60
民間最終消費支出 308
民間住宅      18
民間企業設備    88
民間在庫品増加    1
雇用者報酬     60
営業余剰     170

1 556兆円
2 557兆円
3 558兆円

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University