小川 弘和
−熊本学園大学経済学部−
このページは、主にMacOSX環境を中心に、ASCII pTeXによる和文縦組論文執筆のためのツールを提供することを目的とするものである。
| ●utf.sty−Unicode利用パッケージの決定版− |
2003年1月27日記
2003年1月28日修正
ums.styは、Unicodeフォントさえ用意できればプラットフォームを問わず、JIS X 0208外の文字種を容易に用い得る優れたパッケージであるが、欧文フォントとしての扱いを受けるため縦組時に僅かながらメトリックが乱れることがあるなど、技術的にみて、なお改良を加えることが可能なものでもあった。また、Win32系OSに備わるMS明朝・ゴシック両TrueTypeフォントに含まれる、JIS X 0208外文字種を利用可能にするということが出発点であったが故の“Unicode-MS-font”に由来する名称も、MSフォントへの物理的依存から脱却してクロス・プラットフォーム化を実現した現段階に到っては、やや座りの悪いものになりつつあったといえよう。かかる状況に鑑み、ums.styの改良版として齋藤修三郎氏によってリリースされたのが“utf.sty”である。齋藤氏は、ums.styを参照しつつ、新たに作成されたTFM・VF群を以て和文フォントとしての扱いを可能にするとともに、エンコーディングにUTF 16および、それでは扱えない範囲に関してはAdobe Japan 1-5のCID No.を直接指定する方法との2種を採用することにより、UCS 2(Unicode 1.0相当)をベースとするums.styの扱える範囲をはるかに越える文字種(Unicode 2.0相当)へのアクセスを実現されたのである。
かかるutf.styの仕様は、あらゆるプラットフォームにおけるUnicodeフォント利用の更なる適正化と同時に、Adobe InDesignやEG Word等、ごく限られたアプリケーションでしか実現されていない、Adobe Japan 1-5規格の全グリフへのアクセスを、フリー・ソフトウェアのみで可能にするという快挙を実現するものでもある。Adobe Japan 1-5規格を実装するフォントは現在のところ、MacOSXにバンドルされているヒラギノPro OpenTypeフォント等、僅かに過ぎないものの、規格そのものはプラットフォームを越えた標準である以上、utf.styのこの実装は、その将来における各環境での容易な利用の道を準備する、卓越したものと高く評価できるだろう。
齋藤氏の出発点は、ヒラギノ・フォントのグリフへのフル・アクセスを可能にすることにあったようだが、同時に、それが機能的にはums.styに対し上位互換性を有する、プラットフォームを選ばずに利用できるパッケージであることを踏まえ、このスタイルに特定の物理フォントや環境を感じさせぬ“UTF”という名を与えられた。ここに到り、ums.styは機能・名称の両面に渡り、「クロス・プラットフォーム利用可能なUnicodeフォントへのアクセスのためのスタイル」という、その基本的性格に相応しい後継者を得たといえよう。すなわち、utf.styこそ、今後pTeX環境におけるJIS X 0208外文字種利用のためのスタンダード、決定版スタイルとして、機種を越えて育っていくべきものと考える。このように、JIS 0208外文字種を容易に利用し得る方法は近年急速に整備されてきたが、その道筋には、出発点となった稲垣淳氏によるums.sty、角藤亮氏によるそのクロス・プラットフォーム運用を可能にしたVFが、欠くべからざるものとして存していた。よってここに、稲垣・角藤・齋藤の各氏に深く感謝の意を表するとともに、齋藤氏のご厚意により、ums.styにかえてutf.styを組み込んだpTeXパッケージの配布を開始するものである。
ttk氏によるpTeXの内部処理UTF-8化拡張である“upTeX”(ver.0.30, based on ptetex3-20090610/teTeX-3.0/ASCII pTeX-3.1.10。eptex/euptexを含み、またbeamerやhyperref関連ファイルは最新版に差し替え。)をLion環境で構築したものを、TeXShopからの使用を主目的に、任意のフォルダにDrag & Drop、Double clickすればインストールが済むバンドル・パッケージにしてみたもの。これによりUSBメモリから直接使用することもできる。また、TeXソース・ファイルや画像ファイルをDropするとタイプセットやbbファイルの作成、簡易エディタによるソース編集などの作業ができる、簡易フロントエンド/統合環境としての性格も備えている。なお、Drag & Drop pTeXの機能はすべてこちらに包含されているため、配布物をこちらに一本化した。また、teTeX/ptetex3の開発停止、ptetex3へのパッチ形式で提供されていたupTeXのTeXLive対応形式への移行予定にともない、ptetex3ベースでのパッケージとしては、バグ修正を別にすれば、これが最終版となる。
Download(約200MB)
20110819版を20111010版相当に更新するための差分ファイル。UpTeX.app/teTeX/bin/dvipdfmxを差し替えること。
Download(約500KB)
| ●TeXPad alternative (1.3) |
UpTeX.appの内蔵簡易エディタ“TeXPad”を、OS X Lionのフルスクリーン機能に対応させてみたもの。UpTeX.app/TeXPad.appを差し替える。なお、Snow Leopardでもアプリ自体は動作はするが、当然フルスクリーン機能は無効なので差し替える意味はない。
Download(約170KB)
ESP版の成果を吸収して開発が進んでいる本家GPL版Ghostscript。以前のような和文フォントの扱いのうえでの難がなくなったものと思われる。Mac OS X 10.6の環境で構築した64bit版。ただし私の環境ではBrotherのレーザープリンタ(HL1440など)での印刷品位に難が感じられたため、下記のESP Ghostscript 7.07.1も当面残しておく。
注意:Lion環境では、/usr/libexec/cups/filter/gstorasterが印刷機能に悪さをする模様。その場合このファイルを削除されたい。GSをプリンタドライバとして使うならば、7.07.1の方を使われたい。
Download(約17MB)
gdevlips-2.4.0をはじめとする数多くのデヴァイス・ドライバを組み込み、MacOSX 10.2以降で標準装備となったCUPS(Common UNIX Printing System)を介し、CanonやEPSONなどのOSX未対応レーザー・プリンタでもファイルの印刷を可能にする設定を施したもの。Mac OS X 10.6の環境で再構築した専用版。デフォルトの64bit版バイナリではbboxなどのデヴァイスが正常に動作しないようなので、その種のものを常用する場合には、同梱の32bit版バイナリを上書きインストールすること。
Download(約13MB)
TeX等で利用可能なType1 フォント。DVIファイルをdvips・dvipdfm等でPDFファイルに変換した場合には、Type1 フォントを埋め込むことが可能。そのための設定ファイルも同梱されている。
Download(5.9MB)
| ●平成明朝補助漢字-W3 Type1 フォント・リスト |
上記フォントをtestfont.texにより出力した一覧表を、PDFに変換したもの。
Download(6.6MB)
和文論文用後注作成マクロ、“endnotesj.sty”とそのサンプル・ファイルの汎用アーカイヴ(v2)。utf.styのインストールされた環境では、より美しい注組が可能になる。
Download(400KB)
『日本史研究』、『史学雑誌』、吉川弘文館の書籍風論文組版を行うためのクラスファイル集。あくまで「雰囲気」程度のものであり実用品ではないが、pTeXによる縦組学術誌組版の可能性について考えるうえでのサンプルにはなるだろう。
Download(600KB)
・MacWiki
Mac OS X上の学術系ツール・オープンソースソフトウェアに関する情報の蒐集・共有を目的とするWiki。pTeX, TeXShopなどについての情報も多く蓄積されている。
・TeXShop
Richard Koch、Dirk Olmes両氏による、teTeX・pTeX等のフロントエンドとして機能するTeX文書執筆・作成統合環境。銭谷誠司氏による日本語化等や宍倉光広氏によるマクロ機能の実装等によって、日本語環境への対応も充実している。
・“mi”ページ
上山大輔氏による、OSXでのTeXソース記述に好適なfreeのエディタ“mi”の配布サイト。
・TeX Tools for mi
栗田哲郎氏による、pTeXと“mi”とを連動させ、統合環境を構築するためのツールの配布サイト。
・髑髏旅館
家内制手工業サイト。そのなかの“髑髏石の秘宝館”には、文系縦組学術におけるTeX利用に関する、私の幾つかの雑文が置かれている。
2011年11月14日
MacTeX/TeXLiveが最新のアップデートでOTF/日本語対応updmapを取り込んだとのことなので、Additional Tools for MacTeX/TeXLive 2011の配布を停止した。ただし、ヒラギノ・フォントの使用には、自前でのフォントのシンボリックリンクとマップファイルの用意が必要となるはずである。
2011年10月18日
UpTeX.appの内蔵簡易エディタTeXPadをLionのフルスクリーン機能に対応させた差し替え用ファイル、TeXPad alternativeを用意した。
2011年10月10日
Drag & Drop UpTeXを更新。Lion上で構築したdvipdfmxにはjpgを扱うとAbortする問題があったので、Snow Leopard上で再構築したものに差し替えた。また、20110819版用の差分ファイルも用意した。
2011年8月19日
Drag & Drop UpTeXを更新(hyperref関連ファイルの最新版への差し替え、ファイルをDropしてターミナルに渡した際の挙動を、正常に処理終了した場合にはターミナルのウィンドウを閉じるように変更。)。またOptional Script for UpTeXはこの更新に取り込まれたので、配布を終了した。
2011年8月17日
Optional Script for UpTeXの配布を開始。
2011年7月31日
Additional Tools for MacTeX/TeXLive 2011の配布を開始。
2011年7月25日
Drag & Drop UpTeXを更新。また、Drag & Drop pTeXをUpTeXに統合・廃止した。
2011年7月23日
Drag & Drop pTeX/UpTeX、ESP Ghostscript7.07.1のOS X 10.7 Lionでの動作検証を済ませるとともに、GPL Ghostscript 9.02の配布を開始した。それにともない、Lopard以前のシステム用パッケージの配布を終了した。
まれにLeopard以前のシステム用パッケージの再配布を求められることがあるが、ファイルも処分してしまっており、そのつもりはない。理由は、システムのサポートが終了してセキュリティ・ホールのフィックスなども期待できないこと。パッケージ自体の内容も古びて最新のTeX/Ghostscript等との機能・操作・脆弱性修正等のズレが大きくなってきたこと。これらから、システム・パッケージともに使用を推奨すべきではなくなったと考えること。ゆえに自分でももはや使っていないこと。以上による。