12月13日の18:00から,熊本駅前のくまもと森都心プラザのプラザホールで「熊本市のミライの移動を考える」と題して,熊本版MaaSミライセミナーが開催されました.
このセミナーは,本年度の熊本市の事業として,これまでに2回開催された「熊本版MaaS勉強会」で議論してきた熊本の輸送サービスの課題や求めたい未来の移動サービスについての報告を受けた上で,添付のようなポスターにあるような構成で実施されました.
主役は「MaaSと交通まちづくり」と題して基調講演をされたIBSの牧村和彦氏でした.今や彼は時の人ですね.一方,溝上教授も第2部のパネルディスカッション「熊本版MaaSのあるミライ」のパネリストの一人として参加しました.パネリストは市のドイツ人の国際交流員ザイツさんから東大准教授の伊藤先生まで,多士済々でしたが,コーディネーター以外に6名のパネリストで50分の時間でしたので,一人6~7分でした.溝上教授もパネルディスカッションでの議論の締めくくりを依頼されていました.最近は体力だけでなく脳も推定しているせいでしょうか,あまりうまいまとめ方ができなかったのですが,「熊本市のミライの移動サービスの向上のためには,熊本版MaaSの推進+熊本的運輸連合化+丁寧なモビリティマネジメントの3本の矢で推進する必要がある」と締めくくりました.牧村氏や伊藤氏は日本のMaaSが次の時代に入るターニングポイントになるシンポジウムであると位置づけていました.そんなことなら,もう少し気の利いた発言を準備しておけば良かったと思っています.
知らなかったり,リモートでも参加できなかったりした卒業生,関係者の皆さん,惜しいことをしました.
実証実験開始以来,追跡取材をしている熊日のK記者の記事を下記のサイトからコピーして掲載します.
https://kumanichi.com/articles/473998
熊本日日新聞 | 2021年11月21日 07:23
熊本市東区の健軍地区で、人工知能(AI)を活用した相乗りタクシーの実証実験が始まって1カ月が過ぎた。AIが最適な配車と経路を判断するという触れ込みだが、実際はどんなものなのか。22日の実験終了まで残りわずか。駆け込みで「ピアクレスAIタクシー」に試乗した。(久保田尚之)
まずは、スマートフォンで専用アプリ「ピアクレスMaaS(マース)」をインストール。続いて熊本市交通政策課に連絡し、IDとパスワードを入手する。これで準備完了。
11月中旬、東区の市動植物園で取材後、近くの庄口公園駐車場に移動。スマホのアプリを起動させると、周辺の地図が表示された。画面をタッチして出発地(現在地)と目的地(健軍町電停)を選択。地図を拡大すれば、ピンポイントで場所を指定できる。
続いて「経路検索」をタッチすると、「徒歩1・1キロ(13分)」「AIタクシー 約300円(5分)」「市電・徒歩0・6キロ 170円(11分)」と複数の経路が示された。タクシー以外の情報も提示され、どの移動手段が最適なのか時間と料金で判断できる。
「AIタクシー」を選び、人数と時間を入力すれば予約完了。この間、わずか1分足らずで案外簡単だった。料金は予約時に確定し、300円。実証実験ということもあり、料金は通常の半額以下だ。
待つこと15分。タクシーは時間通りにやってきた。この間、スマホ画面でタクシーの位置をリアルタイムで確認できる。予約のタイミングや方向が合えば、他の利用者と相乗りになるが、この日は2度の乗車で相乗りにはならなかった。市によると、直近の1日の利用件数は20~30件。利用者がさらに増えれば相乗りの機会も増えるのだろう。
健軍商店街のタクシー乗り場では2人のお年寄りがAIタクシーを待っていた。「最近、リピーターが増えてきた。『料金が安いので助かる』という声が多い」と乗り場の女性スタッフ。この乗り場から乗車するのは70~80代が中心。本来はスマホを使ったサービスだが、スタッフに配車を頼んだり、電話で予約したりするケースが多いという。
ここにもデジタルデバイド(情報格差)が…。高齢者ら「デジタル弱者」の利便性向上や、若い世代の利用促進がサービス成功の鍵を握りそうだ。
●相乗り前提、効率アップ 熊本学園大・溝上章志教授に聞く
ピアクレスAIタクシーの実証実験は熊本学園大、熊本市、タクシー会社のタクルーなどの実行委員会で実施している。実行委会長の溝上章志・熊本学園大教授に狙いや今後の見通しを聞いた。
-なぜ、AIタクシーが必要なのですか。
「地方都市では路線バスが減便・廃止となる中、交通弱者の移動手段の確保が課題だ。一方、タクシー業界は人手不足で運転手は高齢化している。路線バスを補完し、タクシー事業者の運行効率を上げるには、AIタクシーのような路線バスとタクシーの“中間的なサービス”が必要になる」
-中間的サービスとはどのようなイメージですか。
「タクシーと違うのは相乗りが前提で、それによって料金を安くできる。料金は距離に応じて事前に確定する。当然、路線バスのように定時・定路線ではなく、希望する時間にドアツードアで移動できる」
-荒尾市では昨年10月、同じような仕組みの「おもやいタクシー」の運行が始まりました。
「荒尾市では2度の実証実験を経てスタートした。最初の1カ月の利用は470件だったが、1年後には960件と倍になった。相乗り率も当初の14%から30%になり、効率が上がっている。地方都市で幹線バスを補完するモビリティーとして、市民の利便性向上につながっている」
-今回の実験で健軍地区を選んだ理由や狙いは。
「健軍は市電の終点があるが、その先の公共交通は十分ではない。都市郊外部の乗り換え拠点に効率的に人を集める方法として、AIタクシーの可能性を探りたい。さらに商店街で買い物すれば半額乗車券を発行するなど、商店街との連携も新たな試みだ」
-熊本市内でサービスの実現可能性はありますか。
「市内全域で導入するのはバスや市電への影響が大きく、難しいだろう。既存の公共交通機関との役割分担をきっちりやる必要がある。そのためには適切なエリアや時間帯の設定が重要になる。予算が確保できれば、違うエリアや同じ場所でも条件を変えるなどして実験を続けたい」
◇みぞかみ・しょうし 熊本市出身。熊本大大学院教授を経て現職。専門は都市・交通政策。66歳。
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2019年3月に大学院を修了した天藤奈菜さんの卒論と修論をまとめて学術論文にし,土木学会論文集D3(Vol.75, No.6, pp.I_717-I_725, 2020.4)に掲載された「バスロケと乗込調査データによるコミュニティ バスの運行実態の分析と適切な時刻表の設計」が,第58回鉄道サイバネ・シンポジウムにおける学生優秀論文に選定されました.
受賞者の天藤さんが受賞講演を依頼されたのですが,現在,彼女は福山コンサルタントに在職中でもあり,折角の機会でしたので,私が「公共交通が抱える課題に対する交通ビッグデータの活用」というタイトルで受賞講演をしました.このシンポジウムを開催している鉄道サイバネテック協議会は昭和38年4月に設立されたであり,同年6月からシンポジウムを開催し,今年が58回目という輝かしい歴史を持ったシンポジウムです.
サイバネティックスとは「通信と制御と統計力学の問題を、機械も生物も含めて一括して研究する学問(N.Wiener,1948 年)」であり,日本鉄道サイバネティクス協議会は,「情報・通信・制御技術の鉄道への適用」を通して鉄道におけるサイバネティクスの活用を推進している一般社団法人です.主な技術的分野は土木や機械,電気,計測・制御,情報ですが,このような幅広い分野をカバーする協議会から学生優秀論文に選定されたことは非常に光栄ですし誇らしいですね.
講演を聴かれた賞選定委員の方から,「ご講演,ありがとうございました(もっと長い時間の講演をお聞きしたかったです)。ご承知の通り,鉄道においても,地方ローカル線では,前段でお話いただいたバスと全く同じ事情を抱えており,大いに参考になったと思います。また,最後にお話しいただいたデータの件についても,まさにご指摘いただいた通りでして,聴講者(事業者とメーカが多いと思います)に,刺激を与えていただいたかと思います(溝上先生に受賞していただいて,よかったと思いました)。」という嬉しいお礼を頂きました.これまでの研究のテーマ設定や成果,学会や社会やへの発信は大きく間違ってはいなかったと確信しました.
私の20分の講演の資料を添付します.興味があったら見てみて下さい.詳細は参考論文を読んでください.
半年の準備期間を経て,10月11日(月)10:00から,健軍商店街駐車場において,健軍地区におけるAIデマンドタクシー実証実験の出発式が行われました.
出発式には,実行委員会メンバー(実行委員長の溝上,小山TaKuRoo代表取締役,有働健軍商店街理事長,松舘未来シェア取締役,江島UTMS室長,森ゴダイベスト代表社員,嶋本宮崎大准教授,安藤熊大助教,熊本市ほか)に加えて,津田熊本市東区長,井芹熊本市都市建設局も参加されました.また,在熊の全テレビ局,熊日,西日本新聞から取材があり,話題性と期待の高さが伺えました.
まず,実行委員長の溝上より,この実証実験の目的と概要をお話しした後,TaKuRoo,健軍商店街,東区長,都市建設局長の順で挨拶を行いました.私の挨拶文を下記に示しておきます.
続いて,恒例のテープカットを行いました.立派な赤白のリボンの付いたテープを,「テープカットでございます!」のかけ声の下に金色の洒落たハサミでカットしました.何故か私のリボンだけがテープに残らず,地面に落ちてしまったのは面目なかったです.
報道陣へのピアクレスAIタクシー車両,車載器,ピアクレスMaaSアプリなどのお披露目の後,私の「ピアクレスAIタクシーが出発します!」のかけ声と共に,1号車が(一体どこに向かったのかは不明ですが)出発していきました.
挨拶の時には小雨が降り出すし,終わったと思ったらぎらぎらの日差しと蒸し暑さで大変な出発式でしたが,テレビや新聞による広報によって,多くの市民がこの実証実験に興味を示し,ID/PWの取得,モニター登録,そしてピアクレスAIタクシーを利用されることを期待しましょう.
溝上実行委員長(熊本学園大学教授)の挨拶内容
本日は「健軍地区におけるピアクレスAIデマンドタクシーの実証実験」出発式にご参加いただき,有難うございます.本実証実験実行委員会の実行委員長でございます熊本学園大学の溝上より,まず,はじめのご挨拶をさせて頂きます.
この実証実験は,国土交通省の「道路政策の質の向上に資する技術研究開発」という委託研究募集に私が応募して採択された「自動運転とシェアリングが融合した新しモビリティサービスの社会/都市/生活の未来についての研究開発」の中の一つの実証研究として実施されるものです.
本実証実験は以下に述べます4つの特長がございます.
ここにあります「ピアクレスAIタクシー」は,乗車時に料金が確定しており,かつ見知らぬ人との相乗りを許す乗合旅客自動車運送サービスであり,最近よく耳にしますMaaS,つまり、様々な移動手法・サービスを組み合わせてワンストップでシームレスなドア・ツー・ドアの移動を可能とするサービスとしてのモビリティ,今回はサービス提供地域内から市電やバスへの乗換拠点である健軍町まで,またはサービス提供地域内でのバスを補完する新たなモビリティです.MaaSの導入のためにはこのようなモビリティサービスを提供する事業者が必要で,今回は株式会社地域交通HD下の株式会社TaKuRoo様には車両の提供で大変お世話になります.また,株式会社ユナイテッドトヨタ熊本様には事前調査や本実証実験のHPでの広報などでご協力を頂くなど,交通事業者が参画して頂いているのが,今回の実証実験の1番目の特長です.
実は今回のピアクレスAIタクシーと同様の相乗りタクシーは,荒尾市で2度の実証実験を経て,昨年10月1日から荒尾「おもやいタクシー」という名前で運行を始めています.運行開始当初は月に467であった利用が,コロナ禍が続いているにもかかわらず,1年を経過した9月には2倍を超える963に達しました.荒尾おもやいタクシーは,地方都市において幹線バス輸送を補完するモビリティとして,市民の移動の利便性を向上させている例です.しかし,今回のように,都市圏の乗換拠点を中心とした相乗りタクシーの可能性を検証するような実証実験は,全国を見渡しても例がありません.その上,荒尾ではおもやいタクシーだけの検索と予約しかできませんが,ピアクレスAIタクシーは市電など他の公共交通サービスとの連携を志向したMaaSとなっていることが,第2番目の特長です.
このMaaSを実行可能にするには,さまざまな事業者が提供する移動サービスから成る出発地から最終目的地までの経路の探索と予約,決裁が容易にできるMaaSアプリが必要です.ややもするとフルスペックとなりがちなMaaSアプリを,今回は,ここに参加されている株式会社リサーチアンドソリューションが提供する情報発信アプリ「ぷらり」と株式会社未来シェアが提供するリアルタイムオンデマンド最適配車システム「SAVS」とを,合同会社ゴダイベストによって新たに設計・構築された経路探索システム「道案内」で繋ぐという,既存アプリを活かしつつ,今回の実証実験に必要なモノを作るという発想で「ピアクレスMaaSアプリ」を開発しました.これが,今回の実証実験の第3番目の特長です.
MaaSの本質は,買物や観光などの活動や,医療・福祉・教育などの行政サービスとの連携によって,移動サービスの高付加価値化を可能にし,それによって移動需要の拡大を図ろうというものです.今回の実証実験では,2016年の熊本地震後50軒ほどに減少した健軍商店街の店舗のうち32店舗から協力を頂き,協力店での買物によって付与されるポイントによってピアクレスAIタクシーの半額乗車クーポンが発行されるなど,ピアクレスAIタクシーの利用拡大と商店街活性化のシナジーを試みている点が第4の特長です.
熊本市の立地適正化計画の中の地域拠点の一つでもある健軍地区おける今回の実証実験は,ひとつは乗換拠点へのアクセスと域内移動の利便性向上に,二つ目には高齢化による運転手不足で頭を悩ませているタクシー事業者の運行効率性の向上に,そして三つ目には連携している健軍商店街への訪問者数の増加による地域活性化にとって,どのようなインパクトが生じるかを知る上でも,非常に重要で,挑戦的な試みです.
現在,150名ほどの方にモニター登録のためのIDとPWをお渡ししています.しかし,この数はあくまでIDとPWをお渡しした方の数であり,この方達が必ずしも登録されるわけではありませんし,登録されたとしても利用されるとは限りません.多くの方が実際に利用してみて,便利なのかそうでないのか,普及するためにはどの様な課題があるのかについてご意見を頂くことが重要です.そのためにはできるだけ多くの方にモニター登録をして頂くことが必要です.ここにおいでの皆様は勿論,近しい方にもお知らせ頂き,この実証実験から多くの情報と成果が得られるようになることを期待しまして,私からのご挨拶に代えさせて頂きます.
本日は出発式へのご参加,有難うございました.
10/11(月)から11/22(月)までの平日30日間運行する「ピアクレスAIタクシー」の実証実験の実施について,熊本市,および熊本学園大学からプレスリリースされました.その他,今回の実証実験に用いるMaaSアプリである「ピアクレスMaaSアプリ」の開発に係わった(株)未来シェアと(株)リサーチアンドソリューションからもプレスリリースされています.それぞれ下記をご覧下さい.
(株)未来シェア http://www.miraishare.co.jp/202110kengun/
(株)リサーチアンドソリューション
https://www.rands-co.com/pdf/rs_news20211006_01.pdf
「ピアクレスAIタクシーってなに?」,「ピアクレスMaaSアプリを使ってみよう!」,「「ピアクレスAIタクシーを運行します!」の3種の資料もご覧下さい.この実証実験の目的と概要が分かります.
↑画像をクリックすると別画面でPDFが開きます.↑ |
「健軍商店街と連携したピアクレスAIタクシー実証実験」の準備を進めています.
この実証実験は,2020~2022国土交通省新道路技術開発の研究補助金により,市電健軍町電停の東側エリアにおいて実施する,健軍商店街での商店情報サービスと経路探索サービス+健軍からの最適配車タクシーサービスとを連携させた,少しだけ広義に踏み込んだMaaS実証実験です.
この実証実験は熊本市公共交通協議会コミュニティ部会でも了解され,熊本市,タクシー事業者,モビリティサービス事業者,健軍商店街,熊本学園大,熊大から構成される「健軍地区AIデマンドタクシー実証実験実行委員会」により実施されます.熊本市公共交通会議ではすで了解され,くまもと運輸支局の承認をもらって,今秋に1ヶ月間,実施する予定です.
現在は,対象エリアの自動車所有者を対象に,「ピアクレスAIタクシー」の説明と共に,事前の交通実態・利用/モニター登録意向調査の準備中です.これまでのこのような調査/実証実験では修論や卒論のテーマとし,学生が主体的に動いてくれたのですが,現在の環境では全てを自分で切り回す必要があり,アップアップ状態ですが,頑張ります.成果をご期待下さい.
JCOMM(日本モビリティ・マネジメント会議)が毎年開催している第16回JCOMM会議が,8月20日(金),21日(土)の2日間にわたって,リモートと現地参加のハイブリッド方式により熊本城ホールのシビックホールで開催されました.
JCOMM熊本大会は,コロナ禍と長期にわたる豪雨ではありましたが,溝上教授が実行委員長となり,熊本大学,国・県・市,建設コンサルタントの約20人から成る実行委員会による半年間にわたる準備によって開催することができました.
事前の参加登録者は320でしたが,多くの県で緊急事態宣言が,熊本県にもまん延防止特定地区が指定されたこともあり,現地参加者は150くらいかと踏んでいました.しかし,当日飛び込みも含めて現地参加者が250,YouTube Liveへのアクセスが400と,予想を大幅に上回る参加・聴講数となりました.これも,全国のエリア・モビリティのマネジメントに係わる人達が,熊本の駅周辺整備や桜町再開発,バスの共同経営や再デザインなどの先進的な取組に注目しているからです.
溝上教授も20日(金)の10:00からの開催地企画「福岡と熊本/駅前と中心街の競争と連携のマネジメント」のパネリスト,同日13:15からの特別講演「熊本のまちづくりと公共交通の再デザイン」,および13:45からのパネルディスカッション「公共交通の再デザインと共同経営の行方」のパネリストとして登場しました.その模様が「次世代交通 あり方探る 熊本市で研究者らシンポ」として,2021年8月24日の熊本日日新聞に掲載されています.
当日のプログラムは下記のHPから閲覧できます.セッションによってはYouTubeアーカイブから当日の様子を見ることもできます.また,講演用資料は近いうちに同HPに掲載されますので,ご覧下さい.
溝上教授が連名の事業「アクティブシニアを対象とした荒尾市モビリティマネジメント~3年間継続の秘訣~」が2021年のJCOMM賞プロジェクト賞を受賞しました.溝上教授が連名の事業では,「熊本県内バス電車無料化社会実験と検証」で2020年度プロジェクト賞に続いての連続の受賞になります.
本事業は,平成30年度より高齢者の公共交通への移動手段の転換や外出機会の増大を目的としたアクティブシニアを対象として,3年間岩田って継続的にMMを実施したものです.具体的には,体操教室参加者を対象にH30度に540名,R1年度に216名,R2度に168名)を対象とし,運営者の福祉関係者と協力してフルセットTFPによるMMを実施したことで以下の効果を得ることができました.
① | 運営者との協力関係の構築により,継続的なMMへの参加協力を得た. |
② | 庁内においてMM実施の重要性を共有したことで,継続的な予算確保に至った. |
③ | MM期間中,非利用者の約10%が新たに公共交通を利用した. |
④ | 長期的な転換効果として,MMから約1年後,H30度に26名、R1年度にも18名が新たに公共交通を利用した. |
卒業生の皆さん,これまでお世話になった関係者の皆さん,2021年3月末に熊本大学を定年退職し,すでに5ヶ月が経過しました.さかのぼって,私事,4月1日から熊本学園大学で第2の教育・研究の人生をスタートしました.所属は経済学部リーガルエコノミクス学科で,公共政策分野を担当する専任教授です.
何故このようなことになったのか?それは昨年5月に,熊本大学で開催された応用経済学会秋大会で特別講演を依頼されたことが契機です.ご存じのように,熊本市の公共交通政策は公共交通基本条例の制定や共同経営事業の採択など,全国の最先端を走っています.一方で72万人の人口を抱える政令市としては道路交通混雑が激しく,公共交通の利用率が著しく低いといった現実もあります.そのような中,熊本市の公共交通問題に対して,工学的だけでなく,経済学の理論を応用した分析結果に基づいて政策提案を行ってきた私の話を聞きたいという講演依頼をうけました.
応用経済学会は,経済学の様々な応用分野の研究を促進することを目的とし,応用経済学の研究の促進を図るとともに,現実の経済社会の課題の解決に寄与することを目指すとして設立されました.具体的な目標は下記です.
第1に,経済学の理論分析や計量分析などの実証分析による応用経済研究を進める.
第2に,地域科学,政策科学,情報科学,経営学,環境科学,法学などの関連分野からの応用経済の研究を取り入れ,学際的な研究の充実を図る.
第3に,応用経済学の発展のために資する基礎研究を推進する.
第4に,アジアをはじめとする海外の研究者および関連学会などとの積極的な交流を図る.
私が採用された理由は,熊本学園大学経済学部では前任の慶田 收教授が退職され,公共政策分野のポストが空いたこと,上記の第1と第2の目標を充実させたいこと,経済学部と商学部とにデータサイエンスコースを設置するための人材を求めていたことなど,工学系の私にとっても非常に好都合な条件が揃っていたことにあります.特に私の特別講演を聴講し,質問まで頂いたゲームと情報の経済学の大家である細江守紀学長には採用のための推薦を頂きました.
地方私学文系という,これまでとは全く異なる環境で教育・研究を始めます.皆様にはこれまでにも増してご協力とご支援をお願いします.ただし,研究はもう限界なので,教育,社会貢献と学内運営に専念したいと思っています.
本学のキャンパスは県立劇場の北側で,多くの高校がある大江の学術エリアにあり,正門から銀杏並木が続くプロムナードと煉瓦調の建物はコントラストは非常に良い雰囲気です.また,西側正面のJT敷地跡には,YouMeマートや2つの私立の大規模病院,2つの銀行支店,Starbucks,K’sデンキなどの大規模集合商業施設が,大江渡鹿(おおえとろく)の交差点周辺にはスポーツジムのルネサスや多くの小洒落た居酒屋もあります.近くに来られる機会があれば,是非お立ち寄り下さい.
ホームページのアドレスは下記です.
https://www.kumagaku.ac.jp/