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在外調査報告――中国外交部档案館の歩き方2007

2007年9月30日
北京朝陽門外にある中国外交部档案館の紹介です。
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 北京朝陽門にある中華人民共和国外交部档案館での史料調査も3度目となった。最初に訪れたのが2005年12月、2度目が2006年12月、そして今回である。外交档案館のホームページにもあるように、最初に档案が公開されたのは2004年1月だったが、対日関係档案が本格的に公開となったのは2005年に入ってからであり、その後は2006年5月にさらに公開が進み、現在は建国初期から1960年までの档案が公開されている。

 2007年8月末現在、「日本」というカテゴリーでヒットする件数は1,078件。これ以外に、「日本/蘇聯」や「日本/美国」など、二国間のカテゴリーでヒットする档案もあるが、その数はわずかである。対日関係档案に関してその概要をまとめれば、日本からの訪中団と中国首脳との談話記録やこれに関する接待計画ならびに報告書を中心に、「積み上げ」方式と呼ばれる1950年代の日中民間外交に関連する档案が数多く含まれており、これ以外にもサンフランシスコ講和をめぐる中国政府の対応などの文件も公開されている。野党外交を含めた「民間外交」が大部分を占めているのは、まさに当時の日中関係の現実を反映しているといえよう。

 まず閲覧に関する基本情報を確認しておこう。まず開館時間であるが、月曜から木曜日までが午前8時30分から午前11時30分と午後1時から4時までの計6時間であり、金曜日は午前中のみの開館となる。短い期間で調査を行う場合は、日曜日に入って金曜日の午後の便で帰るなど、時間は有效に使いたいが、後述するように档案の「複写」に関する規定が大幅に変更となったため、かつてのような短期間での十分な調査・収集は難しくなったというのが実際のところだ。

 次に実際の閲覧申請手続きだが、開館当初は「閲覧の20日前までに事前申請」という規定があったようだが、現時点ではそれほど厳格に適用されていないようだ。紆余曲折があった結果、現在、新規に日本人研究者が閲覧する場合には、(1)パスポート、(2)紹介状(具体的には、所属する大学などの図書館からの紹介状で良い。その際、できれば大学図書館のレターヘッドの入った便箋で作成してもらうのがベストであり、公印が入ればなお良い)があれば十分である。

 では早速档案館訪問である。とはいえ、いわゆる朝陽門のあの外交部の巨大なビルの中に档案館はない。ぐるっと回って後ろ側、ちょうど外交部の裏門の正面にある13階建てのビルの7階に目的地はある。どうやら外交部の職員宿舎か、福利厚生施設のような感じである。とりあえずビルの入り口には小さく「外交部開放档案館」という看板がかかっているので、間違えることはないだろう。

 調査中は毎日ここを訪れるので、すぐに顔馴染みになるが、初回は取り敢えず入り口の右側にある守衛さんのところで手続きをしよう。「7階の档案館に行く」と言えば、訪問者ノートを示されるので、名前と宿泊先、そして訪問先の「档案館」と書けば問題ない。翌日からはそのまま直接7階に行っても大丈夫である。

 さて7階に着いた。「ようこそ外交部档案館へ!」と書かれた看板を横目に見ながら申請室へ。かつては責任者である男性と若い補佐の女性がいたが、いまは男性二人が訪問者を出迎えてくれる。取り敢えず持ってきた紹介状を示し、パスポートを見せれば問題なく閲覧を開始できるだろう。そうすればいざ閲覧申請である。

 閲覧申請室には档案検索兼閲覧申請用のパソコンが2台ある。どちらでも良いが、端末を選んだら、好きなカテゴリーあるいはキーワードを打ち込みいざ検索。画面に検索結果が現れたらその中から閲覧したい档案を選んで「提交」する。一度に閲覧申請できるのは10件まで。一件につき2元かかるので、10件申請するたびに20元支払うことになる。ここで注意すべきは、「提交」する際に個人情報や閲覧目的などの情報入力を求められること。2回目以降については基本情報の入力は自動で読み出される仕組みになっているが、取り敢えず閲覧目的は毎回入力することになるので、簡単なコメントを考えておいたほうがいいだろう。ちなみに私の閲覧目的は「写論文」「1950年代中日関係研究」という他愛も無いものである。

 さて、「提交」すると職員の男性が、ごそごぞと動いてパスワードをくれる。外国人にはパスワードを書いて寄こしてくれる場合もあるが、中国語に問題が無い場合は基本的に口頭でパスワードを告知される。この時に20元を渡せばよい。これでパスワードを「ゲット」である。

 閲覧室は閲覧申請室の隣りである。閲覧用の端末が9台並んでいる。なかなか全部が埋まるということはないようだが、今年の夏は海外からの訪問者が多かったようで、1日だけだが9台の端末がすべて埋まったということがあった。もっとも、ピークが過ぎれば訪問者は一日に2〜3人というペースに戻るので、神経質になる必要はないだろう。端末の数という問題についていえば、目録を作るために閲覧申請用の2台の端末が埋まってしまっている場合があるので、その場合はうまく「朋友」になって「かわりばんこ」で使うようにするしかないだろう。もっとも、「占拠」があまり目に余るような場合には、職員が助け舟を出してくれるので、こちらもそれほど神経質になることはない。

 閲覧室に入ってまずすべき仕事はパソコンの起動である。Power key をオンにして、Ctr-Alt-Delを同時に押せば普通に起動し、「確定」ボタンを押せばそのうちネットワークにつながる。もっとも、「機嫌の悪い」端末もあるので、その場合は固執せず隣りの端末に移るべきである。画面が立ち上がれば「6桁」のパスワードを入力していよいよ档案とご対面となる。

 ここで一番気になるのは「複写」だろう。かつては中国最高指導者の会談記録や「批示」档案以外、ほぼ複写が可能であったが、2007年春以降、複写の規定が大幅に変更され、複写できる档案は激減した。現在、原則複写できないのは、(1)最高指導者の会談記録(毛沢東、劉少奇および周恩来)、(2)最高指導者の批示がある文書、(3)外交部およびその関連部門以外が作成した文書、である。(1)と(2)は以前から複写禁止だったが、問題は(3)である。いわゆる中国外交部の档案は、日本の外交文書と同じでほとんど政策文書がないため、研究で利用する場合には、他の政府機関とやりとりされた電報類に依拠して事実関係を再構成する手法を採る必要がある。そのため、他の政府機関などが作成して外交部に送付した文書が極めて大きな意味を持つのだが、この複写が2007年春以降、すべて禁止となった。

 さらに細かい点を述べれば、最高指導者の談話紀録でも、「紀要」の形になっており、外交部や外交学会が作成したものであれば複写は可能である。また、ひとつのファイルに収められた電報群のなかでも、外交部が作成した電報のみ選び出して複写申請した場合には、申請が通る場合もある。とはいえ、前述のように1950年代の対日関係档案はそのほとんどが「民間外交」に関するものなので、対外貿易部や中国紅十字会、中国漁業協会など、「積み上げ」を担った諸団体が作成した文書はほとんど複写できず、新たにこれらの分野を研究しようとする場合には、「筆写」することが必要となる(まぁ档案調査の本来あるべき姿といえばそれまでだが)。もちろん、デジカメによる撮影なども禁止である。ちなみにパソコンを利用する場合の電源は豊富にあるので心配いらない。

 さて、最後に複写の受け取りであるが、最近はおおよそ午前中に申請したものであれば午後の閉館前に受け取ることができる。複写料金については、開館当初はA4一枚が10元であったが、その後一枚5元となり、現在は一般8元、学生4元となっている。学生料金にするためには学生証が必要である。ただ、以前のようにふんだんに複写できた頃とは異なり、かなりの部分を筆写せざるを得なくなった現在、複写経費は低くなる傾向にあろう。もちろん確認するまでもなく、その分長期の滞在が必要になる。なお、最終日に頼めば一括で領収書を出してくれるので、研究費で処理することもできる。

 一度に閲覧申請できる档案は10件までとなっているが、当然「筆写」する場合には一日で終わらない場合が多い。システムの関係でこのパスワードは毎日変更になるのだが、一度閲覧した档案は再び無料でパスワードの再交付を受けることが可能である。いちいち档案群を指定するのが面倒であれば、朝一番で今回閲覧申請してきた档案のパスワードをすべてメモしてもらうと良いだろう。結構、臨機応変に対応してくれる。また、これもシステムに関係する問題だが、時々ネットワークがハングアップして、閲覧中のデータが飛んでしまったりすることもあるので、この場合はその旨説明して、再度申請端末から「同じ」档案を閲覧申請し、無料でパスワードの再交付を受けるようにすればよい。顔見知りになれば、いろいろと世話を焼いてくれる。

 最後にもっとも重要な「昼休み」の過ごし方である。1時間半の昼休みは長い。他の閲覧者と一緒に食事に出かけて時間を使うのも大切だが、毎日というわけにもいかない。そのような場合には、朝陽門近くの「華普」の地下にある食堂で食事をとり、残りの時間をスターバックスで過ごすのが良いだろう。「華普」の食堂は安いうえにメニューも豊富で、野菜もふんだんに採れるため、長期の中国滞在では重宝する。特に「華普」のスーパーとの通路脇にある湖南料理の店は、11元で肉類1品、野菜2品、13元で肉類2品、16元で肉類2品、野菜2品にご飯とスープ(お茶?)がつき、そのうえ大変おいしいのでリーズナブルである。11元でも十分満足な量があり、その後スタバでアイスコーヒーを飲んでも合計30元そこそこなので、午後に備えるのに良いだろう。もっとも、夏に行くか冬に行くかで、その過ごし方は大きく異なってくるだろう。

 いずれにせよ、到着後はまず閲覧申請端末で自分の研究に関係する档案目録を作成し、その後本格的な閲覧に入ることになるだろう。対日関係だけでも1000余件、台湾関係は300余件、中ソ関係は4000件前後。いずれも目録がなければ体系的な調査はおぼつかないので、丁寧な作業が必要である。やはり「急がば回れ」というところである。時には同じ時期や分野を対象としている研究仲間と分担し、効率良く目録作成を進めることも必要かもしれない。

 以上が2007年夏現在の中国外交部档案館に関する簡単な情報だが、関係者の話では2008年前半に新たに1960年から1965年までの档案が公開になるとのことである。この時期は中ソ論争や対日関係再開など興味深いテーマが並ぶが、新規公開の際には再び訪れて新たな情報を本ページでお伝えできればと考えている。

文責 大澤 武司

    
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