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臨時・在外調査報告――中国外交部档案館の歩き方2009夏

2009年8月24日
北京朝陽門外にある中国外交部档案館の紹介です。
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 極めて短い時間であったが、今年も中国外交部档案館を訪れる機会があったので、その近況をお伝えしておきたい。

 1960年から65年までの外交档案が公開されたのは昨年11月だが、8月24日現在、「日本」というカテゴリーでヒットする档案数は1742となっている。1950年代の档案が確か1083であったから、650件程度が新規公開されたことになろうか。この時期は依然、日中は国交不在の時代であるが、1963年以降、「半官半民」のLT貿易が始まり、廖承志・高崎両事務所がそれぞれ東京と北京にできたので、1950年代に比べ政府機関関係の档案が増えているような印象を受ける。

 閲覧の制度も昨年夏に訪問した時に比べて大きく変わった。まず、これまであった閲覧申請手続きがなくなった。従来は1度に10件、1件あたり2元を支払ったうえで「パスワード」をもらい、申請した档案のみが閲覧可能であった。この「パスワード」は毎日変わり、翌日再び閲覧するためには、「パスワード」を再発行してもらう必要があった(再発行は無料)。

 新しいシステムは、まずパソコン画面上 の「注冊」ボタンを押し、氏名や所属、パスポート番号、4桁の自分で考えた「パスワード」などを入力し、「個人登録」を行うところから始める。登録が完了すると個人の「ID」番号(8桁)が発行される。

 あとは簡単である。パソコンの初期画面に「ID」と「パスワード」を入力するとそのまま検索画面が現れる。あとは国名やキーワード、あるいは「档号」で自分の閲覧したい档案を検索すればOKである。すなわち事前の「提交」の作業をせずとも、すべての档案が直接無料で閲覧できるようになったのである。これは大幅な環境改善といえる。

 では、実際の作業環境についてはどうか。訪問すれば明らかなように、閲覧用のパソコンは全部9台あるが、今回はすべてのパソコンが使用中であった。海外留学組と思しき中国人が4名、ロシア人が3名、そしてアメリカ人が2名。すべてがいずれもパソコンに档案を打ち込みまくっているといういわゆる「臨戦態勢」の訪問者であり、昨年までと異なり、連日大勢の研究者あるいは研究者の卵が「档案館詣で」をしている状況である。これは1960年代の档案が開いたことによるものであろう。

 欧米からの訪問者が増えたためか、以前は「口頭」で伝えられるだけあった複写の「規定」も貼り出されるようになった。「規定」曰く、複写禁止対象は、(1)毛沢東、劉少奇、周恩来、ケ小平、朱徳の「手迹」あるいは「談話紀録」、(2)絶密文件、(3)外交部以外の機関が作成した档案、ということである。

 複写「規定」は相変わらずであり、体系的な史料調査にはやはり相当程度の「筆写(打ち込み)」時間が必要となろう。もっとも、訪問する誰もがこの点についてはすでに「諦め」ており、国史館の蒋介石関連文書のような形での史料獲得の形式がしばらく続くもとの思われる。

 なお、電子複写については、一般と学生の区別はなくなり、一律1枚5元でのサービスとなっている。

文責 大澤 武司

    
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