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講義・演習情報研究プロジェクト熊本日記松井松次資料館略歴・研究業績

在外調査報告――中国外交部档案館の歩き方2010秋

2010年11月7日
北京朝陽門外にある中国外交部档案館の紹介です。
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 半年ぶりの外交部档案館。あまりの激変ぶりに何からお伝えして良いのか迷うが、ひと通り書いておきたいと思う。

 まずお伝えすべきは档案館の移転である。2004年の開館以来、档案館は外交部本館裏の保養施設や寮が入るビルの7階にあった。だが、こともあろうにずっと工事が続いていた外交部本館横の「外交部南楼」が完成し、2010年9月1日から「外交部南楼」の6階に移転とあいなっていた。旧档案館にはもちろん「閉館」の張り紙が貼られていた。

 これまではビルに入るのも「ノーチェック」だったが、真新しい「南楼」は入口に軍服を着た背の高いお兄さんが立っており、さらには入口で厳重(?)なセキュリティーチェックを受けなければいけないという「テロ対策」仕様となっている。

 とはいえ、そこは「中国」。入り口で「我要到6層的档案館去的」とでも言えば、普通に通してくれる。別にパスポートチェックなどもないので、本質的には旧来と変わらないといえる。ただ、少しばかり時間にうるさくなっており、開館時間10分ぐらい前に入ろうとしても「還没有開了」などと言われて、若干面倒臭くなった感じはある。

 とはいえ、何よりも伝えたいのは「閲覧環境」の飛躍的な向上である。2005年以来の付き合いとなる「アーキヴィスト」(?)H氏に特別にお願いして写真を撮らせてもらったのだが、ご覧の通り、閲覧用のコンピュータが32台にまで増強されていた。

 外交档案の閲覧のためにこれほどのコストをかけること自体 、中国がいろいろな意味で新たな段階に入りつつあることの象徴だと思うのだが、それにしても気持のよい金の使いっぷりである。以前は閲覧電脳が9台しかなく、開館30分前ぐらいに並ばないと「席取り」ができなかったことを思えば、隔世の感がある。座り心地の良いたっぷりとしたオフィスチェアも備えつけられ、これまでの座りにくい変なソファーも一掃された。

(もっともチェアの強度には問題があるらしく、たまたま来館していた戦後東アジア国際政治研究会の仲間が肘掛けをいとも簡単に粉砕破壊していた)

 では、トータルでどうかという問題である。本コーナーの「2010年春」でもご紹介したように、2010年1月に「複写規定」が大幅に変更されたことから、コピーは相変わらず絶望的である。かつて猛威をふるっていた「打ち込み」部隊も撤退したのか、いま「打ち込み」にいそしんでいるのは、本当の若手院生たちのみである。平均来館数も1日5〜6人程度で、せっかくの「充実設備」も少しさびしそうである。まぁ、朝、並ばないで済むのはありがたいのだが。

 私の「打ち込み」スピードでも、いわゆる「外事簡報」や「会談録」(1ページ400字程度)で終日頑張って30ページ程度なので、お忙しい「先生」方が二、三日いらして「資料調査」をするのはほぼ絶望的になっているといえよう。

 なお、閲覧環境の拡充に伴い、11月1日付で新たに2名の服務員が配置されたので、今後、彼女たちが一連の作業をマスターしてくれれば、わずかながらの複写もスムーズに行くようになるのではなかろうか(档案館の主である「H」氏はとにかく面倒くさがりなので...)。

 ちなみに、1965年以降の档案公開についてもインタヴューを行ったが、現時点では「未定」とのことである。基本的に「現場」にはまったく事前には情報がおりてこないようだ。これまでの公開スケジュールからすれば、今年の11月か遅くとも来年の5月には出ると思うのだが、档案を獲得するために相当の「苦行」を経なければならないことを考えれば、当面は「院生」だのみの史料調査が中心になるのではないかと思われる。

 無論、私は「能」(脳)がないので、体力勝負で淡々と北京詣でを続けるのみなのだが、すでに36歳で二人の子持ち。今回は身体が悲鳴を上げているのが良くわかる「史料調査」となった(やっていることは修士の頃と全く変わらないなぁ...)。中国人研究者による「档案法」に基づく「情報の効率的獲得」を陳情・要求してもらうしかなさそうだ。

文責 大澤 武司

    
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