在外調査報告――上海市档案館の歩き方2014春
2014年3月3日 上海市中山東二路にある上海市部档案館の紹介です。 .............................................................................................................................................................................................
三菱財団研究助成「建国初期中国外交と日中海洋権益問題」(研究代表者・大澤武司)の資金により2014年2月26日から3月2日まで中華人民共和国・上海市档案館にて資料調査を行った。同館には2010年12月ならびに2011年8月と2度にわたり調査に訪れているが、これまでは日本人引揚などを中心に档案調査を行ったが、今回は科研とは別件の研究課題であるため、日中間の民間における漁業問題を中心に档案調査を行うこととした。もっとも2013年9月の段階で、档案の閲覧・複写制度に大きな変更があったとの情報が入っていたため、まずは閲覧の可能性を確認することを最重要課題として、短期の4泊5日で調査スケジュールを組むこととした。
すでに2010年冬の「上海市档案館調査報告」で紹介したとおり、同館の閲覧・複写システムは先進的で、極めて効率的な档案調査を可能とさせてくれていたことは周知の通りである。2013年9月時点の情報で「閲覧に際して中国側機関の紹介状の提示を求められた」との情報があったが、すでに閲覧カードは保有していたので、勤務先(日本)の学長名の紹介状と図書館長名の紹介状を持参して、とりあえずあたりをつけてみることにした。
档案閲覧室の入り口では特にチェックがないので、「大丈夫だ!」と思いそのまま閲覧PC端末の前に座り、「ID」と「111」を入れると「未登記閲覧証!」の文字。「嫌な予感がするなぁ...」と思いながらも「登記所」へ。フロントの担当者の妙齢の女史に「カードを更新してくれ」と頼むと何事もないかのように端末で処理し始めたので、「よかった〜」と思ったのもつかの間、「もしかすると日本人?外国人の場合は紹介状が必要よ」との言葉。学長の紹介状を出して「これでどうだ(日本の大学のだから駄目だろうな〜)」と言うと、案の定、「中国の機関でなきゃ駄目なのよ」とのつれない返事。
とはいえ、8万円ちょっとかけて史料調査に来たので、何とか交渉をして「じゃあ今日だけよ。次に来るときは中国側の機関の紹介状を持ってきてね」との条件を引き出すことに成功した。ついでに「今度来るときに持ってくる紹介状は単位のじゃぁなければ駄目か?」と聞いたところ、「いや、大学の先生とかの紹介状なら大丈夫」との返事。外交部档案館ほど厳しくはないようだ。ただ「できれば閲覧の30日前までに事前申請してね」とのこと。これは「規定」にあるから改めて確認するといった感じの様子で、中国の大学の友人の先生などに紹介状を書いてもらえば、何とか閲覧証の更新と調査継続は出来そうな印象であった。
ちなみに所蔵档案についてだが、今回も専門の日中関係を中心に調査を行った。「日本」で検索をかけた場合、2010年12月には「5805」件だったが、今回は9102件の档案がヒットするなど、大幅に増加していた。建国後に限って再検索してみると6507件(前回3295件)であった。個人的な研究関心で検索したキーワードとしては、「回国」が662件(前回549件)、「日僑」が308件(前回285件)、「日本僑民」が6件(前回7件)、「紅十字会」が441件(前回353件)などとなっていた。
なお、複写については、大幅な制限が加えられるに至っている。前回、調査に訪れた際には無制限に1枚2元で複写でき、なおかつ即日現物を受け取ることができたが、現在は1日最高50枚、各档案のうち最大3分の1までしか複写が許されなくなっている。なお、この複写制限は2013年8月1日付けで実施されたとされる。同館には閲覧端末が40台近くあるが、今回はほぼすべての端末が使用中で、午後の来館者は順番待ちをするなど、大盛況の様子であった。
ちなみに、服務員の「じゃあ今日だけよ」という言葉が信じられなかったので(カードの更新手続きが終わっているかもしれないので)、別の日に改めて眼鏡を「黒」から「赤」に変えて(ちょっと変装?して)、閲覧PC端末の前に座り、閲覧できるかどうか試してみた。しかし、世の中そんなに甘くない。残念ながらやはり「未登記!」という警告が出たため、そそくさと档案館を後にした私であった。文責 大澤 武司
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