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2014年9月22日更新

経済学を初めて学ぶ学生へ[top]

経済学を初めて本格的に学ぶ学生へ.
経済学とは,マクロ経済学とは何でしょう.
まずはテキストの第1章を読んでください.
マクロ経済学がわかるようになるには,特に
以下の3点を勧めます.

まずは新聞を読もう
自宅の新聞,大学図書館の新聞(複数あります)
は従来からの基本です.コンビニでも新聞を販売
しています.下宿等で新聞をとっていない方は
コンビニでときどき新聞を買ってはいかがでしょう.

紙の新聞だけでなく,インターネット上のニュース
も活用してください.大学のコンピュータ室,
あるいは図書館のパソコンを利用します.新聞社
のニュースサイトとしては,朝日新聞の asahi.com
すすめます.英語では,New York Times のサイト
が充実しています.その他,私がおすすめのウェブ
サイトは,わたしのサイトの「WWWリンク集」を
見てください.

特に,日本経済新聞電子版
ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版などは
おすすめです.

さらに,本学の学生は,日経テレコン21も学内
から利用できます.
日経テレコン21の利用は,本学のeキャンパスセンター
のページから入ってください.

おもな経済統計は覚えよう
主な経済統計の数値は,ぜひ記憶してください.
例えば,次のようなデータは必須です.
・GDP
・コールレート(無担保コール翌日物金利)
・失業率
・円ドルレート
・日経平均株価
・消費者物価指数
 この講義ノートの付録に「経済データ」のグラフを
載せています.講義の進展にあわせて是非参照してください.

年表を作ろう
 年表の参考として,講義ノートの付録に1973年
1月から私が作成している年表をあげてあります.
みなさんもぜひ独自の年表を作ってください.年表を
作ることにより時代感覚,経済感覚が養われます.
年表のありがたさは時間が経過した後でわかります.

「メールマガジン」に注目!
2000年度から,マクロ経済学の講義を補完する
「メールマガジン」を発行しました.「新聞によく
でてくる経済用語やデータの解説」というテーマで
書いています.これまで配信したメールマガジンは,
私のサイトのメールマガジン(経済用語解説)でも
読むことができます.

このホームページには,マクロ経済学の講義を補う
様々な情報が詰まっています.思う存分活用してください.

ノートの取り方を学ぼう
自分自身のノートの取り方をマスターしよう.
マクロ経済学専用のノートを準備してください.
この講義では毎回ワークシートを配布します.
このワークシートに毎回自分のノートのポイントだけ
を転記して提出してください.講義の最後の10分間
はそのための時間にとります.

これまでの経験から,
しっかりノートをとっている学生は試験の成績もよい!
という法則があります.

m-ラーニングを活用しよう!!
m-ラーニングとは,熊本学園大学経済学部が開発
した,携帯電話を活用した授業支援システムです.
経済学入門(春・秋)では,携帯電話から経済学の
練習問題のデータベースにアクセスして問題を解く
ことを通じて経済学の基礎がわかるようになります.
みなさんの学習履歴も記録されます.詳しい使い方
は講義中に説明します.楽しみにしてください.

○ぜひこの「笹山ゼミ」のサイトを充分活用してください.

2014年9月の話題[top] 2014年9月22日更新

2014年度からマクロ経済学は秋学期スタートとなりました.

2013年安倍晋三政権と黒田日銀による「異次元の金融緩和」
(正式名称は「量的・質的金融緩和」)がスタートしました.

それにもう1つ,2013年4月の5%から8%への消費税増税です.

2013年の1年間を振り返ってみましょう.

黒田日銀の金融緩和政策の狙いは

■ マネタリーベースの大幅拡大 → インフレ期待が増大 
  → 円安・ドル高 → 輸出増大、設備投資増大 (1)
  → 日経平均株価の上昇 → 設備投資の増大  (2)
  → 予想実質金利の低下 → 設備投資の増加  (3)
  → (1)(2)(3)から GDP増大、雇用増大

だったのですが,最も効果があったのは,円安・ドル高に
よる日経平均株価の上昇(株高)の効果でした.円安と株高の
2013年1年間の相関係数は0.94でかなり強いものでした.
特に,自動車産業などがその恩恵を受けました.

その一方,まったく期待はずれだったのが,円安からの輸出増大
効果でした.伝統的理論によれば円安になれば,相対的に日本の
輸出財の価格が低下し,海外での競争力が高まり,輸出数量が伸
びると考えられていました.ところが効果はありませんでした.
日本の貿易収支は赤字傾向が続き完全する見込みはありません.
その最も大きな理由は,日本企業の海外進出がかなり進んで,
円安により,日本国内からの輸出が増えるという効果そのもの
が期待できなくなったからです.
 逆に,円安によって,海外からの輸入原材料・製品の価格が
上昇し,国内の物価上昇を引き起こし,家計にとっては大きな
痛手となっています.

 家計にとって,痛手といえば消費税の3%引き上げです.3月
末には駆け込み需要増が起こり,その反動として4月以降には需要
の減少が生じました.これは事前には予想されていました.反動増
と反動減によって,結局プラス・マイナスゼロになると予想され
ていたのですが,家計の消費は予想を覆すかたちで,回復して
いません.4〜6月期の実質GDPは年率換算でマイナス7.1%.
消費は5.1%減,住宅投資は10.3%減,設備投資は5.1%減と
予想より悪化しました.

アベノミクス・日銀の異次元緩和による「円安・株高」の強い
相関関係も2014年の半ば以降は弱くなり(1月から9月まで0.6),
円安効果も神通力を失いつつあります.

消費税は2015年10月には10%に引き上げられる予定になっては
いますが,最終的には2014年末までには総理大臣が判断する
ことになっています.消費税引き上げは,日本の悪化した財政
赤字を改善させるとの国際公約になっているという足かせが
あります.財政再建と景気回復の狭間で決断を迫られています.

【関連出来事】

2014.01.07(火) ★日銀、2013年12月末のマネタリーベースが目標の200兆円を超えたと発表。201兆8472億円と12年末に比べて63兆円(46%)増え、過去最高を更新

2014.01.14(火) ★内閣府の経済財政に関する中長期試算、2015年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字は名目国内総生産(GDP)比で3.2%。政府が掲げている15年度までにPBの赤字を10年度比で半減させる目標は達成する見通し。20年度の見通しではなお1.9%の赤字

2014.01.27(月) ★財務省、2013年の貿易収支は過去最大となる11兆4745億円の赤字、3年連続の赤字。対ドルで2割以上の円安となったが、輸出量は前年比1.5%減。生産の海外移転や新興国企業との競争で、輸出が伸びにくい構造。原発稼働停止に伴い燃料の輸入が増えたことが2兆8千億円強の悪化要因

2014.02.06(木) ★総額5兆4654億円の2013年度補正予算が成立。4月の消費増税後の景気下振れを抑える狙い。政府は補正予算でGDPが1%押し上げられると試算
2014.02.06(木) 日銀の岩田規久男副総裁、宮崎市内で講演、2013年4月に始めた大規模な金融緩和について「急にやめることはない」、消費者物価指数の上昇率が目標の2%に届いてもしばらく様子をみる考えを示す。金融緩和が長引く可能性を認めるとともに、新興国の経済成長の鈍化を懸念材料に挙げた

2014.02.10(月) ★財務省、2013年の経常収支は3兆3061億円の黒字。前年比31.5%減、比較可能な1985年以降で最少。貿易収支は10兆6399億円の赤字。所得収支は16兆5318億円の黒字で15.8%増、3年連続で増え過去最大
2014.02.10(月) ★財務省、国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高が2013年末時点で1017兆9459億円だったと発表、過去最大を更新。内訳は、国債が9兆4733億円増えて849兆829億円、借入金が6337億円増えて55兆2344億円。一時的な資金不足を補う政府短期証券は3兆3398億円減って113兆6285億円。国民1人あたり約800万円の借金をかかえている計算

2014.02.10(月) ★財務省、2013年の経常収支は3兆3061億円の黒字。前年比31.5%減、比較可能な1985年以降で最少。貿易収支は10兆6399億円の赤字。所得収支は16兆5318億円の黒字で15.8%増、3年連続で増え過去最大
2014.02.10(月) ★財務省、国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高が2013年末時点で1017兆9459億円だったと発表、過去最大を更新。内訳は、国債が9兆4733億円増えて849兆829億円、借入金が6337億円増えて55兆2344億円。一時的な資金不足を補う政府短期証券は3兆3398億円減って113兆6285億円。国民1人あたり約800万円の借金をかかえている計算

2014.03.10(月) ★財務省、1月の経常収支は1兆5890億円の赤字。比較可能な1985年以降、1カ月間の赤字では過去最大、赤字が4カ月続くのも初。貿易収支は2兆3454億円の赤字で前年同月比で1兆384億円拡大。貿易赤字も96年以降で最大。特に輸入額は7兆8620億円と1兆8286億円増。輸出は5兆5167億円と17%増。海外からの配当金などを示す第1次所得収支は1兆3374億円の黒字

2014.04.02(水) ★日銀、企業約1万社の中期的な物価見通しを初めて調査、1年後の消費者物価指数(CPI)上昇率の見通しは、回答企業の平均で前年比1.5%。3月の短観の一環として導入

2014.04.04(金) ★日銀、量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)から1年。黒田総裁「量的・質的金融緩和の最も重要なルートは実質金利の引き下げだ」。異次元緩和前に年0.55%だった長期金利は1年後の3日も年0.64%、実質金利は2013年8月以降マイナスに転じ、2014年2月はマイナス0.9%に。「量的緩和政策が期待に働きかけることで成長をもたらすこと」、「量的緩和の実体経済への波及経路として実質金利差拡大による円安ルートが有効であること」の2点が論理的にも実証的にも明確化。他方、国債の取引の落ち込みが一段と鮮明。2013年度の長期国債の売買高は前年度に比べ2割前後減り、同じ条件で比べられる1999年度以降で最も低くなる見通し

2014.04.21(月) ★財務省、2013年度の貿易収支は13兆7488億円の赤字。赤字は3年連続で、赤字額は12年度に続いて過去最大

2014.05.09(金) ★財務省、国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」が2013年度末で過去最大の1024兆9568億円になったと発表。14年度末には1143兆円を超える見通し

2014.05.12(月) ★財務省、2013年度の経常収支は7899億円の黒字。比較できる1985年度以降で過去最低、1兆円の大台を初めて割り込む。貿易赤字が大幅に膨らんだのが主因

2014.05.15(木) ★内閣府、1〜3月期の実質GDP、前期比1.5%増、年率換算で5.9%増。4月1日の消費増税を前にした駆け込み需要で個人消費が大きく伸びた。プラス成長は6四半期連続。GDPデフレーターは前年同期比0.01%上昇に転じ、2009年7〜9月期以来4年半ぶりにマイナス圏を脱した。名目GDPは前期比1.2%増、年率で5.1%増。
2013年度の実質経済成長率は2.3%、4年連続のプラス成長。名目成長率は1.9%と3年度ぶりにプラス成長、GDPデフレーターは前年度比0.4%低下

2014.05.30(金) ★総務省、4月の消費者物価指数(CPI、2010年=100)、生鮮食品を除く総合が103.0、前年同月比3.2%上昇。上昇は11カ月連続。日銀は8%への消費増税が4月のCPIを1.7%押し上げる影響があるとしていた

2014.06.18(水) ★日銀、資金循環統計、3月末の日銀の国債保有残高は201兆円、1年前から57%増。保有額は保険会社全体(193兆円)を抜き、主体別では1979年の統計開始以来初めて首位となる。2013年4月に始めた大規模な金融緩和によって、毎月の発行額の約7割にあたる国債を買い入れているため
(参考)日銀試算、金利が1%上昇すると、金融機関が持つ保有国債には7兆5000億円の含み損が発生

2014.07.10(木) ★新発3カ月物の国庫短期証券(短期国債)の利回り、証券会社などの業者間取引で一時マイナス0.002%と、初のマイナス。マイナス金利は債券の額面価格よりも取引価格が高い状態で、通常なら購入すれば損失が生じる。入札前の取引でマイナス金利。入札での平均落札利回りは0.0182%とマイナスにはならなかったが、2006年2月以来8年5カ月ぶりの低い水準

2014.07.24(木) ★財務省、1〜6月の貿易収支は7兆5983億円の赤字。赤字額は前年同期比57.9%増え、半期として過去最大。燃料輸入の増加が主因。6月単月の赤字額は8222億円。輸出額が減り、24カ月連続の赤字

2014.07.25(金) ★政府、2014年度の年次経済財政報告(経済財政白書)公表、副題「よみがえる日本経済、広がる可能性」。消費者物価は緩やかに上昇しており、政府が目指すデフレ脱却に向けて「着実に進んでいる」との認識。物価の上昇基調が続くためには、供給に対する需要不足が改善するとともに賃金が持続的に上昇することが重要だと指摘
経済財政白書の骨子
・消費税率引き上げ前の駆け込み需要の規模は2.5兆〜3兆円程度
・消費者物価は予想物価上昇率の高まりで押し上げられている
・デフレ脱却に向けて着実に進んでいる
・労働者の雇用・所得環境は着実に改善している
・子育て対策により女性の労働力人口は約100万人の増加余地がある
・比較優位のある資本財の輸出を強化し、外での「稼ぐ力」を高めることが課題
・医療・介護負担の官民の分担を進める必要がある

2014.08.08(金) ★財務省、2014年上半期(1〜6月)の経常収支は5075億円の赤字。半期ベースでの赤字は13年下半期から2期連続で、上半期だけでみると比較可能な統計がある1985年以降で初めて。1〜6月の貿易収支は6兆1124億円の赤字。赤字額は前年同期比78%増、比較可能な統計がある96年以降で最大

2014.08.13(水) ★内閣府、2014年4〜6月期の実質GDP、前期比1.7%減、年率換算では6.8%減。マイナスは2四半期ぶり。個人消費が5.0%減と7四半期ぶりのマイナス。住宅投資も10.3%減。名目GDPは前期比0.1%減、年率では0.4%減。名目では7四半期ぶりのマイナス。GDPデフレーターは前年同期比プラス2.0%。19四半期ぶりに上昇。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは2.4%上昇。実質GDPの7月調査の民間予測はマイナス4.90%
(参考)前回消費税を引き上げた1997年4〜6月期の実質GDPの低下幅は3.5%減

2014.09.08(月) ★内閣府、4〜6月期の実質GDP改定値、前期比1.8%減、年率換算では7.1%減。8月13日公表の速報値(前期比1.7%減、年率6.8%減)から下方修正。名目GDPは前期比0.2%減(速報値は0.1%減)、年率では0.7%減(0.4%減)。個人消費は5.1%減(5.0%減)、住宅投資10.4%減(10.3%減)、設備投資は5.1%減(2.5%減)、公共投資は0.5%減(0.5%減)。民間在庫の寄与度はプラス1.4ポイント(プラス1.0ポイント)。実質GDPの増減への寄与度は、内需がマイナス2.9ポイント(マイナス2.8ポイント)、外需はプラス1.1ポイント(プラス1.1ポイント)。GDPデフレーターは、前年同期比プラス2.0%(プラス2.0%)

2014.09.09(火) ★日銀、初めてマイナス金利で市場から短期国債を買い入れ(短期国債買い入れオペ、公開市場操作)。マイナス金利は購入額が償還額を上回る状態。買い入れた短期国債を満期まで保有すると日銀が損

2014.09.11(木) ★東京外為、円相場は一時1ドル=107円04銭、リーマン・ショック直後の2008年9月25日以来となる5年11カ月ぶりの円安・ドル高水準

2014.09.17(水) ★新規発行の1年物の短期国債の利回りがマイナス0.005%、初めてマイナス金利で取引。3カ月物や6カ月物ではすでに9月に入ってマイナス金利

2014.09.19(金) ★東京外為市場、円相場は1ドル=109円46銭、6年ぶりに109円台まで下落。英ポンドは大幅に上昇。スコットランド独立反対派が優勢と伝わり、ポンドを買い戻す動きが広がえう。1ポンド=180円台後半、約6年ぶりの円安・ポンド高

2013年4月の話題[top] 2013年4月1日更新

今回は,やはり日銀の新体制発足が重要テーマでしょう.

安倍晋三政権,日銀の新体制と円安・株高

黒田日銀の金融緩和政策の狙い

黒田日銀が想定するデフレ脱却のメカニズム
■ マネタリーベースの大幅拡大 → インフレ期待が増大 
  → 円安・ドル高 → 輸出増大、設備投資増大 (1)
  → 日経平均株価の上昇 → 設備投資の増大  (2)
  → 予想実質金利の低下 → 設備投資の増加  (3)
  → (1)(2)(3)から GDP増大、雇用増大

マネタリーベースを増やして、予想インフレ率が上昇すれば、
銀行の貸し出しとマネーサプライが増えなくても、需要は増加し、
GDPは増加する。
そのからくりは、
 これまでのデフレで企業と家計は金余り状態で、
取り引きに使うことのない貨幣を資産として十分
保有しているから。
 → 遊休貨幣が外貨預金、株式の購入に向かう 
 → 貨幣の取引残高への転換
 → 貨幣の流通速度の上昇

銀行の貸し出しと貨幣の増加が始まるのは、
流通速度の上昇が限界に達してから。

(注)貨幣数量説では、MV=PT。
Vが貨幣の流通速度(忍者の「分身の術」のたとえ)
   P=(MV)/T
   Vの逆数=マーシャルのk
   マーシャルのk=M/PY
   Vの上昇=マーシャルのkの低下

(参考)岩田規久男(2012)『日本銀行 デフレの番人』日本経済新聞出版社

■2013年4月4日(木)決定の 日銀の「量的・質的金融緩和」
日銀の金融政策決定会合、2年間で前年比2%の物価上昇率を目指す「量的・質的金融緩和」の導入を決定。政策目標を無担保コール翌日物金利からマネタリーベースに変更。黒田総裁「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」。9人の政策委員はほぼ全員一致で賛成。物価目標の表現をめぐってのみ木内登英委員が反対

金融政策決定会合のポイント
量的緩和の部分
○物価2%上昇を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現」黒田総裁「2年は米欧など世界の中央銀行のグローバルスタンダード」
○金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに変更。マネタリーベースを2年間で2倍。年60兆〜70兆円で増えるよう市場調節(現在138兆円あるマネタリーベースを2年後に2倍の270兆円に膨らませる)(参考:3月のマネタリーベース(月中平均)は前年同月比19.8%増の134兆円で過去最高を記録。うち現金は87兆円で、当座預金は47兆円)

質的緩和(積極的にリスクとり)の部分
○不動産投資信託(REIT)、上場投資信託(ETF)などリスク資産を買い増し。長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍。長期国債の保有残高を年間50兆円のペースで増加させる。毎月の国債の買い入れ額は7兆円強で政府の月間発行額の7割に達する(黒田総裁、 長期国債買い入れは「財政ファイナンスではない」)。株価下支え効果のあるETFは年1兆円、不動産市況に効果のある不動産投資信託(REIT)は年300億円増やす
○長期国債の買い入れ対象を40年債を含む全ゾーン。買い入れの平均残存期間を3年弱から7年程度にする。
○「資産買い入れ基金」を廃止。「資産買い入れ基金」と金融市場の調節に使う「通常の国債購入枠」の統合
○政府の財政規律の確保を踏まえ銀行券ルール(銀行券の発行残高以上は国債を保有しない)を一時停止
○市場参加者との間で金融市場調節や取引全般に関し、密接に意見交換

■最近の日銀に関するニュースのまとめ:
2013.01.07(月) 日銀、2012年12月の資金供給量(マネタリーベース、月中平均)は131兆9837億円、前年同月比11.8%増。前年実績を上回るのは8カ月連続で、2カ月ぶりに過去最高を更新。日銀当座預金残高(月中平均)は36.5%増の43兆5567億円で2カ月ぶりに過去最高を更新。紙幣発行高は2.8%増で、11年9月(2.9%増)以来の高い伸び率。貨幣(硬貨)流通高は0.5%増と08年11月(0.5%増)以来の高さ
2013.01.18(金) 麻生太郎副総理・財務・金融相と甘利明経済財政・再生相、日銀の白川方明総裁、東京都内のホテルで会談し、政府と日銀の政策連携に向けた共同文書の内容で大筋合意。共同文書では、日銀が金融政策の運営上の目標として2%の物価上昇率を掲げ、今後結果を政府に報告する責任を示す
2013.01.22(火) ★★政府と日銀、デフレ脱却に向け2%の物価上昇率目標(インフレ・ターゲット)の導入を柱とする共同文書を発表。2%という数値には9人の政策委員のうち佐藤健裕氏、木内登英氏の2人が反対。2%は「現状で無理なく実現できる物価水準を大きく上回っており、成長力強化が伴わなければ逆に金融政策の信用を落とす」と主張。日銀は2014年から国債などの金融資産を月13兆円(長期国債2兆、短期10兆円)ずつ無期限に購入することは全員一致で決定。資産買い入れ基金の残高は14年中に現在より10兆円多い111兆円に増え、その後も残高を維持。ゼロ金利(0_0.1%の範囲)政策も継続
 共同声明のポイント
・デフレ脱却に向け政府・日銀の連携を強化
・日銀は物価上昇率2%の「できるだけ早期の実現」を目指し、金融緩和を続ける
・政府は財政への信認を確保し、日本経済の成長・競争力強化に向けて取り組む
・経済財政諮問会議で金融政策と物価情勢を定期的に検証
 日銀の金融政策運営のポイント
・物価上昇率目標として2%を明記
・2014年から期限を定めず資産を買い取る(オープンエンド)方式を導入
・ゼロ金利と資産買い入れ措置を、必要と判断する間は続ける
・2014年から、毎月長期国債2兆円を含む13兆円を買い入れる
2013.01.25(金) 東京外為、円相場は前日17時時点比1円14銭の円安・ドル高の1ドル=90円41〜44銭。8時50分に総務省が発表した2012年12月の全国消費者物価指数下落を受け「政府と日銀がデフレ脱却策を強化する(金融緩和で利下げ)との思惑で、円売りを誘った」
2013.02.05(火) ★日銀の白川方明(まさあき)総裁、3月19日に前倒し辞任表明。経済財政諮問会議の後に安倍晋三首相と会談し、日銀副総裁の任期が満了する3月19日付で総裁を辞任する意向を伝える。総裁の任期は4月8日まである。日銀総裁が任期前に辞職するのは1998年の松下康雄氏以来15年ぶり。98年4月施行の新日銀法下では初。報道うけて1ドル=92円台前半だった相場が、その後93円台へ下落
2013.02.25(月) 安倍首相、3月19日に退任する日銀の白川方明総裁の後任にアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦(はるひこ)総裁(68)、副総裁には学習院大学の岩田規久男教授(70)と日銀から中曽(なかそ)宏理事(59)を昇格させる案を提示
2013.02.28(木) 政府、衆参両院の議院運営委員会理事会で日銀正副総裁の国会同意人事案を提示。総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁(68)、副総裁に学習院大教授の岩田規久男氏(70)と日銀理事の中曽宏氏(59)
2013.03.04(月) 期待インフレ率、2月半ばに1%を超え1.16%まで上昇。日銀が1月22日の金融政策決定会合で2%の物価目標導入を決めるまで「物価安定のめど」としてきた1%を上回る。物価連動国債の発行が始まった2004年以降で最高水準まで上昇
(参考)市場の期待インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率:BEI)は普通国債の利回りから物価連動国債の利回りを差し引いて算出。日本相互証券がデータを作成、発表
2013.03.04(月) ★衆院議院運営委員会、政府が次期日銀総裁候補として提示した黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁から所信を聴取。黒田氏「2年ぐらいで2%の物価上昇率目標を達成することを念頭に大胆に金融緩和していく」。具体的な手段は「より長期の国債の購入を増やすことが自然だ」
2013.03.05(火) 衆院議院運営委員会、日銀副総裁候補の岩田規久男学習院大学教授と中曽宏両氏の所信を聴取。岩田氏「2%の物価上昇率目標の達成は義務。今まで以上に量的緩和を進める」「遅くても2年で達成できる」、未達の場合は「最高の責任の取り方は辞職だ」、「日銀法の改正も必要」
2013.03.07(木) 日銀、白川総裁体制での最後の金融政策決定会合、景気の基調判断を「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に引き上げ、追加金融緩和は見送る。白井さゆり審議委員は、毎月一定額の購入を無期限で続ける「無期限緩和」への移行を日銀が予定している2014年より前倒しすることを初めて提案。資産買い入れ基金を廃止し、資金調節の目的で行う通常の国債買い入れと統合する案も提示。いずれも否決
2013.03.11(月) 参院議院運営委員会、次期日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁から所信を聴取。黒田氏、20日に発足すれば「早期に具体的な緩和措置を審議して決定したい」「2%の物価安定目標の達成は、日銀総裁に課せられた最大の使命だ、必ず果たす」
2013.03.15(金) ★国会、次期日銀総裁に黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁(68)、副総裁に岩田規久男学習院大教授(70)、中曽宏日銀理事(59)をそれぞれ起用する人事案を正式に承認
2013.03.20(水) ★黒田日銀新総裁就任。黒田新体制スタート。副総裁岩田規久男、中曽宏
2013.03.21(木) 日銀の黒田東彦総裁、就任記者会見、「2%の物価上昇率目標の達成へ、2年程度を念頭に置き、量的、質的両面から大胆な金融緩和を進め、 達成まで、あらゆる手段を講じる」と表明
2013.04.01(月) 日銀、3月の企業短期経済観測調査(日銀短観)、業況判断指数(DI)大企業製造業でマイナス8。2012年12月の前回調査(マイナス12)に比べて4ポイント改善。DIの改善は3四半期ぶり。想定為替レートは大企業製造業で1ドル=85円22銭、12年度見込みの80円56銭よりも円安・ドル高

■これまでの日銀の金融政策のまとめ
・ゼロ金利政策 1999年2月12日〜2000年8月11日 速水優(98年3月〜)
・ゼロ金利政策を解除。無担保コール翌日物の目標を0.25%に 2000.08.11
・量的緩和政策 2001年3月19日〜2006年3月9日
・量的金融緩和政策を解除 2006.03.09 福井俊彦(2003年3月〜)
・ゼロ金利政策解除 2006年7月14日
・リーマン・ショックを受けて利下げ(0.5%→0.3%)2008年10月31日
                     白川方明(2008年4月〜)
・広い意味での量的金融緩和政策 2009年12月1日 
・ゼロ金利政策復活(包括緩和) 2010年10月5日
・中長期的な物価安定のめどを導入  2012年2月14日
 消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス。当面は1%をめど
 資産買い入れ基金を55兆円程度から65兆円程度に増額
 政策金利を年0〜0.1%程度に据え置き
・インフレ・ターゲットを導入 2013年1月22日 
 政府と日銀、デフレ脱却に向け2%のインフレ・ターゲットの導入を柱とする共同文書を発表
・量的・質的金融緩和政策を導入 2013年4月4日 黒田東彦(2013年3月〜)

2012年4月の話題[top] 2012年4月9日更新

今年は欧州債務危機,あるいはユーロ危機がテーマです.

2009年10月にギリシャの債務危機が発覚してから2年半、
2012年3月には欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)な
どによるギリシャへの第2次金融支援が実行されることと
なり、ギリシャ危機の最悪の局面は当面回避されることに
なりました。ギリシャ国民は国際的な金融支援を受ける代
わりに政府債務の削減や年金・賃金等の削減を甘んじて受
け入れざるをえません。しかしながら、ギリシャでは2012年
5月6日には総選挙が予定されており、国民に不人気な政策
を推し進めなければならないパパデモス政権が揺らぐことに
でもなれば、再度ギリシャ問題が国際的な焦点になる可能性
があります。
 欧州債務危機あるいはユーロ危機はギリシャ問題だけにと
どまりません。PIIGSと揶揄されるポルトガル、アイルランド、
イタリア、ギリシャ、スペインの各国がそれぞれ問題を抱え
ています。ギリシャは小国ですが、イタリアやスペインなど
の大国が危機に陥ると世界経済に与える影響は甚大です。
それぞれの国の債務危機の深刻さは、国債の利回りに瞬時に
反映されます。常日ごろ国債の利回りの推移に注目すること
が肝要です。
 これまでは、日本の為替レートは主にアメリカ経済あるい
はその経済政策に大きく影響を受けてきました。この傾向は
主流としては変わらないものの、ユーロ危機の影響が円レート
に与える効果に注視していかなければなりません。東京外国
為替市場の円相場は、2011年3月11日の東日本大震災以降
大幅な円高基調に動き、最高値は2011年10月31日の75円
52銭です。地球規模での最高値は同じく10月31日のシドニー
外国為替市場で記録した1ドル=75円32銭です。2011年の
安値は4月6日の85円53銭です。他方、ユーロ相場は、2011年
11月以降はイタリア国債の利回りが急上昇(価格は下落)する
など、欧州債務危機が深刻化するに伴い、ユーロもほぼ一貫して
下落を続け、2012年1月には一時97円台まで売り込まれました。
ギリシャの債務問題が当面の危機を回避した3月以降、ユーロ
相場は111円台まで戻しています。しかし、ギリシャ、イタリア、
スペインの政治経済状態は相変わらず不安定です。

■ 最近の3つの大きな経済危機
○アジア通貨危機(1997年7月):タイが震源
○リーマン・ショック(2008年9月):リーマン・ブラザーズ
の破綻、サブプライム・ローン問題
○欧州債務危機:ギリシャ危機が発端。EUの不安、PIIGS
(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)
の財政赤字

■欧州債務危機の主な出来事

○ギリシャ:2009年10月、ギリシャのパパンドレウ新政権、財政赤字額を大幅修正(GDP比3.7%から12.7%へ)
2009年12月、米の格付け会社ムーディーズがギリシャ国債を格下げ
ギリシャの名目GDPは2374億ユーロ(約30兆円)、EU全体の約3%。小が大を揺さぶる
2010.02.11(木) EU、臨時首脳会議で信用不安に直面しているギリシャ政府の財政再建を支援することで合意。ギリシャ政府が打ち出した再建策は今後3年でGDP比12%超の財政赤字を3%以下まで抑える計画
2010.02.24(水) ギリシャ、全土でゼネスト、給与凍結、増税など政府の緊縮策に反対
2010.04.11(日) EU、ユーロ圏16カ国、最大300億ユーロ規模(約3兆8000億円)のギリシャ向け資金繰り支援策で合意
2010.04.23(金) ギリシャ政府、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)に対し、資金支援を要請。1999年のユーロ発足後導入国が支援を受けるのは初
2010.05.02(日) 欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)とギリシャ政府、財政危機に陥っているギリシャへの資金支援策で基本合意。1999年の通貨統合後、初めてユーロ導入国が資金繰りで相互支援
協調融資の規模は2010ー12年の3年間で1000億ー1200億ユーロ(約12兆〜15兆円)
ギリシャ向けの協調融資は2010年に最大450億ユーロ。うち300億ユーロをギリシャを除くユーロ圏15カ国、残りの150億ユーロをIMFが融資
ギリシャ政府は付加価値税率を21%から23%に引き上げ中期的な財政再建策を策定
公務員の賃上げ凍結や手当カット
年金制度見直し、給付水準を実質削減
財政赤字を今後3年間で300億ユーロ削減する
削減幅はGDPの1割を上回る規模
財政赤字のGDP比率を09年の13%台から14年に3%以下まで低下させる
2010.05.10(月) ★★EU財務相理事会、総額7500億ユーロ(約89兆円)の金融支援策を発表。
EU緊急財務相理事会の合意内容
財政危機に陥った国を対象とした総額最大7500億ユーロの緊急融資制度を創設。
欧州委員会が債券を発行し600億ユーロの基金を設立。
ユーロ圏各国による政府保証をつけた4400億ユーロ規模の特別目的基金を設立。
IMFは最大2500億ユーロ規模を融資
ポルトガル、スペインの追加的な財政赤字削減策実施方針を確認。
(参考)金融危機への公的資金枠としては2008年の米国(7000億ドル)、1998年の日本(60兆円)
2010.06.04(金) ハンガリー政府関係者の「財政状況が従来考えられていたより深刻だ」と表現、ハンガリーの通貨フォリントが対ユーロで一時約2%下落
2010.06.08(火) EUの欧州委員会、ブルガリアがEUに提出した統計の内容に「幾分の懸念」があるとして、近く調査団を派遣する方向で検討に入ったことを明かす
2010.06.27(日) G20による首脳会議、先進国が2013年までに財政赤字のGDP比の「半減」で合意。日本は目標達成の例外扱い
2010.07.01(木) スペイン、付加価値税を16%から18%に引き上げ。ギリシャ、付加価値税率を21%から23%に引き上げ。ポルトガル、付加価値税率を20%から21%に引き上げ
2010.02.04(木) NYダウ、前日比268ドル37セント安の1万0002ドル18セント。一時9998ドル03セント、09年11月以来約3カ月ぶりの1万ドル割れ。欧州(ギリシャ、ポルトガル、スペイン)の政府債務問題が主要因
2010.05.04(火) NYダウ、一時260ドル超安、一時1万1000ドルを下回る、終値10926.77ドル。ギリシャの金融支援を巡る不透明感
2010.05.10(月) 欧州株式相場は全面高。EUが、ユーロ導入国が資金繰り悪化に陥った場合に備え緊急融資制度の創設で合意したことが影響
2010.06.04(金) NY外為、ユーロ一時、1ユーロ=1.20ドル台を割り込む、2006年3月以来約4年2カ月ぶりの安値
2010.06.07(月) 東京外為、一時、ユーロが対円で1ユーロ=108円10銭。前週末の終値より5円近く急落、2001年11月以来8年7カ月ぶりの安値
2010.06.07(月) 日経平均終値、前週末4日に比べ380円39銭(3.84%)安の9520円80銭、2010年最大の下げ幅、欧州の財政問題の新たな火種として前週末の海外市場でハンガリーが浮上
2010.06.07(月) ドイツのメルケル首相、財政赤字を減らすため2014年まで総額800億ユーロ(8兆8000億円)の歳出削減する計画を発表
2010.06.07(月) ギリシャ政府、公務員数を把握するため、初の公務員に関する調査を7月に実施すると発表。公務員数は全労働人口の20%に当たる約100万人
2010.06.08(火) EUの欧州委員会、ブルガリアがEUに提出した統計の内容に「幾分の懸念」があるとして、近く調査団を派遣する方向で検討に入ったことを明かす。2009年のブルガリアの財政赤字はGDP比3.9%(EU平均は6.8%)、公的債務は14.8%(同73.6%)の見通し
2010.06.14(月) ★米ムーディーズ、ギリシャ国債の格付けを従来の「A3」から投資不適格の「Ba1」に4段階引き下げ
2010.06.16(水) スペインの国債利回り、4.8%台に急上昇。欧州連合(EU)の支援発表後の約1カ月で1%近く上昇(価格は下落)。ドイツ国債との利回り格差は2.2%、1カ月で約1ポイント拡大
2010.06.27(日) G20による首脳会議(サミット)、先進国が2013年までに財政赤字のGDP比の「半減」で合意。日本は目標達成の例外扱い
2010.07.01(木) スペイン中央銀行、スペイン政府が主導して再編を進めていた同国の45の貯蓄銀行のうち39行を経営統合し、12行に集約される見通し
2010.07.01(木) スペイン、付加価値税を16%から18%に引き上げ
2010.07.01(木) ギリシャ、付加価値税率を21%から23%に引き上げ
2010.07.01(木) ポルトガル、付加価値税率を20%から21%に引き上げ
2010.07.12(月) ギリシャ議会、改正労働法を可決
・従業員151人以上の企業について、1カ月間に解雇できる従業員数をこれまでの全従業員の2%以内から、5%以内にまで拡大。従業員が20人未満の小企業では規制そのものを撤廃
・被雇用者に対する解雇通告は、従来の2〜24カ月前から1〜6カ月前へ短縮
・ 25歳未満の被雇用者に対しては、最低賃金を下回っても特例的に雇える
2010.07.13(火) ギリシャ政府、期間6カ月の短期国債を起債し、16億2500万ユーロ(約1800億円)を調達。当初の発行予定額12億5000万ユーロに対し3.6倍の45億4600万ユーロの応募。利回りは4.65%
2010.08.05(木) ギリシャ財務省、2010年1〜6月期の財政赤字は97億5400万ユーロ、前年同期比45.4%減少。10年の年間の目標(39.5%減)を上回るペースで財政赤字の削減が進んだ
2010.09.11(土) アイルランド政府の10年の財政赤字のGDPに対する比率、従来予測の11%台から約20%に上昇する見通し
2010.09.23(木) アイルランド、指標の10年物国債の利回り、6%台半ばに上昇、ユーロ導入後の過去最高水準近辺で推移。4〜6月期のGDPが前期比マイナス1.2%
2010.09.30(木) 米ムーディーズ、スペイン国債の格付けを最上級の「Aaa」から1段階引き下げ「Aa1」
2010.09.30(木) ポルトガル政府、2011年に付加価値税の税率を2%引き上げ23%に
2010.09.30(木) アイルランド政府と中央銀行、10年の財政赤字のGDPに対する比率は当初計画の約12%から32%に上昇。既に国有化したアングロ・アイリッシュ銀行への公的資金の投入額は最悪のケースで340億ユーロ(約3兆9000億円)に増大
2010.10.06(水) フィッチ、アイルランドの格付けを「AAマイナス」から「Aプラス」へ引き下げ
2010.10.06(水) EUの欧州委員会、ギリシャの09年の財政赤字の対GDP比率は13.8%から14%超に修正
2010.10.07(木) ギリシャ、公務員組合が24時間のストライキを実施
2010.10.29(金) EU首脳会議、欧州版の国際通貨基金(IMF)創設を盛り込んだ議長総括を採択し閉幕。2013年創設をめざす
2010.11.15(月) EU統計局、ギリシャの2009年の財政赤字の対GDP比率が15.4%になったと発表。前回公表値(13.6%)から1.8ポイント悪化。10年の財政赤字の対GDP比率も9.4%、財政赤字削減計画よりも1.3ポイント上昇する見通し
2010.11.15(月) ポルトガルのドスサントス財務相、EUなどに対し金融支援について「(支援に追い込まれる)リスクは高い」
2010.11.24(水) アイルランド政府、4カ年の財政再建計画を発表
全体計画
・財政赤字を2014年までに150億ユーロ減らし、GDP比3%に
・年率2.75%の経済成長
歳出削減(100億ユーロ)
・28億ユーロの社会保障費削減
・公務員の人数を2005年の水準まで削減
・公務員給与や年金の削減
・2014年から水道料金を有料化
 増税(50億ユーロ)
・19億ユーロの所得増税
・2013年以降に付加価値税(VAT)を段階的に2%引き上げ23%に
・不動産など資産課税強化
成長戦略
●低法人税率を維持
・最低賃金の引き下げなど雇用創出
・インフラ強化や公的サービスの効率化で輸出回復
2010.11.25(木) 中国国家外貨管理局、2010年7〜9月期の経常収支黒字額は前年同期比2.03倍の1023億ドル(約8兆5000億円)。1〜9月期の黒字額は30%増の2040億ドル
2010.11.25(木) アイルランド国債利回り上昇(価格は下落)続く。10年物国債利回りは9%強
2010.11.26(金) スペイン国債10年物利回り、一時5%強と2002年以来の水準に上昇。ポルトガル国債10年物も7%強と通貨ユーロ導入以来の最高水準
2010.11.28(日) EU、アイルランドへの金融支援策で、同国およびIMFと大筋合意。支援額は850億ユーロ(約9兆4000億円)。支援の前提として、アイルランドは緊縮財政や金融機関の再編を断行する。EUがギリシャ危機を教訓に整備した最大7500億ユーロの緊急融資制度を活用するのは今回が初
2010.12.07(火) アイルランド政府、2011年予算案を発表。支出削減と増税で60億ユーロ(6600億円)の財政赤字削減を盛り込む。アイルランドはGDPの約1割にあたる150 億ユーロ(1兆6500億円)を圧縮する方針
2010.12.09(木) フィッチ・レーティングス、アイルランドの長期外貨建ておよび自国通貨建て発行体デフォルト格付けを「Aプラス」から「BBBプラス」に3段階引き下げ
2010.12.14(火) 欧州連合(EU)がユーロ圏の金融安定の枠組みとして2013年に常設する「欧州版・国際通貨基金(IMF)」の概要が固まる。ユーロ導入国への金融支援に英国など非ユーロ圏の参加。ユーロ圏の国債を保有する民間投資家の負担を組み入れる
2010.12.16(木) 欧州連合(EU)首脳会議、欧州版の国際通貨基金(IMF)を2013年に導入する構想を承認
2010.12.17(金) 米ムーディーズ、アイルランド国債の格付けを「Aa2」(ダブルAに相当)から5段階下げ、「Baa1」(トリプルBプラスに相当)に引き下げ
2010.12.17(金) IMF、2015年時点のアイルランドの財政赤字がGDP比4.8%となるとの財政見通しを公表
2011.01.12(水) ポルトガル政府、期間約4年と約10年の国債入札を実施。総額で約12億5000万ユーロ(約1350億円)と予定の上限を調達。期間約10年の国債の入札利回りは平均6.7%、10年11月実施の入札に比べ0.1%低下。応札倍率は3.2倍、前回の2.1倍から上昇
2011.01.13(木) スペインとイタリア政府、国債入札を実施し、30億ユーロ(約3300億円)、60億ユーロをそれぞれ調達。スペインは5年債を発行し予定の上限を調達。利回りは前回に比べ1%上昇し4.54%。イタリアは5年債と15年債を発行、利回りはそれぞれ3.67%(前回は3.24%)、5.06%(前回は4.81%)
2011.02.10(木) ポルトガル、10年物国債利回り一時7.5%超、通貨ユーロ導入後の最高水準に急上昇(価格は下落)
2011.03.07(月) 米ムーディーズ、ギリシャの信用格付けを3段階引き下げ「シングルBプラス」にすると発表
2011.03.23(水) ポルトガル議会、財政再建に向けた追加緊縮策(年金給付減額が柱)を否決。これを受けソクラテス首相は辞任を表明
2011.03.24(木) 米S&P、ポルトガルの長期国債格付けを「Aマイナス」から「BBB」に2段階引き下げ
2011.03.25(金) ポルトガルの10年物国債の市場金利、一時年8.0%まで上昇、ユーロ発足以来最高
2011.03.29(火) 米S&P、ポルトガルの長期信用格付けを「BBBマイナス」に1段階、ギリシャは「BBマイナス」に2段階引き下げ
2011.04.05(火) 米ムーディーズ、ポルトガルの長期信用格付けを1段階引き下げ「Baa1」(トリプルBプラスに相当)にすると発表
2011.04.06(水) ポルトガル政府、欧州連合(EU)に金融支援を要請
2011.04.26(火) EU統計局、2010年のギリシャとポルトガルの財政赤字が当初の想定より拡大。ギリシャの財政赤字のGDP比は10.5%、政府の見通しは9.4%。ポルトガルも9.1%、政府の目標(7.3%)を超過。10年末のギリシャの債務残高のGDP比は142.8%、ユーロ導入国として過去最高水準
2011.05.05(木) 欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)、ポルトガルに対する金融支援策を発表。今後3年間に総額780億ユーロ(約9兆1000億円)を融資。ポルトガル政府は、財政赤字の元凶となっている公務員人件費の削減などの財政改革案を示す
2011.05.09(月) 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ギリシャの長期債務格付けを2段階格下げし「シングルB」
2011.05.20(金) フィッチ・レーティングス、ギリシャの外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付けを「BBプラス」から「Bプラス」(非常に投機的)に3段階引き下げ。S&Pの「B」、ムーディーズの「B1」に相当
2011.05.23(月) ギリシャ政府、60億ユーロ(約6900億円)超の追加的な財政赤字削減策を決定。公営企業の民営化などが柱で2011年の財政赤字はGDP比で7.5%まで削減。野党は難色
2011.06.01(水) ムーディーズ、ギリシャの長期国債格付けを「B1」(シングルBプラスに相当)から「Caa1」(トリプルCプラスに相当)に3段階格下げ
2011.06.13(月) 米S&P、ギリシャの長期債務格付けを「トリプルC」に3段階引き下げ。12カ月以内に債務不履行に陥るリスクが著しく高まったと評価
2011.06.17(金) 米ムーディーズ、イタリアの長期債務格付けを「Aa2(ダブルAに相当)」から引き下げ方向で見直すと発表
2011.06.29(水) ギリシャ議会(一院制、定数300)、緊縮財政策に関する2法案のうち大枠の方針を定めた基本法案を賛成155、反対138の賛成多数で可決
2011.07.05(火) 米ムーディーズ、ポルトガルの長期国債の格付けをダブルB格の「Ba2」に格下げ。ダブルB格は「投機的等級」。従来のトリプルBプラス格の「Baa1」から4段階の引き下げ
2011.07.06(水) ポルトガル国債の利回りが急騰(価格は下落)、10年物国債利回りは前日比2%弱高い13%強、ユーロ通貨導入後最高
2011.07.11(月) EUのユーロ圏17カ国財務相会合、財政危機のギリシャへの第2次金融支援(追加支援)について結論を持ち越す
2011.07.13(水) フィッチ・レーティングス、ギリシャの長期債務格付けを4段階引き下げ「トリプルC」。債務不履行(デフォルト)の可能性があると判断する水準
2011.07.15(金) EUの欧州銀行監督局(EBA)、域内の主要91行の資産査定(ストレステスト)の結果、8銀行が不合格。スペイン5行、ギリシャ2行、オーストリア1行。資本不足額は総額25億ユーロ(2800億円)
スペイン:カイシャ・カタルーニャ、バンコ・パストール、カイシャ・ウニン、バンコ・グルーポ・カハトレス、カハ・デル・メディテラネオ
ギリシャ:EFGユーロバンク、ギリシャ農業銀行、
オーストリア:オーストリア・フォルクスバンク
2011.07.22(金) ★EUのユーロ圏17カ国首脳会議、財政危機に陥ったギリシャに総額1600億ユーロ(18兆円)程度の第2次金融支援(追加支援)を行うことで合意。EUとIMFによる公的支援は1090億ユーロ、EU域内銀行など民間投資家はギリシャ国債への再投資などの形で370億ユーロ負担
第2次金融支援の骨子
・EUとIMFの公的支援は1090億ユーロ、民間投資家の負担は370億ユーロ
・欧州金融安定基金(EFSF)による融資の返済期間を7年半から15〜30年に延長、金利は年3.5%程度に軽減
・民間投資家はギリシャ国債への再投資など複数の選択肢を通じ、自発的に支援
・EFSFの機能を予防的融資、域内銀行の資本注入、市場での国債購入ができるよう拡充
・ギリシャ向けと同じ融資条件をアイルランド、ポルトガルに適用
2011.07.22(金) フィッチ・レーティングス、EUのギリシャ支援で、民間負担の仕組みが実際に発動された場合、「制限的デフォルト」に引き下げるとの声明を発表
2011.07.27(水) 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、EUがまとめたギリシャへの第2次金融支援に伴う民間負担の仕組みが発動されれば「債務不履行と見なす可能性が高い」。ギリシャの長期債務格付けを「トリプルC」から「債務者は現時点で非常に脆弱」と定義する水準の「ダブルC」に引き下げ
2011.08.05(金) ★★米S&P、米国債を最上位からAA+(ダブルAプラス)に1段階格下げ。S&Pは1941年に米国債を「AAA」に格付けし、70年間維持してきた
2011.08.07(日) フランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相、欧米の財政不安を発端とした金融市場の混乱を受け、ギリシャ支援を着実に実行することなどをうたった共同声明を発表
2011.08.08(月) 欧州中央銀行(ECB)、イタリアやスペインの国債の買い入れに乗り出す。
イタリアとスペインの国債購入額は合計で5億ユーロ以上(約550億円)に上る模様
2011.08.12(金) イタリア政府、追加的な財政再建策を決定。増税や公務員の削減(5万人)などを通じ、2012〜13年の2年間で財政赤字を455億ユーロ(約5兆円)減
(参考)イタリアの債務残高のGDPは約120%、財政赤字のGDP比は2010年で4.6%
2011.08.15(月) 欧州中央銀行(ECB)、先週1週間でユーロ参加国の国債を220億ユーロ(約2兆4000億円)ほど新たに購入したと発表
2011.08.16(火) 仏サルコジ大統領と独メルケル首相、パリで会談。ユーロ圏の財政統合を視野に各国首脳が経済・財政政策を話し合う「経済政府」の設立を目指すことで合意。ユーロ共同債の早期導入は否定
2011.08.19(金) ★★NY外為市場、一時1ドル=75円95銭の最高値。東日本大震災後の3月17日に付けた過去最高値(76円25銭)を更新
 主な企業の今期の想定ドルレートと為替感応度(1円円高の営業利益へのマイナス)
        想定ドル  為替感応度(億円)
トヨタ      80    340
日産       80    200
ホンダ      80    150
スズキ      80     10
ソニー      80     ゼロ
パナソニック   83     38
TDK       80     20
キャノン     80     48
リコー      80     13
コマツ      82     45
日立建機     80     17
川崎重工     83     26
(日経新聞 8月21日朝刊)
2011.08.22(月) 欧州中央銀行(ECB)、債券市場の安定を目的としたユーロ参加国の国債の買い入れが19日までの1週間で142億9100万ユーロ(約1兆5800億円)にのぼったと発表。どの国の国債を買い入れたかは非公表。ECBとユーロ圏各国の中央銀行が購入した国債の残高はこれで1105億ユーロ
2011.09.02(金) ギリシャ政府、2011年のGDPの落ち込み幅が予想の3.5%を上回り5%まで拡大しそうなことから、赤字削減目標の達成は困難との見通しを表明
2011.09.11(日) ギリシャ政府、追加的な財政再建策を発表。不動産税の増税などを通じて財政赤字を20億ユーロ(約2100億円)減らし、EUなどとの間で交わした赤字削減目標の達成を目指す
2011.09.12(月) 欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁、銀行への資金供給を無制限に実施する方針を表明。「ユーロ圏の銀行に固定金利で無限に流動性を供給する能力がある」。欧州発の金融不安の沈静化に努める姿勢を示す
2011.09.14(水) 米ムーディーズ、仏大手銀行のソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコルの長期債務格付けを1段階引き下げ。格下げ後の格付けはそれぞれ「Aa3(ダブルAマイナスに相当)」、「Aa2(ダブルAに相当)」。ギリシャ向け債権に損失が発生する懸念が強いこと、資金調達環境の悪化が理由
2011.09.15(木) ★欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、スイス国立銀行と日銀、米連邦準備理事会(FRB)の5中央銀行、10月から資金需要が高まる年末を越す期間約3カ月のドル資金を無制限に供給
2011.09.15(木) 欧州連合(EU)の欧州議会と加盟国政府、ギリシャ危機の再発防止策として、加盟国の財政赤字の対GDP比率を3%に収めるよう定めた加盟国共通の財政ルール、安定・成長協定(財政協定)改定の最終案で合意
2011.09.19(月) ★米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、イタリアの国債格付けを「シングルAプラス」から「シングルA」に引き下げ。「シングルA」は韓国やオマーン、トリニダード・トバゴなどと同水準。スペインの「ダブルA」と比べ3段階、日本の「ダブルAマイナス」より2段階低い
2011.09.21(水) ギリシャ政府、年金減額など追加的な財政再建策を決定。公務員3万人削減や年金支給減額のほか、所得税などの増税策を盛り込む。IMFによる第6弾の80億ユーロの融資は「ギリシャの追加策が条件」
2011.09.23(金) G20財務相・中央銀行総裁会議、緊急声明。ユーロ圏は次回のG20会議が開かれる10月中旬までに「欧州金融安定基金(EFSF)の柔軟性を増す」、政府債務(ソブリン)問題で迅速な対応を実施すると表明。外国為替相場については「過度な変動や無秩序な動きは経済や財政の安定性に悪影響を与える」
声明文の骨子
・ユーロ圏は次回会合(10月)までに欧州金融安定基金(EFSF)の柔軟性を増し、影響力を最大化させるための行動を実施
・為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与えることを再確認
・信頼に足る財政健全化計画を実施し、強固で持続可能かつ均衡ある成長を確保する
・11月の首脳会合に向けて、協調的な政策についての行動計画を策定するため協力する
・銀行システムと金融市場の安定を保つために必要なすべての行動をとる
・銀行が十分な資本や資金を調達し、バーゼル3を完全に実施することを確保
・中央銀行は必要な場合に銀行に流動性を供給する準備がある
2011.09.24(土) IMF、ワシントンでの国際通貨金融委員会(IMFC)で、世界経済が直面する危機に「断固として行動する」と明記した声明を発表
2011.09.29(木) ★ドイツ連邦議会(下院)、ユーロ圏の不安を抑えるため欧州金融安定基金(EFSF)の機能を広げる案を賛成多数で可決。融資能力を基金の額面(4400億ユーロ、46兆円)まで拡充。財政危機国の国債買い支え、民間銀行への資本注入が可能。ドイツの政府保証額を1230億ユーロから2110億ユーロまで引き上げ
2011.10.02(日) ギリシャ政府、財政赤字削減について2012年までの中途目標は達成困難と表明。計画では、09年にGDP比15.4%だった財政赤字を14年までに同3%以内に抑える。11年の目標は同7.8%であったが同8.5%までしか圧縮できない見通し
2011.10.03(月) ムーディーズ、ベルギー・フランス系金融機関のデクシアを格下げ方向で見直すと発表
2011.10.04(火) フランスとベルギー、両国系の大手銀行デクシアを救済に踏み切る方針決定。デクシアは債務危機に陥ったギリシャ向け債権を多く抱え、株価急落(4割弱下落)
2011.10.04(火) 米ムーディーズ、イタリアの長期債務格付けを「Aa2(ダブルAに相当)」から「A2(シングルA)」に3段階引き下げ。同社がイタリアの格付けを変更するのは2002年5月に「Aa3(ダブルAマイナス)」から「Aa2」に格上げして以来9年5カ月ぶり。S&Pは9月19日にムーディーズと同水準である「シングルA」に格下げずみ
2011.10.05(水) ギリシャ全土で1万人規模のゼネスト。年金のカットや公務員整理などを柱にした政府の緊縮策に反対
2011.10.07(金) 米ムーディーズ、ベルギーの政府債務格付けを現在の「Aa1(ダブルAプラスに相当)」から引き下げ方向で見直すと発表
2011.10.07(金) 米ムーディーズ、英銀12行の優先債務や預金の格付けを1〜5段階引き下げ。ロイズTSBを1段階、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)を2段階格下げ
2011.10.09(日) ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領、ユーロ圏の債務危機拡大を防ぐため、域内銀行の資本増強を果断に進める方針で全面的に一致
2011.10.10(月) ★フランス・ベルギー系大手銀行デクシア、同行を解体処理することを決定。ベルギーの国内銀行部門はベルギー政府に40億ユーロ(約4100億円)で譲渡し、政府管理下に置く。不良資産は「バッドバンク」と呼ぶ受け皿機関に切り離したうえで、仏とトルコ、ルクセンブルクの部門はそれぞれ売却。不良債権を含むデクシアの資産900億ユーロ(9兆3330億円)にはベルギー、仏、ルクセンブルクが政府保証を付ける。政府保証の割合はベルギーが60.5%、仏が36.5%、ルクセンブルクが3%
2011.10.11(火) スロバキア議会、ギリシャ財政危機の拡大阻止に向けた「欧州金融安定化基金(EFSF)」の機能強化策を否決。ユーロ圏17カ国のうち強化策の未承認国はスロバキアのみ。政府は12日以降に2回目の採決を行う予定。最大野党の支持で最終的に承認される公算
2011.10.11(火) 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、スペインの銀行10行の信用格付けを1段階引き下げ。大手銀サンタンデールとBBVAの格付けをそろって「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に下げ、見通しも「ネガティブ(弱含み)」。フィッチも、スペインの計6行の格付けを引き下げ
2011.10.13(木) ★スロバキア議会、欧州金融安定基金(EFSF)が銀行への資本注入や国債の買い支えをできるようにする機能強化策を再採決、賛成114、反対30、棄権3の賛成多数で可決。ユーロ圏全17カ国の議会承認が完了
2011.10.14(金) 日本の大手金融機関10グループ合計の欧州5カ国向け投融資残高は3兆円規模
        残高    うち国債(単位億円)
三菱UFJFG 1兆5000  3500
みずほFG    3500     0
三井住友FG   4500     2
野村HD     1500  非開示
大和証券       7     7
第一生命     3000  非開示
明治安田生命   1300  非開示
東京海上HD   非開示    101
2011.10.14(金) 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、仏大手銀BNPパリバの長期債務格付けを「AA」から「AA−」に引き下げ
2011.10.14(金) 米財務省、2011会計年度(10年10月〜11年9月)の財政赤字が1兆2986億1400万ドル(約100兆円)と発表。09年度から3年連続で1兆ドルの大台を突破
2011.10.15(土) G20財務相・中央銀行総裁会議(パリ)、共同声明を採択して閉幕。「銀行システムや金融市場の安定を保つための行動を取る」。欧州が打ち出した銀行の資本増強策を支持。「9月のG7財務相・中央銀行総裁会議を開いた時との違いは、(欧州問題の影響が)新興国に急速に波及していることだ」(安住淳財務相)
2011.10.15(土) 安住淳財務相、G20、消費税率を5%引き上げるための関連法案を来年の通常国会に提出。消費税上げを国際公約
2011.10.18(火) ★米ムーディーズ、スペイン国債の長期信用格付けを、最上位から3番目の「Aa2」から「A1」に2段階引き下げ
(補足)S&Pとフィッチは、ムーディーズの「A1」より1段階高い「AAマイナス」への引き下げにとどめている
2011.10.19(水) ギリシャ、政府の緊縮策に抗議する48時間のゼネスト
2011.10.21(金) ★★NY外為市場、円相場は一時1ドル=75円78銭まで上昇、8月19日に同市場でつけた1ドル=75円95銭を上回り、約2か月ぶりに戦後最高値を更新。最高値更新は今年に入って3回目。市場参加者「海外の投機筋が、取引量の少ないタイミングを狙って円買いを仕掛けた」。欧州の債務危機の解決までに時間がかかるとの見方から、より安全とされる円に資金が流れ込む動きが強まる
(注)東京外為の最高値は76.11円(11年9月21日)
2011年の最高値更新
・10月21日、75円78銭(NY)
・8月19日、75円95銭(NY)
・3月17日、76円25銭(NY)
2011.10.21(金) EU統計局、2010年の加盟国の財政赤字と債務残高の改定値を発表
         財政赤字       債務残高
ドイツ     4.3(3.3)   83.2(83.2)
フランス    7.1(7.0)   82.3(81.7)
イタリア    4.6(4.6)  118.4(119.0)
スペイン    9.3(9.2)   61.0(60.1)
ギリシャ   10.6(10.5) 144.9(142.8)
ポルトガル   9.8(9.1)   93.3(93.0)
アイルランド 31.3(32.4)  94.9(96.2)
(注)GDP比、( )内は4月発表値
2011.10.21(金) EUのユーロ圏17カ国の財務相会合、ギリシャへのつなぎ融資の実行を決定。融資額はIMFの分もあわせて計80億ユーロ(8480億円)、11月上旬に払い込む。融資は計1100億ユーロの1次支援の一部
2011.10.25(火) 日経新聞、主要企業の円高影響度ランキング、自動車・海運が上位
          営業利益への影響度(%)  利益減少額(億円)
1 富士重工業    ▲16.6         50
2 マツダ      ▲12.5         25
3 日本郵船      ▲9            9
4 トヨタ自動車    ▲7.5        340
5 川崎重工業     ▲6.2         31
6 商船三井      ▲5.7         20
7 ホンダ       ▲5.5        150
8 住友化学      ▲5           40
9 三菱重工業     ▲4.7         52
10日産自動車     ▲4.3        200
(注)円高による利益押し下げ額の営業利益に対する割合。1円円高の場合
2011.10.25(火) 東京外為、最高値76.04円
2011.10.25(火) ★NY外為、円相場一時1ドル=75円73銭まで上昇、21日に付けた過去最高値(75円78銭)を更新
2011.10.26(水) ★東京外為で初の1ドル75円台。一時75円96銭まで上昇、東京市場での最高値
2011.10.26(水) ★ロンドン外為市場、円一時1ドル=75円71銭まで上昇、25日のNY市場で付けた過去最高値(75円73銭)を更新
2011.10.27(木) ★EU首脳会議、欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。ギリシャ国債の元本削減など民間負担の割合を21%から50%に大幅に修正。欧州金融安定基金(EFSF)の実質的な規模を1兆ユーロ(約106兆円)規模へと拡大。銀行の資本増強は、普通株と内部留保でつくる狭義の中核的自己資本の比率を9%
2011.10.27(木) ★ロンドン外為、円一時1ドル=75円67銭まで上昇、26日の海外市場で付けた過去最高値(75円71銭)を更新
2011.10.31(月) ★★シドニー外為市場、円一時1ドル=75円32銭まで上昇し、過去最高値を更新。東京市場の最高値は75.52円
2011.10.31(月) ★午前10時25分、安住財務相外為市場への介入指示。単独介入。一時的に79.55円(当日の安値)まで下落。下落幅4円。介入額は7兆〜8兆円規模、8月4日の単独介入時の約4兆5000億円を上回り、過去最大規模と見込まれる。米国市場でも介入継続の観測
2011.10.31(月) ★ギリシャのパパンドレウ首相、金融支援の条件として欧州連合(EU)などから求められている財政赤字削減策を受け入れるかどうかについて国民投票を実施する考えを表明
2011.11.01(火) イタリア中央銀行のマリオ・ドラギ総裁(64)、欧州中央銀行(ECB)総裁に就任
2011.11.01(火) ★ギリシャ政府、EUが合意した包括対策を受け入れるかどうかを問う国民投票の実施を閣議決定
2011.11.04 (金) ★ギリシャ政府、包括策の是非を問う国民投票の中止を発表。独(メルケル)・仏(サルコジ)が説得
(参考)ギリシャはユーロ圏のGDPのうち3%を占める
2011.11.04 (金) ★G20サミット(仏カンヌ)、首脳宣言を採択して閉幕。「成長と雇用のためのカンヌ行動計画」を採択。同計画は「日本は2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」と明記。「10%」を国際公約
G20首脳宣言の骨子
・欧州債務危機の影響で新興国市場にも成長鈍化の明確な兆し
・経済成長の再活性化、雇用創出、金融安定の確保
・通貨切り下げ競争を避けるため、市場で決定される為替システムに速やかに移行する
・IMFの資金基盤拡充策を次回の財務相会議に向けて検討
・欧州債務危機に対する包括戦略を歓迎。早期の具体化と実施を促す
2011.11.04 (金) IMF、イタリアの財政再建を直接監視。イタリアの10年債の利回り一時、ユーロ導入後の最高値6.402%(3日)
(参考)イタリアの借金はGDP比120%超。イタリアの政府債務は約1.9兆ユーロ(約204兆円)、ギリシャの5.6倍
2011.11.04 (金) ★ギリシャ議会、内閣信認案を可決
2011.11.06 (日) ギリシャの与党と野党、大連立による新政権を樹立することで合意。パパンドレウ首相は辞任
2011.11.07 (月) イタリアの10年債利回り、前週末比0.46%高の6.58%、ユーロ導入後の最高水準を更新。ギリシャやポルトガルが金融支援の受け入れを迫られた7%台に近づく
2011.11.08 (火) イタリアのベルルスコーニ首相、議会で審議中の財政安定法案の成立後に辞任する意向を表明
2011.11.09 (水) ★イタリアの10年物国債の利回りが7.4%に急騰(価格は下落)。危険域の7%を突破。1999年のユーロ発足以来最高の利回りを更新
(参考)イタリアはユーロ圏の約17%の経済規模
2011.11.12(土) イタリアのベルルスコーニ首相(75)辞任。国会で欧州連合(EU)各国に約束していた財政緊縮策(2013年までに財政収支を黒字にする)が承認されたことを受け
2011.11.13(日) イタリアのナポリターノ大統領は、モンティ元欧州委員(現ボッコーニ大学総長)を新首相に指名
2011.11.16(水) マリオ・モンティ首相率いるイタリアの新政権発足。首相を含む17人の全閣僚が政治家ではない有識者や銀行の経営者
2011.11.17(木) 欧州市場でスペインの10年物国債利回りが前日比0.3%上昇(価格は下落)し、6.7%強。単一通貨ユーロ導入後の最高値更新
2011.11.20(日) スペインの総選挙、最大野党で中道右派の国民党が下院で単独過半数、与党の社会労働党に圧勝し7年ぶりの政権交代。国民党は財政再建の加速を掲げている
2011.11.21(月) ハンガリー政府、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請。ギリシャを発端とする南欧諸国の債務危機の余波でハンガリーからの資金流出が加速し、通貨フォリントは対ドルで6月末に比べ一時25%以上も下落
2011.11.23(水) イタリアの10年物国債利回り、一時自力での資金調達が困難で危険水域とされる7%台に再び上昇。同利回りが7%台になるのは、イタリアでモンティ新内閣の閣僚人事が決まった翌日の17日以来
2011.11.23(水) ★ドイツ政府実施の期間10年の国債入札、60億ユーロ(約6200億円)の募集に対し応札額が約39億ユーロにとどまる「札割れ」
2011.11.24(木) フィッチ・レーティングス、ポルトガルの長期信用格付けを1段階引き下げ、投資不適格のBBプラスに格下げ
2011.11.24(木) ムーディーズ、ハンガリーの長期国債の格付けを、21段階の上から10番目の「Baa3」から1段階下げて「Ba1」に格下げ。Ba1は投機的な水準
2011.11.24(木) ドイツのメルケル首相、欧州中央銀行による国債買い支え拡大とユーロ共通債導入の危機対策を拒否。フランスのサルコジ大統領、イタリアのモンティ首相と会談
2011.11.25(金) 米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ベルギーの長期国債の格付けを「AA+」から1段階下げて「AA」
2011.11.25(金) イタリアの10年物国債の利回り、一時前日比0.1%高い7.3%超に上昇(価格は下落)
2011.11.30 (水) ★日米欧の主要中央銀行、市場へのドル資金供給を拡充するための協調対応策で合意。米国が中銀にドル資金を供給するときの金利を0.5%引き下げ、金融機関はドル資金を容易に調達可能。2008年のリーマン・ショック時に導入したドル資金供給の枠組み(ドル・スワップ協定)を大幅に拡充
2011.11.30 (水) NYダウ、一時430ドルを超す上昇を記録
2011.11.30 (水) 欧州市場、ドイツの短期国債利回りがゼロを下回る「マイナス金利」が発生。1年物国債利回りが、一時前日に比べ0.15%低い(価格は高い)マイナス0.09%に低下。マイナス金利は投資家が金利収入と元本償還では回収できない高値で国債を購入したことを示す
2011.12.05 (月) ★米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、最高位格付けのドイツ、フランス、オランダ、ルクセンブルク、オーストリア、フィンランドの6カ国を含む、ユーロ圏15カ国の長期国債の信用格付けを引き下げる可能性があると発表
2011.12.06 (火) スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、欧州金融安定基金(EFSF)の「トリプルA」の格付けを引き下げ方向で見直すと発表
2011.12.07 (水) スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ユーロ圏の大手金融機関(ドイツ銀行や仏BNPパリバ、イタリアのウニクレディトなど)の信用格付けを一斉に引き下げ方向で見直すと発表
2011.12.08 (木) ★欧州中央銀行(ECB)、単一通貨ユーロを採用する17カ国の政策金利を0.25%引き下げて年1.0%。利下げは2カ月連続、金利水準はユーロ導入後の最低に並ぶ。ドラギ総裁「物価安定の使命を外れたことはできない」 財政悪化国の国債の買い入れ強化について、「答えはノーだ」。域内国の国債購入の大幅増額やIMFを介した資金支援には否定的な態度を鮮明
2011.12.09 (金) ★欧州連合(EU)首脳会議、ユーロ圏の政府債務危機への総合対策を盛り込んだ議長総括を採択し閉幕。財政規律強化のための新条約をつくることで合意。短期の市場安定策ではIMFを使った新安全網の整備や、常設の安全網である欧州安定メカニズム(ESM)の稼働前倒しを打ち出す。新条約にはユーロ圏26カ国が参加、イギリスは参加せず。欧州は通貨統合から「財政統合」に一歩踏み出す
 ○EUの債務危機対策と課題
・EFSF(欧州金融安定基金)の機能強化
 当初は単独で支援能力1兆ユーロへ拡大を目指した。
 しかしIMFなど絡めた苦肉の策に
・IMFの活用
 総額2000億ユーロの新制度を導入。
 日米や新興国などの協力が焦点
・ECB(欧州中央銀行)の関与
 EFSFの国債購入の代理業務。
 詳細は不明
・ESM(欧州安定メカニズム)設立
 2012年7月に前倒し。銀行化は見送り
・財政規律強化の新たな枠組み
 新条約へ英国を除き26カ国が参加見通し。違反国には自動制裁
2011.12.15 (木) フィッチ、欧州債務危機の懸念拡大を背景に、米バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)や米ゴールドマン・サックスなど米欧の金融大手7社の長期信用格付けを引き下げ。他は英バークレイズ、フランスのBNPパリバ、クレディ・スイス、ドイツ銀行、米シティグループ
2011.12.16 (金) フィッチ、イタリアやスペイン、ベルギー、スロベニア、アイルランド、キプロスのユーロ圏6カ国の国債を格下げ方向で検討すると発表。フランスについてもトリプルA格付けの先行きの見通しを「安定的」から「弱含み」に変更
2011.12.16 (金) 米ムーディーズ、ベルギーの長期信用格付けを上から2番目の「Aa1」から4番目の「Aa3」に2段階引き下げ
2011.12.30 (金) ★ロンドン外為、一時1ユーロ=99円85銭まで下げる。ユーロが流通した02年以降では最安値。1ユーロ=100円を割り込むのは2001年6月以来、約10年半ぶり
2011.12.30 (金) NY外為、ユーロが現金として使われ始めた2002年以降では最安値となる1ユーロ=99円47銭
2012.01.05(木) ★ロンドン市場、ユーロが円やドルに対して続落し、対円では一時、1ユーロ=98円46銭、2000年12月以来11年ぶりの安値
(参考)今後の注目点:2000年12月につけた96円28銭、同11月の91円40銭
ユーロ導入来の最安値2000年10月26日の88円93銭
2012.01.06(金) ★NY外為市場、ユーロが対円で大幅に下落し、一時1ユーロ=97円87銭、約11年ぶりの安値を更新
2012.01.09(月) ★シドニー外為市場、1ユーロ=97円28銭まで下落、前週末のニューヨーク市場で付けた2000年12月以来11年超ぶりの安値(97円87銭)を更新
2012.01.13(金) ★スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、最上位である「トリプルA」のフランスを含むユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げ。フィンランド、ルクセンブルク、オランダはトリプルAを維持
フランス   AA+ 1段階引き下げ
オーストリア AA+ 1段階引き下げ
スロベニア A+ 1段階引き下げ
スペイン  A 2段階引き下げ
スロバキア A 1段階引き下げ
マルタ A- 1段階引き下げ
イタリア  BBB+ 2段階引き下げ
キプロス BB+ 2段階引き下げ
ポルトガル BB(投機的)2段階引き下げ
2012.01.16(月) スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、欧州連合(EU)の欧州金融安定基金(EFSF)の信用格付けを最上級の「トリプルA」から1段階引き下げ「ダブルAプラス」に
2012.01.26(木) ★BIS、2011年9月末時点で主要24カ国の金融機関が国境を越えて与信(融資と債券投資)をした残高を公表。保証や担保分を差し引いた全体の与信残高は26兆1692億ドル(約2027兆円)、3カ月前の6月末に比べて2.7%減少。このうち欧州の銀行は、18兆1459億ドルで4.2%減。ドイツの公的部門に対する与信額は7〜9月期に12.9%増、8月上旬にかけて急速に信用不安が広がったイタリアは23.4%の大幅減、フランスも21.0%減、ギリシャは17.6%減、スペイン10.3%減
2012.01.27(金) フィッチ、イタリアやスペインなどユーロ圏5カ国の長期債務格付けを1〜2段階引き下げ。イタリアとスペイン、スロベニアは2段階引き下げ、それぞれ「Aマイナス」「A」「A」。ベルギーとキプロスは1段階下げて「AA」と「BBBマイナス」
2012.01.29(日) フランスのサルコジ大統領、付加価値税の税率を現行の19.6%から10月に21.2%まで引き上げる方針を示す。付加価値税率引き上げに伴う130億ユーロ(約1兆3200億円)の増収は社会保障費にあて、その分企業の負担を軽減
(参考)イタリアも9月に21%から23%に引き上げる
2012.01.30(月) ★EU、首脳会議で加盟25カ国(英国、チェコを除く)が財政規律強化のための新条約を制定することで合意。新条約は加盟国が憲法や基本法を改正し、財政赤字を原則ゼロにする「均衡財政」を義務づけ、対応が不十分な場合はEU司法裁判所が制裁金の支払いを命じる。
対米自由貿易協定(FTA)締結を検討することなどを盛り込んだ雇用・経済成長戦略の声明も発表
2012.02.07(火) ギリシャ、緊縮策に反対する官民の主要労働組合が大規模なストを実施
2012.02.09(木) ★ギリシャの連立与党3党、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が次期金融支援の条件として求めている緊縮策を受け入れることで合意。ギリシャが受け入れる緊縮策は(1)公共投資や国防費の圧縮などを通じ、今年の歳出をGDP比で1.5%削減(2)新たな就業者について、最低賃金を現状(月額約750ユーロ=約7万7000円)から22%引き下げ(3)公務員を1万5000人削減する
2012.02.15(水) 米ムーディーズ、世界の銀行と証券会社の大手17社の格付けを引き下げる方向で見直すと発表。米シティグループ、野村ホールディングスの他、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーの米銀5社とロイヤル・バンク・オブ・カナダ
2012.02.20(月) イタリアのモンティ内閣、外国企業参入の阻害要因ともなってきた同国の労働法(正式名称は「労働者憲章法18条」)の改正を目指す方針を固める。現行法は労働者の解雇を原則禁じているが、企業が業績悪化などの理由で解雇できるようにする
2012.02.21(火) ★欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)、ギリシャ向け第2次金融支援、総額1300億ユーロ(約14兆円)の追加支援を決定。ギリシャ国債を保有する民間債権者とECB、欧州各国中銀の3者の協力が柱。現在は約160%に達しているギリシャの政府債務の国内総生産GDP比率を2020年までに120.5%へ低下させる
2012.02.24(金) NY外為、円相場が対ユーロで大幅に下落し、一時1ユーロ=108円81銭。2011年11月1日以来、約4カ月ぶりの安値水準。欧州債務問題への警戒感がやや薄れる
2012.02.25(土) G20財務相・中央銀行総裁会議、メキシコで開幕。欧州債務危機を巡り、各国が欧州に自前の安全網の強化を求めることで一致
2012.02.27(月) 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ギリシャの債務格付けを「選択的債務不履行(デフォルト)=SD」に引き下げ
2012.02.29(水) フランス国民議会(下院)、付加価値税の税率引き上げを含む2012年予算案を可決成立。2012年10月から付加価値税の税率を19.6%から21.2%へと引き上げ
2012.03.01(木) 欧州連合(EU)統計局、2012年1月のユーロ圏の失業率は10.7%、前月比0.1ポイント上昇。失業者数は1692万5千人で、前月比で18万5千人増。スペインの失業率23.3%が最高。アイルランドとポルトガルは14.8%。最も低いオーストリアは4.0%。ドイツは5.8%。ギリシャは2011年11月時点の失業率は19.9%
2012.03.02(金) ★欧州連合(EU)首脳会議、新条約「経済通貨同盟の安定・調整・統治に関する条約」に署名。英国とチェコを除く加盟25カ国に原則として単年度の歳出入で赤字が出ないようにする「均衡予算」を義務づける。各国は単年度の財政赤字をGDP比で0.5%以内に収めることを憲法や基本法で明記。各国で批准の手続きを経て2013年の発効をめざす
2012.03.06(火) NYダウ2012年最大の下げ。終値は前日比203ドル66セント(1.6%)安の1万2759ドル15セント。ギリシャ問題への懸念が再燃
2012.03.08(木) ★★ギリシャ国債を保有する民間投資家の債務削減策がまとまり、同国が無秩序なデフォルトに陥る事態は当面、回避される見通し。投資家の8〜9割が債務カットに同意。債務は約1000億ユーロ(約10兆8000億円)減り、欧州連合(EU)やIMFによる第2次金融支援が実行される見通し。債務削減の対象となるのは、銀行や保険会社、ヘッジファンドなどが保有する約2060億ユーロのギリシャ国債。額面の53.5%を棒引きにしたうえで、残る46.5%分を新たに発行するギリシャ国債などと交換する。民間投資家に対し、強制的に債務を削減する措置(「集団行動条項」の発動)をとり、債務削減への投資家の参加率は95.7%
2012.03.09(金) ギリシャ政府、同国債を保有する民間投資家の83.5%が債務削減に応じたと発表。同国政府は民間保有の国債を約1000億ユーロ(約11兆円)圧縮する計画
2012.03.12(月) ★ギリシャ政府、民間投資家が保有する同国債の債券交換手続きを終了。債券交換はギリシャの債務削減策の柱。今回の交換の対象は、ギリシャ法に基づき発行された国債約1770億ユーロ(約19兆円)、「集団行動条項」の発動で強制交換する約250億ユーロ分を含む。元本を半分弱まで減らし、新たに発行するギリシャ国債などと交換。交換後のギリシャ国債は12日午後に取引が始まり、10年物の利回りは19%、30%を超えていた交換前に比べ低下
2012.03.12(月) 欧州連合(EU)、ユーロ圏財務相会合、スペインに2012年中の追加的な財政赤字削減策を求めることで合意。GDPに対する財政赤字の比率を11年の8.5%から5.3%に引き下げる。ギリシャ向け第2次金融支援の開始も正式に決定。同国の20年時点の債務の対GDP比率は117%まで低下する見通し
2012.03.13(火) フィッチ、ギリシャの信用格付けを「制限的デフォルト(債務不履行)」から「シングルBマイナス」に引き上げ
2012.03.21(水) 東京外為、ユーロ相場は一時1ユーロ=111円台、欧州債務危機が深刻になる直前の2011年秋の水準を回復
2012.03.27(火) OECD、ユーロ圏の金融安全網を1兆ユーロ(約110兆円)規模以上に拡大するよう求める政策提言を発表
2012.03.28(水) イタリアのモンティ首相、大手町の日経ホールで講演、欧州債務危機について「ほぼ収束した」
2012.03.30(金) 欧州連合(EU)、ユーロ圏財務相会合、金融安全網を8000億ユーロ(約87兆2000億円)に拡大することで合意
2012.04.04(水) ★欧州債券市場、スペイン国債利回りが一時、約3カ月ぶりの水準となる5.7%台に上昇。実施した中長期債の国債入札での調達額が26億ユーロと予定のほぼ下限にとどまったため
2012.04.04(水) イタリアのモンティ内閣、労働組合や左派政党の反対を受け、閣議決定済みの労働法改正案を一部修正。業績悪化などの経済的理由で従業員を解雇した場合、裁判所の判断次第で職場復帰を可能にする


2011年4月の話題[top] 2011年4月4日更新

3.11と日本経済
東日本大震災と円高

やはり何と言っても「東日本大震災」.2011年3月11日
午後2時46分に発生した「東北地方・太平洋沖地震」と
それによって引き起こされた巨大な津波(tsunami, tidal wave),
さらに福島第1原子力発電所からの放射能汚染は,
東北から関東を中心にして日本全体に甚大な人的・物的・
精神的被害をもたらしています.現時点では,どれだけ
の被害がもたらされるのかは定かではありませんが,
ここでは,経済に与える影響を整理しておきます.

■東北関東大震災被害状況
2011年3月31日現在、警察庁まとめ
死者  11,417人
行方不明16,273人
建物被害160,494戸

■内閣府による被害の試算(2011年3月23日公表)
東日本大震災による直接的な被害額:16兆〜25兆円
(参考)1995年1月の阪神大震災の建物や社会
インフラなどの被害額は約10兆円
2011年度の実質GDPを0.2-0.5%押し下げる
(注1)計画停電の影響などは織り込んでいない。
(注2)被害額の試算は、甚大な被害を受けた岩手、
宮城、福島に北海道、青森、茨城、千葉を加えた7道県を対象
(注3)津波被災地域の建築物の損害割合を30.6%など
としたケース1では、7道県の被害額は約16兆円。
このうち岩手、宮城、福島の3県だけで約14兆円を
占める。建築物の損害割合を80%と想定したケース2
では被害額は約25兆円
(注4)地震によって民間企業が保有する設備のうち
9兆〜16兆円程度が損害を受けたと想定。部品の流通
が滞る影響も考慮すると、2011年度の実質GDPは
1兆2500億〜2兆7500億円(0.2〜0.5%程度)押し下げ

■リチャード・クーの推定
Economist March 20, 2011
電力利用のGDP弾性値(電力利用変化率/GDP変化率)=2,
であることを前提に計算.
震災の影響で電力供給量は12%減少すると見込まれる。
12/GDP変化率=2
上式から、GDP変化率は6%、GDPは最大6%減少する。

■会田卓司の推定
日経新聞夕刊 2011年3月29〜4月1日
計画停電を考慮した推定であることが特徴
25%の電力供給の不足が見込まれる。
根拠:
現在の需要=4500万キロワット
供給   =3500万キロワット
夏場の需要=6000万キロワット
供給   =4500万キロワットまで増強
1500不足(1500/6000=0.25)

4〜6月期GDP:計画停電1カ月程度で実質GDPはマイナス0.2%
7〜9月期:計画停電3カ月程度で実質GDPはマイナス0.6%
復興需要の効果がでてくるのは10−12月期

■OECDの見通し
2011年4月5日公表
大震災により,日本は成長率が2011年第1四半期に
0.2-0.4ポイント,第2四半期に0.5-1.4ポイント
押し下げられる可能性

■東日本大震災で影響を受けた企業
原材料や部品供給の工場が多数被害を受けたことが,
製造業全般に影響を与えている.
例1:トヨタ,日産,ホンダが生産を停止.3万点の
部品のうち1つでも供給されないと生産ストップ.
サプライチェーンがずたずたになった.
ジャストインタイム方式で余分な在庫はもたない.
自動車関連部品の不足は日本国内だけでなく,
米国の自動車産業にも影響を与えている.

例2:少年ジャンプの発売が延期(紙の手配ができず)

自動車産業
 日産自動車 いわき工場(福島県いわき市),横浜工場,栃木工場
 トヨタ自動車 子会社の岩手工場(岩手県金ヶ崎町),宮城工場(宮城県大衡村)
 ホンダ 埼玉製作所(埼玉県狭山市),鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市),研究所(栃木県芳賀町)
エレクトロニクス
 ソニー 宮城県白石市の半導体レーザー工場,福島県郡山市のリチウムイオン電池工場など
 東芝  岩手県北上市の半導体工場
 ルネサスエレクトロニクス 茨城県ひたちなか市,山形県鶴岡市,青森県五所川原市など6カ所の半導体工場
石油
 JX日鉱日石エネルギー 仙台の精油所でLPGタンク付近で火災,鹿島(茨城県神栖市),根岸(横浜市)精油所
 コスモ石油 千葉精油所(千葉県市原市)でLPGタンクが火災
 丸善石油化学 千葉工場(千葉県市原市)で火災
化学
 クレハ いわき事業所(福島県いわき市)で火災
 三菱化学 エチレン生産の鹿島事業所(茨城県神栖市)
 信越化学工業 シリコンウエハー子会社の白河工場(福島県西郷村)
製紙
 日本製紙グループ 石巻工場(宮城県石巻市),岩沼工場(宮城県岩沼市)
 三菱製紙 八戸工場(青森県八戸市)
製鉄
 住友金属工業 鹿島製鉄所
 JFEコンテイナー(工業缶大手) 千葉工場(千葉市)
食品
 伊藤ハム 宮城県栗原市の子会社工場
 マルハニチロ食品 石巻工場(宮城県石巻市)
 キリンビール 仙台工場(仙台市)で貯蔵タンク4基が倒壊
 サッポロビール 仙台工場(宮城県名取市)で設備損傷
その他
 村田製作所 宮城県登米市,仙台市,栃木県小山市の工場
 IHI 航空機部品の相馬工場(福島県相馬市)
 日立製作所 日立,ひたちなか市等の工場
 第一三共 子会社の小名浜工場(福島県いわき市)
(注)上の表は主に日経新聞から

■東日本大震災の影響を受けた主な自動車メーカーの海外生産
トヨタ自動車(日):北米の全工場で時間外と土曜日の生産中止.4月中に全面中止も
ホンダ(日):北米の全工場で減産
日産(日):北米の全工場で6日間生産中止.中国で休日操業見合わせ
富士重工業(日):米インディアナ州の工場で減産
GM(米):米ルイジアナ州の工場で約1週間の生産中止.欧州と韓国でも減産や一部生産中止
フォード(米):米ケンタッキー州の工場で約1週間の生産中止.ベルギーでも5日間中止
プジョー・シトロエン・グループ(仏):欧州の7工場で生産中止
ルノーサムスン(韓国):韓国の上場で減産

■震災後不足した日常的な財
乾電池(特に単一),懐中電灯,ガソリン,ミネラルウォーター

■東日本大震災と福島原発関連
2011.03.11(金) ★★「東北地方・太平洋沖地震」(午後2時46分)、震度7、M9.0(国内観測史上最大)、津波は10メートル以上。震源は三陸沖
2011.03.11(金) 福島第1原子力発電所で日本初となる原子力緊急事態宣言が発令され、周辺半径20kmの住民には避難指示。原子炉内の冷却機能、津波に破壊され働かず
2011.03.12(土) ★東京電力福島第1原発1号機で炉心溶融、国内最悪の原発事故
(参考)1979年3月28日 米スリーマイル島原子力発電所事故、レベル5
1986年4月26日 チェルノブイリ原子力発電所事故、レベル7
2011.03.13(日) 東京電力、14日から全供給区域の1都8県を5つに分けて順番に電力供給を止める計画停電(輪番停電)を実施すると発表
2011.03.14(月) ★日経平均終値、633円94銭安の9620円49銭(6.18%)と1万円を割り込む。1万円割れは2010年12月1日(9988円05銭=終値ベース)以来3カ月半ぶり
2011.03.14(月) ★東京電力、午後5時から計画停電(輪番停電)を茨城県と静岡県の第5グループの一部地域で実施
2011.03.15(火) ★福島第1原発4号機で火災。2号機では格納容器下部にある圧力抑制室が破損。施設内で1時間あたりの放射線量が400ミリシーベルト(1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルト)を観測
2011.03.15(火) 菅直人首相、半径20キロ〜30キロメートル圏内の住民に屋内退避を求める会見
2011.03.15(火) ★日経平均急落。終値は前日比1015円34銭(10.55%)安の8605円15銭。下落率は1987年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ショック後に次ぐ過去3番目の大きさ
2011.03.16(水) ★★NY外為(NY午後5時20分、日本時間17日午前6時20分)、円相場が一時1ドル=76円25銭まで急伸、1995年4月19日東京外為市場で付けた最高値(79円75銭)を16年ぶりに更新
2011.03.18(金) ★G7緊急の電話会議、円売り協調介入で合意。政府・日銀は2兆円規模の介入実施。協調介入は2000年9月22日以来。終値は前日比2円48銭円安ドル高の1ドル81円69-71銭。ユーロは4円22銭円安ユーロ高の1ユーロ=114円77-81銭。日経平均は前日比244円08銭(2.72%)高の9206円75銭
2011.03.18(金) 経済産業省原子力安全・保安院、福島第1原子力発電所1〜3号機の事故は国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル5に引き上げ。1979年の米スリーマイル島原発事故もレベル5
2011.03.23(水) ★東京都、金町浄水場(東京・葛飾)の水道水から、厚生労働省が通知した乳児向けの暫定的な基準(1キログラム当たり100ベクレル)を上回る放射性ヨウ素(210ベクレル)を検出
2011.03.28(月) ★東京電力、福島第1原子力発電所の敷地内の土壌5カ所でプルトニウムを検出したと発表。検出されたのはプルトニウム238、239、240の3種類の同位体。このうち2カ所は原子炉から外部に漏れた可能性が高い
2011.03.31(木) ★財務省、日米欧の7カ国(G7)が18日実施した10年半ぶりの協調介入のうち、日本による介入額は6925億円だったと発表

■福島第1原発事故の経緯、時系列(共同通信、熊日、日経などより)
3月11日(金)
14:46 地震発生。福島第1原発で稼働中の1−3号機が自動停止
16:36 1,2号機で冷却機能喪失
19:03 菅直人首相が初の原子力緊急事態宣言。その後、周辺住民に非難を指示
3月12日(土)
14:00 経済産業省原子力安全・保安院が、1号機周辺で放射性セシウムが検出され、国内初の炉心溶融が起きたと発表
15:36 1号機の建屋で水素爆発
3月14日(月)
11:01 3号機も水素爆発
18:22 2号機で燃料が水面から完全露出
3月15日(火)
6:10 2号機格納容器の圧力抑制プール付近で爆発音があり、損傷
6:14 4号機も爆発。建屋が損傷
3月16日(水)
8:34 3号機付近から白煙が噴出
3月17日(木)
9:48 3号機に陸上自衛隊のヘリから水投下
3月18日(金)
10:20 東電が外部から電源を復旧させる作業を実施すると発表
17:50 保安院が1−3号機の国際評価尺度を国内最悪の「レベル5」と暫定評価
3月19日(土)
00:30 東京消防庁ハイパーレスキュー隊、福島第1原発3号機に放水
13:30 外部電源復旧作業で2号機への送電線接続が完了
3月20日(日)
15:46 復旧作業で2号機に外部からの電力供給
3月21日(月)
16:00 3号機の原子炉建屋の屋上南東側、使用済み核燃料プール近くで黒煙発生。原因不明
3月23日(水)
東京都の金町浄水場の水道水から、厚生労働省が通知した乳児向けの暫定的な基準(1キログラム当たり100ベクレル)を上回る放射性ヨウ素(210ベクレル)を検出
3月28日(月)
福島第1原子力発電所の敷地内の土壌5カ所でプルトニウムを検出。プルトニウム238、239、240の3種類の同位体。うち2カ所は原子炉から外部に漏れた可能性

■東日本大震災と円高
一般的には日本経済が強ければ円高,弱ければ円安
になる傾向があります.
今回,大震災に見舞われたので,多くの人は円安に
なるのではと,考えたに違いありません.
ところが,

2011.03.16(水) NY外為(NY午後5時20分、日本時間
17日午前6時20分)、円相場が一時1ドル=76円25銭
まで急伸、1995年4月19日東京外為市場で付けた
最高値(79円75銭)を16年ぶりに更新


(出所:日経新聞2011年3月17日)

ただ,今回の円高はちょっと奇妙です.それは,
1ドル=76円25銭の過去最高値を記録したのが
日本時間午前6時20分(NY午後5時20分)頃。
20分程度の間に一気に約3円も上昇したのです.
東京市場が開くのは午前9時.その前の取引の
薄い時間帯で起きた出来事という点です.

円高になった2つの理由
1 大震災で保険会社が巨額の保険金の支払いが
予想される。日本の保険会社は海外資産をたくさん
保有しているが、それを売却して円に換えるのでは
ないか(資金の本国送還、リパトリエーション)。
円への需要が増加する。→ 円高 を予想して円を購入
 その後わかったのは、日本の保険会社は海外資産
 を売却していなかった。

2 海外のヘッジファンドが、日本のFXを狙い撃ち
日本のFX投資家はドル買い(円売り)をしていた。
一方海外のヘッジファンドは円買い(ドル売り)を仕掛けた。
円買いの圧力の方が強かったので円高(ドル安)発生。
FX投資家には損失発生(高くなると思っていたドルが
安くなってしまった)。
この場合,損失確定が義務づけられている。
FX投資家は、持っていたドルを売って、円を買う、
反対売買を行う(これをロスカットという)。
従って、さらに円買い圧力が発生。一層の円高が発生

なお,G7による「協調介入」により,この急激な
円高は修正され4月上旬には85円台になっています.


(注)外国為替証拠金取引(FX)(日経2011年1月31日の,用語解説より)
個人が証拠金を預けると、その50倍までの外貨を売買できる金融商品。1998年の改正外為法で解禁。
多額の元手がいらないため若者や主婦も取り引きしているといわれる。FXを手がける個人について、
日銀によるとFX取引は「国内外の機関投資家や輸出入企業、ヘッジファンドなどと並ぶ外為市場の主要参加者」。

2010年4月の話題[top] 2010年4月7日更新

2009年9月16日に民主党を中心とする鳩山連立政権(民主党,国民新党,社民党)が発足して半年あまり,当初の期待が大きかったことの反動か,4月時点でのメディアによる内閣支持率調査では支持率は30%ほどに凋落しています(共同通信の世論調査では支持率33.0%,不支持は53.3%).支持率低下の主な理由は,鳩山首相自身の政治資金問題(母親から巨額の資金),指導力のなさ,小沢一郎幹事長の政治資金不明朗問題,沖縄普天間基地移設問題とゆうちょ銀行への預入限度額引き上げ(2000万円へ)についての迷走などさまざまです.

このような環境の中で,鳩山政権(民主党マニフェスト)の目玉でもある「子ども手当」と「高校授業料無償化」が4月1日からスタートしました.

2010.04.01(木) 子ども手当創設。中学校までの子ども1人につき月額13000円を6月から支給
2010.04.01(木) 高校無償化スタート。公立高校生から授業料徴収せず、私立校生には年約12万円を支給

子ども手当:

・少子化対策、不平等是正、景気対策
・中学生までの子ども1人に月1300円支給(2010年度)
・2011年度は月26000円(年31.2万円)、1700万人の子ども
・必要な財源、10年度は2兆2500億円、11年度は5兆円、財源のめど立たず
・児童手当は廃止
・扶養控除の廃止、縮小

高校授業料無償化:

・公立高校授業料徴収せず
・私立高校は年11.88万ー23.76万円(所得に応じて就学支援金)
・使途限定の現物給付

子ども手当の問題点:
何に使ってもよい
所得制限なく支給
目的(少子化対策、所得再分配、景気対策)と手段が不明確
財源が確保されていない。将来の財政赤字急増

子ども手当についてのアンケート調査:
「子ども手当」支持しますか
支持する    22%
支持しない   78%
日経新聞電子版(2010年3月31日)

このような政策をどのように評価するかというときに,経済学の知識,考え方が役立ちます.
経済学入門を学んだ後,あなたがたひとりひとりが自分の意見をもてるようになることを願っています.

2009年4月の話題[top] 2009年4月10日更新

テーマ:世界恐慌の再来

 2008年ほど前半と後半で経済状況が大きく転換した年は珍しい。うなぎ上りかと思われていたガソリン価格も8月の1リットル185円(全国平均)をピークに下がり続け、直近(2009年1月時点)では熊本でも103円台に低下しています。一部例外を除いて多くの国際商品価格も同様な推移をたどっています。インフレからデフレへ、ジェットコースターに乗っているようです。多くのエコノミスト、メディアは180度変化した今日の惨状を見通せませんでした。
 転換点の象徴は昨年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻でしょう。サブプライムローン問題が顕在化した2007年8月9日の「パリバ・ショック」から1年の間に、米国の金融危機は世界の金融危機に広がり、さらにその流れは実体経済までも飲み込み、今や「100年に1度」とも「これまでにない」という意味で「世界恐慌2.0」とも表現されています。世界的に需要は落ち込み、景気に敏感な統計の一つ新車販売台数は3割も落ち込み、米ビッグ3だけでなく、日本の自動車産業も苦境に陥りました。熊本にも大手自動車や電機の関連会社が多数あります。熊本の有効求人倍率は2008年11月には0.51倍まで低下しました(2009年の2月では0.41に低下,全国で41番目.全国平均は0.59)。不況と恐慌の違いを例えて次のように言われることがよくあります。「隣人が失業するのが不況、自らが失業するのが恐慌。」政府の財政政策の有効性が問われるときです。
(『熊本日日新聞』2009年1月19日(月)夕刊,笹山茂「きょうの発言」より,一部補足)

2008年9月からの主な出来事を整理しておきましょう.

■サブプライムから米金融危機
2007.08.09(木) BNPパリバ、サブプライムローン焦げ付きを理由に傘下の3つのファンドを凍結。
2007.09.15(土) 英銀行ノーザン・ロックに取り付け騒ぎ
2008年3月、証券5位ベアー・スターンズの破綻。FRBが救済.緊急融資。JPモルガン・チェースがベアー・スターンズを救済買収(3月16日(日))
09.07(日) 、財務省,連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を救済.公的資金総枠2000億ドル(21兆6000億円)投入
09.14(日) 米リーマン・ブラザーズ(米4位証券)破綻,負債総額は6130億ドル(約64兆3600億円)で米史上最大.米政府は救済せず

■米金融危機,広く・深く
09.14(日) 米メリル・リンチ証券(米証券3位),500億ドル(5兆3000億円)でバンク・オブ・アメリカ(米銀行2位)に救済買収
09.16(火) 米政府,経営難の米保険最大手AIGを救済.米政府がAIGの79.9%の株式を取得
09.21(日) 米FRB,米証券1位ゴールドマン・サックスと同2位モルガン・スタンレーの銀行持ち株会社化を承認
09.29(月) 米下院,最大75兆円の公的資金を投入する金融安定化法案を否決。NYダウ,史上最大の下げ幅,777.68ドル
10.01(水) 米上院,預金者保護の拡大などを盛り込んだ金融安定化法案の修正案を可決
10.03(金) 米下院,金融安定化法案を可決
10.14(火) ブッシュ米大統領,公的資金の金融機関への資本注入を発表.金融安定化法に基づく7000億ドル(約70兆円)の公的資金のうち2500億ドル(25兆円)を金融機関の株式購入に振り向け

■欧州も資本注入
09.28(日) ベルギー,オランダ,ルクセンブルクの3カ国政府,経営危機に陥った金融大手フォルティス(ベルギー最大手の金融機関)に3カ国が総額112億ユーロ(約1兆7300億円)の資本を注入し部分国有化
10.08(水) 英政府,公的資金による大手英銀8行への資本注入を柱とする包括的な銀行救済案を発表.総額500億ポンド(約9兆円)規模の基金を設立し銀行の自己資本を増強
10.13(月) ドイツ政府,国内金融機関へ公的資金800億ユーロ(約11兆円)の資本注入と金融機関の抱える債務への政府保証に4000億ユーロ(約54兆円)
10.14(火) 欧州の資本注入枠合計で2700億ユーロ(37兆8000億円).ドイツは800億ユーロ(11兆2000億円),英国は370億ポンド(6兆7000億円),フランスは400億ユーロ(5兆6000億円).金融機関の信用保証枠も合算すると総額は1兆9000億ユーロ(268兆円)

■BRICs,周辺国も危機
10.06(月) アイスランドのハーデ首相,「国家は破綻しかねない」と非常事態宣言,すべての銀行を管理下
10.24(金) IMF,アイスランドに2年間で最大21億ドルの緊急融資を発表
10.26(日) IMF,ウクライナに2年間で最大165億ドルの緊急融資.ハンガリー,パキスタンにも
12.10(水) インド,11月の新車販売前年同月比23.7%減の9万9983台
11.28(金) 韓国8年半ぶりに純債務国に転落
12.09(火) 韓国銀行,米FRBからドル資金30億ドル(約2770億円)を調達
12.10(水) 中国「中央経済工作会議」,雇用維持に必要とされる「8%成長」へ全力
12.11(木) ブラジル,11月の新車販売台数は前年同月比25%減の約17万8000台

■世界金融危機
10.08(水) FRB,ECB,イングランド銀行,スイス国立銀行,カナダ中銀,スウェーデン中銀の6中銀が政策金利0.5%の協調利下げ.新興国も追随,合計10中銀が同時利下げ
10.10(金) 主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7),各国の主要金融機関に対する公的資金を使った資本注入などを盛り込んだ「行動計画」を発表
10.11(土) G7に新興国が加わった20カ国(G20)の財務相・中央銀行総裁会議,先進国と新興国が協調しあらゆる経済・金融の政策手段を用いるなどとした声明を採択
11.15(土) 金融危機サミット,ワシントンで開催.G20が参加

■世界は協調利下げ
10.29(水) 米FRB,FF金利を0.5%引き下げ年1.0%
10.31(金) 日銀,無担保コール翌日物金利を0.2%引き下げ年0.3%
11.26(水) 中国人民銀行,基準金利を1年物で1.08%引き下げ,貸出金利を年5.58%,預金金利を年2.52%
12.04(木) 英イングランド銀行,政策金利を1.0%引き下げ年2.0%.1694年のBOE設立以来の最低の水準
12.04(木) 欧州中央銀行,政策金利を0.75%下げ年2.5%
12.04(木) スウェーデン中央銀行,1.75%の大幅な利下げ,政策金利は2%
2009.02.05(木) ★英イングランド銀行,政策金利を年1.5%から0.5%引き下げ年1.0%.利下げは5カ月連続.英国の政策金利が1.0%に低下するのは1694年の英中銀創設以来初

■金融危機から恐慌へ
11.06(木) トヨタ自動車,09年3月期の業績見通しを下方修正.営業利益は前期比74%減の6000億円,従来予想を1兆円下回る
12.01(月) 全米経済研究所(NBER),米経済が2007年12月から景気後退局面に入ったと発表
12.05(金) 米11月の失業率6.7%,前月比0.2ポイント悪化.非農業部門の雇用者数前月比53万3000人減少,74年12月(60万2000人減)以来34年ぶりの大幅な落ち込み
12.09(火) ソニー,全世界で1万6000人(正社員8000人削減)以上の人員削減や生産拠点の統廃合
12.09(火) 日本7ー9月期GDP改定値,実質で前期比0.5%減,年率換算で1.8%減,2四半期連続のマイナス成長
12.10(水) 米下院,ビッグ3への最大140億ドル(約1兆3000億円)の緊急融資を認める救済法案を可決
12.11(木) 米上院でのビッグ3救済法案調整決裂。1ドル88円

■経済壊滅状態
2009.01.27(火) 野村、2008年4ー12月期,最終損益は4924億円の赤字
2009.01.29(木)東芝の10ー12月期の営業損益通期では2800億円の赤字で7年ぶりの赤字転落
2009.01.29(木) 米フォード,08年12月期決算,年間の純損失は145億7100万ドル(約1兆3000億円)
2009.01.30(金) 日立製作所,09年3月期の業績7000億円の赤字の見通し
NEC,純損益が2900億円の赤字の見通し
2009.01.30(金) 厚生労働省,08年10月から09年3月までに職を失う非正社員は全国で12万4802人
2009.01.30(金) 総務省,12月の完全失業率4.4%,11月比0.5ポイント悪化.41年ぶりの過去最大の悪化幅。失業者270万人。有効求人倍率0.72倍
2009.01.30(金) 経済産業省,08年12月の鉱工業生産指数,前月比9.6%低下,比較可能な53年2月以降最大の下げ幅
2009.01.30(金) ★米商務省,08年10ー12月期の実質GDP年率換算で前期比マイナス3.8%.
マイナス成長は2期連続,減少幅は82年1ー3月期以来約27年ぶりの大き.2008暦年の実質成長率は1.3%
2009.02.06(金) ★トヨタ自動車,09年3月期の連結業績見通し,営業損益の赤字が4500億円に拡大する,最終損益は3500億円の赤字と発表.今期3度目の下方修正
2009.02.06(金) ★米労働省,1月の失業率,前月比0.4ポイント悪化の7.6%,1992年9 月以来16年4カ月ぶりの水準に悪化.非農業部門の雇用者数は前月比59万8000人減少,1974年12月(60万2000人減)以来約 34年ぶりの落ち込み.雇用者数の減少は13カ月連続,08年1月からの合計は約360万人
2009.02.13(金) ★ユーロ圏(15カ国)の08年10−12月期域内実質GDP前期比1.5%減,過去最大の減.ドイツの成長率はマイナス2.1%
2009.02.16(月) ★★内閣府,08年10ー12月期の実質GDP,前期比3.3%減,年率換算12.7%減.輸出が過去最大の落ち込み.前期比成長率の寄与度では外需が3.0ポイントのマイナス.年率換算で2ケタ台のマイナスは第1次石油危機の影響を受けた74年1ー3月期(13.1%減)以来35年ぶり,戦後2度目.マイナス成長は3四半期連続.名目GDPは前期比1.7%減,年率6.6%減.GDPデフレーターは前年同期比0.9%のプラス,1998年1−3月期以来約10年ぶりのプラス
         第一次石油危機時との比較
         74年1−3月期   08年10ー12月期
実質成長率     ▲3.4%      ▲3.3%
(年率)     (▲13.1%)   (▲12.7%)
外需寄与度     0.4ポイント    ▲3.0ポイント
鉱工業生産下落率  ▲0.2%      ▲12.0%
完全失業率     1.3%       4.0%
円相場       290.80円    96.10円
CPI上昇率    22.0%      1.0%
2009.02.19(木) ★内閣府,2008年10ー12月期の需給ギャップ,マイナス4.3%(金額で約20兆円).ほぼ7年ぶりの大幅な需要不足
2009.02.27(金) ★厚生労働省,1月の有効求人倍率,前月比0.06ポイント低下の0.67倍.熊本県は前月比0.05ポイント低下の0.44倍,9カ月連続の低下,02年5月以来6年8カ月ぶりの低水準,全国の順位は40位
2009.02.27(金) ★経済産業省,1月の鉱工業生産指数76.0,前月比10.0%低下,下げ幅は過去最大
2009.03.05(木) ★財務省,08年10−12月期法人企業統計,企業の経常利益,前年同期比64.6%減の5兆533億円,1974年に記録した過去最悪に並ぶ水準.製造業の経常利益は94.3%減で過去最大の減益率,設備投資は17.3%減で7期連続の減で落ち込み幅は過去最悪
2009.03.06(金) ★米労働省,2月の失業率,前月比0.5ポイント高の8.1%,1983年12月(8.3%)以来約25年ぶりの水準に悪化.非農業部門の雇用者数は前月比65万1000人減少.14カ月連続の雇用減.雇用減は08年1月からの合計で約440万人
2009.03.09(月) ★★財務省,2009年1月の経常収支,1996年1月以来13年ぶりの赤字,1728億円,赤字額は比較可能な1985年1月以降で最大.経常赤字は85年1月以降では4回目
  2009年1月の国際収支(単位億円,前年同月比%)
経常収支         ▲1,728
 貿易・サービス収支  ▲11,002(注:赤字は4カ月連続で最大)
  貿易収支       ▲8,444(注:過去最大の赤字額)
  輸出         32,822(▲46.3%)
  輸入         41,266(▲31.7%)
  サービス収支     ▲2,558
 所得収支         9,924
 経常移転収支        ▲650
資本収支        ▲21,077
 投資収支       ▲20,855
 その他資本収支       ▲222
外貨準備増減       ▲1,793
誤差脱漏         24,598
(注:2009年1月は経常収支と資本収支が共に赤字,通常はどちらかがプラス.代わりに誤差脱漏が大幅増.財務省のコメント「為替が大きく動くときは資産評価が難しくなるなどの影響で,統計上の誤差がでやすい」)
2009.03.18(水) ★米商務省,08年の経常赤字,6732億6500万ドル(66兆円1800億円),前年比7.9%縮小.2年連続の減少.赤字のGDP比は前年の5.3%から4.7%まで縮小.外国から米国への投資は70.9%減.米国から外国への投資は95.9%減
2009.04.01(水) ★日銀3月の短観,大企業製造業の業況判断指数がマイナス58,第一次石油危機後の75年5月(マイナス57)を下回り,74年5月の統計開始以来過去最悪.悪化幅も前回調査比34ポイント下落,悪化幅も過去最大
  業況判断指数の内訳
大企業製造業
       前回   今回   先行き
自動車    ▲41  ▲92  ▲83
電気機械   ▲37  ▲69  ▲58
一般機械   ▲22  ▲64  ▲68
非鉄金属   ▲43  ▲81  ▲65
鉄鋼      12  ▲65  ▲69
精密機械   ▲14  ▲50  ▲47
繊維     ▲38  ▲69  ▲67
木材・木製品 ▲45  ▲82  ▲73

■米国はゼロ金利政策(ZIRP)
2008.12.16(火) 米FRB,史上初の事実上「ゼロ金利政策」.公開市場委員会,政策金利フェデラル・ファンドレートの誘導目標を現行の年率1.00%から0.00-0.25%に引き下げ.93年2月以来となる日米の政策金利逆転
2008.12.19(金) 日銀,無担保コール翌日物金利の目標を年0.3%から0.1%に引き下げ
2009.01.08(木) 英イングランド銀行,政策金利を0.5%引き下げ年1.5%.利下げは4カ月連続,英中銀の1694年の創設以来初めて1%台に低下
2009.03.02(月) ★日本自動車販売協会連合会,2月の国内新車総販売台数(軽自動車含む),前年同月比24.3%減の38万582台.登録車は32.4%減の21万8212台で7カ月連続の減.軽自動車は9.8%減の16万2370台で4カ月連続の減
2009.03.05(木) ★イングランド銀行,政策金利を0.5%引き下げ年0.5%に決定,即日実施.英国債(CPや社債も対象)の購入を通じて市場に大量の資金を供給する「量的緩和」策の導入を表明,買い取り枠は750億ポンド(約10兆円,GDPの5%相当)

2009.03.18(水) ★★米FRB,FOMCで長期国債を向こう半年で最大3000億ドル(29兆円)購入することを全会一致で決定.大規模な長期国債購入は約半世紀ぶり.FF金利の誘導目標は現行の0-0.25%に据え置き.住宅ローン担保証券購入は2.5倍の1兆2500億ドルに増額.政府機関債購入は2000億ドルに倍増.日米英が「量的緩和」で協調
  日米英の金融政策
     政策金利    長期金利  国債発行残高(GDP比)   長期国債購入
日銀  0.1      1.25  686兆円(1.38倍)  月1兆8000億円
FRB 0.0ー0.25 2.53  561兆円(41.64%) 半年で29兆円
BOE 0.5      3.11  71兆円(35.98%)  3カ月で10兆円

量的緩和政策そろい踏み、日米欧

■各国の不況対策
2009.02.14(土) ★G7財務相・中央銀行総裁会議(ローマ),共同声明を採択
・世界経済と金融市場の安定に向け「政策手段を総動員する」
・「(世界経済の)悪化状況はほぼ2009年中は続く」
・「保護主義的な通商政策の回避を約束する」
・為替相場については「過度な変動や無秩序な動きは経済と金融の安定に悪影響を及ぼす.引き続き市場を注視し適切に協調する」
 主要国の景気・金融危機対策
米国   7000億ドル(64.4兆円) 金融安定化のための公的資金枠
     7870億ドル(72.4兆円) 環境分野の雇用創出,道路網整備
英国   200億ポンド(2.6兆円)  付加価値税の減税,学校施設などの公共投資
ドイツ  810億ユーロ(9.6兆円)  所得税減税,雇用助成金の拡充
フランス 260億ユーロ(3.1兆円)  自動車購入補助金,公共投資
日本   08年度第一次補正予算(11.5兆円)高齢者の医療費負担軽減,
                     中小企業の資金繰り支援
     08年度第二次補正(27兆円) 定額給付金,高速道路料金下げ,
                     自治体の雇用創出
     09年度予算(37兆円)    雇用保険料下げ,住宅ローン減税拡充
                     中小企業の法人税率下げ
2009.02.18(水) ★日本銀行,銀行が保有する株式の買い取りを23日から開始を発表.約4年半ぶりの再開,2010年4月末までに1兆円を上限に買い取る予定
2009.02.27(金) ★2009年度予算案と関連法案,衆院本会議で与党などの賛成多数で可決.一般会計総額が88兆5480億円,一般歳出が51兆7310億円でいずれも過去最大
2009.03.03(火) ★ドイツの自動車工業会,2月の国内新車販売台数,前年同月比22%増の27万7800台,08年7月以来の増.ドイツ政府は1月末から「スクラップ奨励金」の補助金実施.1台2500ユーロ(30万円)の補助金支給.総額15億ユーロ(1800億円),60万台分の買い替え枠を用意
2009.03.11(水) ★米財務省,2月の財政収支,1927億ドル(18兆7000億円)の赤字,赤字額は前年同月比9.8%増.08年10月からの09年度の赤字の累計は7645億ドル.08年度の赤字額4547億ドルの1.5倍.09年度の財政赤字予想額は1兆7520億ドル
2009.03.14(土) ★G20財務相・中央銀行総裁会議(ホーシャム,英国南部)共同声明,「経済成長を回復するため,あらゆる手段を取る」.FRBのバーナンキ議長,日銀の白川総裁は欠席
・IMFの資金基盤の増強と融資枠拡大が必要
・アジア開発銀行の増資が必要
・保護主義と戦い,自由貿易と投資を維持する
・ヘッジファンドなどを金融監督・規制の対象に
・格付け会社やヘッジファンドに登録制を導入
・金融機関に好況時の自己資本積み増しを要請
(参考)G20主要国の政策金利(%)
日本    0.1
米国    0ー0.25
英国    0.5
ユーロ圏  1.5
インド   5
中国    5.31
ブラジル 11.25
ロシア  13
2009.04.02(木) ★G20首脳会議(金融サミット,ロンドン),首脳宣言を採択.
・景気対策の総額が10年末までに5兆ドル(500兆円)
・各国の追加経済対策で世界の成長率を4%押し上げ
・2010年末までに世界全体で2%を超す経済成長率を実現する
・G20合計で09年中に1900万人の雇用を作り出す
・金融安定化フォーラムを強化しIMFとの連携を拡大
・ヘッジファンドも規制・監督の対象にする
・タックスヘイブン地域の特定
・格付け機関への登録制導入
・IMFの資金基盤拡充
・SDRの新規配分による新興・途上国への資金支援
・IMFでの新興国の発言権拡大
・09年秋まで新たな貿易障壁を設けないとの誓約の期間を延長
・貿易金融への支援拡大での協調
保護主義を防ぐため通貨引き下げ競争を抑制する

■オバマ政権の登場
2009.01.20(火) オバマ米大統領就任(第44代)
ガイトナー(Timothy Geitner,47) 財務長官
サマーズ(Laurence Summers,54) 国家経済会議(NEC)委員長.大統領経済アドバイザー
ローマー(Christina Romer,50) 大統領経済諮問委員会(CEA)委員長
バーンズ(Melody Barnes,45) 国内政策会議(DPC)委員長
ボルカー(Paul Volcker,82) 経済回復諮問会議.閣外のお目付役

前職は
ニューヨーク連銀総裁(03-),99-01の間ルービン,サマーズ財務長官の下で国際担当財務次官,日本に不良債権処理を促す.IMF(01-)
ハーバード大学教授,ハーバード大学学長(01-06),財務長官(99.7.2-01,クリントン政権),財務次官(95,ルービン財務長官下),財務次官補(93),世銀チーフエコノミスト(91-93),CEAスタッフ(82-83,レーガン政権),28歳でハーバード大学教授
カリフォルニア大学バークレー校教授,恐慌史などを研究.夫David Romerは同じくUCBの教授(マクロ経済学)
シンクタンク米国進歩センター副所長,E.ケネディー上院議員の側近
元FRB議長(79年8月-87年8月,カーター,レーガン政権下)

■オバマ政権の経済政策は
民主党伝統の「大きな政府」
ビッグ3救済,150億ドル(1兆4000億円)の公的資金投入
2009.01.28(水) 米下院,オバマ政権が検討している総額8190億ドル超の景気対策法案を可決
2009.02.06(金) ★米上院民主党と共和党,景気対策法案の規模を9000億ドル超から7800億ドル(71兆円)に減額することで合意.歳出分が58%,減税分が42%,残りが住宅購入者への減税
2009.02.10(火) ★ガイトナー米財務長官,2.5兆ドルの新たな金融安定化策を発表
・新設する官民共同の投資ファンドを通じ最大1兆ドルの不良資産を購入
・FRBの信用収縮緩和策も1兆ドル規模に拡大
2009.02.13(金) ★米上下両院,約7870億ドル(約72兆5000億円)の景気対策修正法案を可決.歳出増で64%,減税で36%.バイアメリカン条項維持するが国際協定順守し適用.350万人の雇用を創出
 景気対策法案の概要
歳出 約5000億ドル
    1200 橋や道路,科学関連
    1060 教育・自治体向け支援
     380 環境・エネルギー向け投資
     240 低所得者層向け生活支援
    1930 失業者支援,医療保険助成
減税 約2870億ドル
    1160 所得減税(個人で400ドル,夫婦で800ドル)
     140 高齢者などの生活支援
     140 大学進学者の負担軽減
      80 住宅・自動車の購入促進
      50 失業手当の課税控除
     700 中間層の所得税負担の軽減
     200 代替エネルギー投資促進
2009.02.17(火) ★オバマ米大統領,コロラド州デンバーで約7800億ドル(約72兆円)の景気対策法案に署名,同法成立
2009.02.26(木) ★オバマ米大統領,中期の財政見通しと2010年会計年度(09年10月ー10年9月)予算案を議会に提出.09年度の財政赤字は史上最大の1兆7500億ドル(約171兆円)の見通し
2009.02.27(金) ★米財務省,米大手銀行シティグループへの追加支援策を発表.公的資金注入の見返りとして現在保有している優先株のうち最大250億ドルを議決権のある普通株に転換,事実上公的管理下に置く.政府は普通株の約36%を保有


2008年4月の話題[top] 2008年4月7日更新

テーマ:サブプライムローンと物価

2007年秋以降さまざまな物価が値上げになっています.08年4月からでも次のようなものが値上げされています.
ただし,ガソリン価格だけは別の理由で値下げになっていますが.


2008.04.01(火) ★ガソリンの道路特定財源の暫定税率期限切れ.ガソリン1リットル当たり25.1円下げ.暫定税率は1974年導入,失効は初.道路特定財源は年間2兆6000億円不足
 価格   税負担額 価格に占める比率
153円  61円   40%
127円  35円   27%←暫定税率期限切れ後
2008.04.01(火) 改正パートタイム労働法施行
2008.04.01(火) 三越と伊勢丹,経営統合し「三越伊勢丹ホールディングス」
2008.04.01(火) 75歳以上を対象とした「後期高齢者医療制度」スタート.75歳以上は1割負担.保険料額は全国平均で月額約6000円,4月支給の年金から保険料天引き
2008.04.01(火) ★政府,輸入小麦平均30%値上げ
2008.04.01(火) ★サッポロとサントリー,ビール類3−5%値上げ
2008.04.01(火) ★明治乳業(3−10%),森永乳業(4.7%),牛乳を値上げ
2008.04.01(火) ★よつ葉乳業,バターを平均9%値上げ
2008.04.01(火) ★日清オイリオ,食用油を平均10%値上げ
2008.04.01(火) ★ヤマサ醤油,しょうゆを平均11%値上げ
2008.04.01(火) ★山崎製パン,パンや和洋菓子など1200品目以上を5月16日出荷分から平均約8%値上げすると発表
2008.04.01(火) ★日本ケンタッキー・フライド・チキン,約半数の商品を値上げ.平均6.8%の値上げ.オリジナルチキンは210円から230円へ値上げ
2008.04.01(火) ★代ゼミ,年間授業料を5000ー1万円値上げ
2008.04.01(火) ★日本航空・全日空,国内線平均2.6%値上げ
2008.04.01(火) ★キッザニア東京,入場料を5%値上げ,子どもは3150円

■サブプライムローン問題と物価の値上げが実は密接な関係があるのです
(謎解き)
(1)サブプライム問題
米国の低所得者や信用度の低い個人向けの住宅ローン。審査緩いが高金利。
米国(世界)の金融機関に大きな損失発生 → 米国の株式市場大幅下落
→ 世界の投機資金は株式市場から、原油、穀物相場に流れる
→ 原油高(中国・インド等の新興国の需要増加)
→ 穀物価格高騰

(2)米国のバイオエタノール奨励策
トウモロコシから自動車用燃料、ガソリンを部分的に代替
米国の農家は、大量にバイオ燃料用トウモロコシを栽培 → 食料用とうもろこし、大豆、小麦等の栽培面積減少

(3)オーストラリアの旱魃
日本の小麦の3大輸入国

以上の理由により,

小麦
トウモロコシ
大豆
原油

を原材料としている商品が軒並み値上がりしています.

(参考新聞記事)
1「持論百論 値上げラッシュ」
 『熊本日日新聞』2007年11月30日
2「原油、飼料作物の高騰・・・スポーツにも余波」
 『熊本日日新聞』2008年1月12日夕刊
3「原油高 学校給食ピンチ」
 『熊本日日新聞』2008年1月28日

■サブプライム問題とは
サブプライムローン(subprime)とは,低所得者など信用力の低い米国の個人向けの住宅ローンのことです.最初の数年は低金利が適用されますがその後は大幅に金利が上がる仕組みです.このような住宅ローンが成立するのは,米国の住宅価格が年々上昇し続けるという前提があってのことです.住宅価格が上昇すればそれを担保に優良なローンに借り換えることができるのです.住宅価格バブルが崩壊すると,たちまちローンを返済できない個人が増え,住宅ローン会社は不良債権を抱え込むことになります.

米国の住宅ローンを借りる個人とローン会社だけの問題なら,サブプライム問題は米国内だけの問題として処理されるのですが,サブプライム問題は米国だけでなくヨーロッパは日本にまで波及しています.それはなぜでしょう.その答えは「証券化」です.米国の住宅ローン会社は,その債権を「住宅ローン担保証券」(RMBS: Residential Mortgage Backed Securities)として世界の金融機関に転売しました(例えるならば,トランプのババ抜きのババ).金融機関はRMBSを元に,その他の優良な債権などとミックスさせた「債務担保証券」(CDO: Collateralized Debt Obligations)を作り,世界中の投資家やヘッジファンドなどに販売しました(投資信託などとして).CDOの段階になるとサブプライムは表面からは完全にわからなくなってしまいます.どれがトランプのババのカードか見分けがつかなくなったのです.

本来なら,格付け機関(ムーディーズとかスタンダードアンドプアーズなど)が上のような債券をしっかり評価すべきなのですが,これらの格付け会社もサブプライム関連の債券に最上級の評価(トリプルA:AAA)を与えていました.

何段階にも証券化されたサブプライムローンですが,元手は住宅ローンです.これが破綻すれば,住宅ローンを担保とした債券の価格は大幅に下落し,これらを保有していた銀行や投資家は大損を被ります.この被害が世界中に広がっているのです.サブプライム問題が不気味なのは,「ババ」がどこに隠れているかよくわからないことで,世界中の関係者が疑心暗鬼になっていることです.

2008年3月16日には,米国の中央銀行であるFRBは,サブプライムローン問題で事実上破綻した大手証券会社ベアー・スターンズを救済することになりました.

米国でサブプライム関連の問題が発生するたびに米国の株価は大きく下落しますが,その影響が翌日には日本に波及し,日本の株価も大幅に下落することになります.

また,米国経済の低迷は「ドル安」を引き起こし,その結果は「円高」となって日本経済に波及し,日本の輸出企業を中心に利益の減少となって現れます.

サブプライム関連の出来事

2008.03.14(金) ★★NY連銀,JPモルガン・チェースを通じて米証券大手ベアー・スターンズに緊急融資枠を設定.ベアー社,サブプライムで損失,資金繰り危機
2008.03.16(日) ★米FRB緊急理事会,資金繰り難に直面した金融機関に貸し出す際の公定歩合を0.25%幅引き下げ年3.25%.銀行に限ってきた公定歩合での融資対象を証券会社に広げる新制度(プライマリーディーラー向け貸し出し)も導入.米証券大手ベアー・スターンズ救済策
2008.03.16(日) ★★JPモルガン,ベアー・スターンズ社の買収を発表.買収は株式交換方式で買収額はベアー社の株式1株当たり約2ドル総額で2億ドル強.FRBは最大300億ドルの特別融資を実施することで合意

2007.08.09(木) ★仏銀大手BNPパリバ,サブプライムローン焦げ付きを理由に傘下の3つのファンドを凍結.資産総額20億ユーロ(3200億円)→ サブプライム問題が世界中に広まったきっかけをつくった

2007.08.17(金) ★米FRB,緊急で公定歩合を0.5%引き下げ年5.75%.期間は定めずFRBが市場の流動性が改善したと判断するまでの措置.公定歩合融資期間(discount window)を最大30日に延期.FF金利は据え置き

2007.09.15(土) 英中堅銀行ノーザン・ロック(Northern Rock)に取り付け騒ぎ(bank run).サブプライム問題

2007.09.18(火) ★米FRB,政策金利FF金利の誘導目標を0.5%引き下げ,年4.75%とすることを全会一致で決定.利下げは2003年6月以来4年3カ月ぶり.サブプライム問題への対応

2007.09.19(水) ★日銀金融政策決定会合,前月に続いて利上げを見送り.無担保コール翌日物金利の誘導水準を0.5%前後に据え置く.8回連続で現状維持.賛成8反対1の多数決

2007.09.21(金) 英銀行最大手のHSBC,サブプライムローンを扱う米子会社「ディシジョン・ワン・モーゲージ」を閉鎖すると発表.サブプライムから撤退


2007年4月の話題[top]  2007年4月10日更新

2007年は熊本学園大学経済学部にとって記念すべき年です.

    ↓

経済学部開設40周年記念

    ↓

1967年経済学部誕生

経済学部の第一期生は,1967年度入学,1970年度卒業.「志文会」第14期生
1948年生まれ.「団塊の世代」(1947年〜49年生まれ)(baby boomer)

年表サイトザ・20世紀(Fukushi) を見ると,1967年(昭和42年)がどんな時代だったかがわかります.

日本の1960年代は「高度経済成長時代」

●熊本学園大学経済学部は,開設40周年を記念して,学生主体の新しいイベントを企画しました.

    ↓

「先輩を訪ねて40年」

在学生が,経済学部1期生をその職場に訪ねて,インタビューし,その内容を書籍とDVDとして出版.

1年から3年までのゼミ生が中心になって活動します.

2006年4月の話題[top]  2006年4月12日更新

『日本経済新聞』の3月10日(金)付朝刊を見てください.一面トップの大見出しがこの出来事の重要性を表しています.「量的緩和を解除,日銀決定会合 5年ぶり転換.物価上昇「0-2%」目安.ゼロ金利は当面維持」

この記事は経済学を初めて学ぶ学生にとっては結構むずかしいと思います.基礎問題を飛ばしていきなり応用問題を解くような感じでしょうか.

新聞記事の中で重要な用語には傍線を引きました.重要用語あるいはキーとなる語句を列挙しておきましょう.

・ゼロ金利政策
・物価安定の目安として,前年比「0-2%程度」
・日銀当座預金残高
・数カ月かけて6兆円程度に減らしていく
・無担保コール翌日物金利
・中心値
・長期国債を月1兆2000億円ずつ買い上げる措置を継続する
・翌日物金利が実質的に0.1%を上回らないようにする.

私の「2006年経済年表」から量的緩和解除の部分を以下に取りだしてみました.

--------------「2006年経済年表」から-------------------------

2006.03.09(木) ★★日銀,政策委員会・金融政策決定会合で,2001年3月19日に導入した量的金融緩和政策の解除を決定(7対1の賛成多数,福間委員は欠席)
政策決定のポイント
(1)政策目標を,日銀当座預金残高から無担保コール翌日物金利に変更
(2)無担保コール翌日物金利をおおむねゼロ%(0.1%以下に抑える),長期国債の購入額月1兆2000億円を維持
(3)消費者物価指数の前年比上昇率が0-2%程度と中長期的な目安を明示.中心値は1%前後
(4)量的緩和時の日銀当座預金残高30-35兆円から必要額(法律で決まっている水準)6兆円程度までに3カ月かけて引き下げていく
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309.htm
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309b.htm(新たな金融政策の枠組み)
http://www.boj.or.jp/press/05/kk0603a.htm(日銀総裁記者会見)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/mpo0603a.htm(「物価の安定」についての考え方)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/data/mpo0603a.pdf(「物価の安定」についての考え方,図表)

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量的緩和の関連記事として,「市場,解除を好感 日経平均反発 1万6000円回復」も注目してください.
大きなニュースが発表された直後に株式市場がどう反応するかで,市場参加者(株を売買する人々)がそのニュースをどのように判断したかがわかります.株価(日経平均)が上がれば,そのニュースは歓迎されたことになり,逆に株価が下がればそのニュースは好ましく思われなかったことになります.

重要用語は,「日経平均」です.

★マクロ経済学の講義では,重要な経済ニュースが発生した場合は随時クラスで解説する予定です.
新聞,テレビのニュースに敏感になってください.

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最近の金融政策の軌跡

ゼロ金利政策 1999年2月12日から2000年8月11日までの18カ月間
  日銀の目標金利は,無担保コール翌日物金利(コールレート)
  コールレートはこの間0.02%まで低下.手数料を除けばほぼゼロ金利
量的緩和政策 2001年3月19日から2006年3月9日まで5年間
  日銀の政策目標は,コールレートから「日銀当座預金残高」へ変更.
  日銀当座預金残高が5兆円になるように買いオペで流動性を供給する
  コールレートは,最低で0.01%まで低下.事実上のゼロ金利の復活.
  その後コールレートは0.001%まで低下している.

  2004年1月からは,日銀当座預金残高の目標を30−35兆円に引き上げ.

(グラフ)無担保コール翌日物金利

量的緩和政策 2006年3月9日解除. ゼロ金利政策に戻す
政策のポイント
(1)政策目標を,日銀当座預金残高から無担保コール翌日物金利に変更
(2)無担保コール翌日物金利をおおむねゼロ%(0.1%以下に抑える).そのため長期国債の購入額を月1兆2000億円を維持する
(3)消費者物価指数の前年比上昇率が0-2%程度と中長期的な目安を明示.中心値は1%前後
(4)量的緩和時の日銀当座預金残高30-35兆円から必要額(法律で決まっている水準)6兆円程度までに3カ月かけて引き下げてゆく

★今後の焦点は,いつ「ゼロ金利政策を解除するのか」に移っています.

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★★この記事(量的緩和の解除)が意味するのは何でしょうか.
→ 日本経済が異常な経済状態(金利0%)から抜け出すことを日本銀行が宣言したことです.
金融政策を決定するのは政府ではなく中央銀行である日本銀行(Bank of Japan)です.
量的緩和解除後,コールレート(短期金利)は以前と同じ水準でほとんど変化していませんが,債券の利回り(長期金利)はじわじわと上がり始めています.銀行や郵便局の預金,貯金金利もわずかではありますが上がり始めています.住宅ローンの金利(長期金利)も上昇しています.
量的緩和解除だけでは日本経済は正常な姿に戻ったとはいえません.ゼロ金利政策から抜け出して初めて日本経済は普通の状態になるといえます.

(参考)
量的緩和政策とゼロ金利政策については,私のメールマガジン(経済用語解説・経済統計解説)を参考にしてください.
量的緩和政策
ゼロ金利政策

2005年4月の話題[top]  2005年4月12日更新

この講義ノートの「2002年4月の話題」をまず読んでください.ペイオフ解禁を話題にしています.2005年4月1日からは「ペイオフ全面解禁」です.3年前のペイオフ解禁と今回はどう違うのか.全面解禁まで3年もかかったのはなぜなのか.今回を世間一般では「全面解禁」と呼んでいますが,本当に「全面解禁」なのでしょうか.今回の全面解禁でポイントとなるのは,「決済用預金」です.この用語をぜひ覚えてください.

・ペイオフとは,金融機関が破綻した場合,払い戻し保証額が元本1000万円とその利息だけに限られることです.

2002年からの「ペイオフ部分解禁」では普通預金はペイオフ対象外になっていましたが,2005年4月からは普通預金もペイオフ対象になりました.

・2005年4月以降もペイオフ対象の例外になるのが「決済用預金」です.決済用預金とは(1)利息が付かない(2)いつでも引き出せる(3)決済に使える,の3つの条件を満たす預金です.従来からある預金では「当座預金」がこの性質を満たしていますが,主に法人(会社)向けなので,一般個人用に「決済用預金」が新しくつくられました.預金をたくさん抱えている大企業や地方自治体,マンション管理組合,資産家などはこの決済用預金に移し替えたところも多いようです.

(注意)「決済預金」は「決済預金」と違うので間違えないでください.インターネットのニュースなどでは両者を混同し,間違って使っているところがあるので要注意です.決済性預金には普通預金も含まれてしまいます.

・2005年4月現在ではほとんどの銀行は新しく「決済用預金」を導入しました.銀行は決済用預金をつくるために多大の投資をしています.銀行が預金保険機構に納める保険料も普通預金より高くなるため銀行にとっては一層の負担になります(注1).

(注1)普通預金の保険料は預金残高の0.08%.決済用預金の保険料は0.01ポイント高い0.09%.銀行によっては決済用預金については発行手数料あるいは口座管理手数料(1050円ぐらい)を徴収するところもあります.

・もし銀行が破綻した場合,銀行は「名寄せ(なよせ)」という作業をします.同じ銀行にいくつもの口座を持っている人がいますが,これらを1つに集約する作業です.1人1000万円とその利息は確実に保証されます.それを超えた部分は原則として保証されません.

(注2)銀行が破綻する場合は,金融庁は金曜日に発表して,次の月曜日には預金を払い戻しすることを想定しています.「金・月処理」と呼んでいます.この処理がスムースに進むためには「名寄せ」がしっかりできていなくてはなりません.

・預金者は安全な銀行を選ぼうとします.それに対応して銀行も健全で・効率的な経営を目指すようになるでしょう.結果として金融システムが全体として健全になることが期待されます.これがペイオフの狙いです.

・預金者は,自己責任で銀行を選ぶことが求められています.普段から銀行の経営状態を見極めなければいけません.判断材料としては,銀行が店舗内あるいはホームページで公表する決算書(利益などが書いてある),格付け機関が公表する銀行の格付け,銀行の株価情報などです.それと普段から金融関係のニュースに注目しておきましょう.

【参照サイト】

笹山ゼミ,メールマガジン「ペイオフ解禁」

金融庁 預金保険制度(ペイオフ本格実施):
http://www.fsa.go.jp/syouhi/syouhi/payoff.html
Q&A等があります

預金保険機構 金融機関の破綻処理状況:
http://www.dic.go.jp/katsudou/katsudou2.html
これまでに破綻した金融機関の一覧があります.

金融広報中央委員会 ペイオフ:
http://www.saveinfo.or.jp/kinyu/yoho/yoho.html
決済用預金等についての解説があります.

2004年4月の話題[top]  2004年4月13日更新

2004年4月1日から消費税の総額表示が義務づけられました.これまでは税額を値札に表示していない外税方式だったのですが,これからは税込みの価格を表示しなければならなくなりました.こちらは内税方式といいます.単に表示方式が変わっただけなら何も変わらないはずなのですが,よーく突き詰めて考えると様々な問題点が浮かび上がってきます.1つの変更点が経済全体にどのような影響を与えるのかを考えていくことが経済学を学ぶ上で重要なのです.経済学の学び方のトレーニング例として消費税の総額表示義務化をとりあげてみましょう.また,なぜ政府は今回表示方式の変更を決めたのでしょうか.その背景も探ってください.

まず基礎知識
消費税の導入:1989年4月1日,税率3%でスタート
消費税の引き上げ:1997年4月1日より,税率5%
政府の歳入に占める消費税の割合:約11%(約9兆4000億円)
 歳入80兆円のうち約半分が税金から.税金の約1/4が消費税から.

■外税から内税へ

例1 本体価格100円の商品:消費税=100×0.05=5円,総額表示105円
 100円ショップの表示は例外的に財務省が認めています.

例2 本体価格98円の商品:消費税=98×0.05=4.9円,総額102円90銭
 通常総額表示は,1円未満は切り捨てて,総額表示=102円

 この商品を10個購入した場合,本体価格=98×10= 980円
              消費税=980×0.05=  49円
                      総額表示=1029円

 ところが,1個102円の総額表示にしておくと,
                 総額=102×10=1020円

 1円未満も表示しておけば,矛盾は解消.
 1個総額表示102円90銭,総額=102.90×10=1029円

 上のような問題が発生しないために,スーパーマーケットではレジの修正を行っています.その他値札の書き換えなど商店にとってはかなりの出費になります.

■免税点の引き下げ
これまでは,中小事業者は年間売上高が3000万円以下なら消費税を納めなくてよかったのですが,4月からはこの免税点の基準が1000万円以下に引き下げられました.4月からは1000万円を超える業者は消費税を納めなくてはいけません.これは「益税」を減らす措置です.従来は年間売上高が3000万円に達していなくても消費税をとっていた商店がけっこう多くいたのです.消費税が政府に行かずに商店の懐に入ってしまうのが「益税」です.

益税の例:免税事業者(商店)が1万円で材料を仕入れます.材料の1万円には消費税を払います.免税業者も原材料の仕入れなどでは消費税を払っています.この消費税を販売価格に上乗せして販売します(単純化のため利益などは省いてあります).
  材料10000円  消費税10000×0.05=500円
  販売価格 10500円
  この場合は,商店には益税は生じません.

ところが免税業者がみずからの商品の販売価格に消費税5%を上乗せすると,
  材料10000円  消費税10000×0.05=500円
  消費税5% 10500×0.05=525円
  販売価格  10525円
  この場合,商店には,525−500=25円は手元に残ります.これが益税です.

上のような益税を減らすために免税点を引き下げたわけですが,これにより年間売上高が1000万円を上回る業者は消費税を納めなくてはならなくなりました.従って,3月末までは消費税をとっていなかった商店が4月から消費税分を上乗せすることが予想されます.

■企業の価格戦略にも影響
商品の安さを演出するために,1個98円,88円,1980円というような価格設定を行っていた企業には総額表示義務は大きな影響を与えます.ユニクロなどでは,商品本体価格の値下げをして総額表示で割安感をだす心理的な価格戦略を行っています.

場合によっては,スーパーが取り引きしている納入業者に卸価格を引き下げさせるように圧力をかけているところもあるといいます.このような問題に対しては公正取引委員会が対処することになります.

■なぜ今消費税の総額表示?
ぜひみなさんは理由を考えてください.
背景は,日本政府の大幅な財政赤字の存在.政府が様々な公共サービス(年金なども)を提供するための財源が不足しているのです.政府の予算の半分しか税金でまかなえません.残りは国債(赤字国債)を発行してしのいでいるのです.将来大幅な消費税の税率アップが確実視されています.税率が大幅に上昇した場合計算が大変になります.値札に総額表示しないと不便になります.総額表示は将来の消費税率上げの布石というのはこのような意味です.

■関連新聞記事
日本経済新聞 2004年3月09日 「消費税総額表示に揺れる 上」
日本経済新聞 2004年3月10日 「消費税総額表示に揺れる 下」
日本経済新聞 2004年2月08日 「Sunday Nikkei 消費税の改正ここまで及ぶ影」
日本経済新聞 2004年4月06日 「総額表示で価格は・・・『値上がり』39% 『値下がり』26%」

(注)新聞記事を読む場合は,「日経テレコン21」か「縮刷版」(図書館にあります)を参照してください.

■関連サイト
財務省「平成16年4月から「総額表示方式」がスタートします」:
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/sougakuhyoji/sougakuhyoji.htm

財政の現状と今後のあり方(2003年9月):
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm
予算の歳入・歳出構造のグラフなどがあります.

国債及び借入金並びに政府保証債務現在高:
http://www.mof.go.jp/1c020.htm
2003年12月末で国の借金残高は約670兆円

国及び地方の長期債務残高:
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014f2.htm

2003年4月の話題[top]

1990年のバブル崩壊から13年経過した2003年においても,日本経済はその後遺症から立ち直れていません.1990年代の日本は「失われた10年」と言われていますが,この調子だと15年,20年にもなりかねません.バブル崩壊による不良債権の急増と累積が日本の銀行組織をボディーブローのように痛めつけています.銀行組織が不安定なため,2003年4月に予定したペイオフの完全解禁は2005年まで延期になりました.しかも2005年のペイオフ解禁では「決済専用預金」の全額保護を謳っています.

日本銀行は,量的緩和政策によって「日銀当座預金残高」の目標額を増やしてマネタリーベースを増加させていますが,民間の銀行から企業への貸し出しはいっこうに増えません.マネタリーベースを増やしたけれども(日銀から民間銀行へ資金は流れたが),経済全体にいきわたるマネーサプライは増えないという現象がずっと続いて観察されています.

日本の銀行と企業はお互いの株式を相互に持ち合うという慣習がありました.株が値上がりしているとき(バブル時)は互いに利益がでたのですが,株が下落し続ける状況では歯車は逆回転し,互いに大きな評価損を被ります.日本の銀行は本業では利益がでても株式の評価損や不良債権処理の費用がかさみ,結果としては大きな赤字をだしています.

このような状況で日本銀行は,2002年9月18日,銀行が保有している企業の株式を買い取るという政策を決定しました.民間銀行の株式保有リスクを日本銀行が引き受けて,それにより日本の銀行組織の安定性を確保しようとねらったわけです.

バブル崩壊によって一般の国民(消費者あるいは家計)も大きな影響を受けました.企業の倒産,売上高の減少により,右肩上がりと思っていた給与,賃金,所得は横這いからさらに下落しました.将来の所得に不安をいだく消費者はモノを買うことに慎重になります.ものが売れないから企業はやむをえず製品価格を引き下げます.一部の製品は価格を下げれば販売数量が増えて売上高が増えるものもありますが,経済全体としてみると売上高は低下します.企業のもうけも減るので給料も下がる.消費者はさらに消費に慎重になる.モノが売れない.という悪循環が発生します.これが経済全体としての物価の下落(デフレーション)と所得(GDP)の低下となって現れます.

まずは,日本経済の現状を認識するために,主な経済データのグラフを観察しておきましょう.

私のホームページのトップの「おすすめコーナー」から「経済データのグラフ」を選んでください.そこにたくさんのグラフを用意しておきました.とりあえずは次のグラフに注目してください.下線部をクリックするだけでグラフが現れます.

日経平均株価
完全失業率
実質GDP成長率
消費者物価指数
コールレート
日銀当座預金残高と伸び率
マネーサプライとベースマネーの伸び率
要求払預金と定期預金残高

2002年4月の話題[top]

2002年4月の経済の話題は,何と言っても「ペイオフ解禁」でしょう.4月1日からペイオフが解禁(あるいは解除)となりました.その意味について考えてみましょう.

●これまでの経緯
1971年 ペイオフ制度制定(少額預金者保護のため).預金保険機構設立
1995年6月 大蔵省がペイオフ凍結による預金の全額保護を宣言
1996年6月 特例措置として2001年3月末までペイオフを凍結する「改正預金保険法」成立
1999年12月29日 自自公,ペイオフ1年延期を決定
2000年5月24日 改正預金保険法,改正保険業法,財政投融資改革関連法成立.2002年4月ペイオフ解禁正式決定
2002年4月1日 ペイオフ解禁

ペイオフとは預金保険制度の中にある預金者保護の仕組みです.預金保険制度を運営しているのが「預金保険機構」.預金保険機構は政府,日銀,金融機関が出資する認可法人で,金融機関が破綻した場合の処理を主導する組織です.

一般の企業(事業会社)が倒産した場合は,民事再生法や会社更生法の適用を申請します.倒産した会社の株式は一般的には紙くず同然の値段になってしまいます.銀行が倒産した場合は,一般の企業の倒産よりも経済に与える影響が大きいのです.金融システム自体が破綻したら大変です.金融システムは人間の血液に例えられます.金融機関が破綻した場合,預金保険機構は,それを引き受ける受け皿銀行を探すか,受け皿銀行が見つからない場合は継承銀行(ブリッジバンク)を設立して,とりあえずこれに引き継がせます.1つの銀行が破綻することで他の銀行や会社に悪影響が及ぼすのを防ぎます.この過程で預金者の預金を保護する処理方法がペイオフです.

ペイオフでは,金融機関が破綻した場合,払い戻し保証額が元本1000万円とその利息だけに限られることです.4月1日のペイオフ解禁(あるいは凍結解除)では,普通預金などの流動性預金は除外されています.流動性預金は2003年4月(その後2005年に延期)からペイオフの対象になります.従って,最近では定期預金から普通預金(あるいは郵便貯金振替口座)へ預金を移し替える動きが活発となっています.

特に,地方自治体,企業,マンション管理組合など大口の預金者は,ペイオフ解禁に合わせてそれぞれの資産管理に十分注意を払わなければならなくなりました.一般の預金者も,預金する銀行の経営状態を十分調査する必要が生じます.銀行側も経営状況を積極的に情報公開しなくてはいけません.

■ペイオフ関連サイト
NIKKEI NETペイオフ特集

預金保険機構
破綻処理の流れ図

リチャード・クー「銀行監督の強化急げ.ペイオフ,中長期で」(ペイオフ解禁反対論)

2001年4月の話題[top]

1999年から2001年にかけては「ゼロ金利政策」とその後の「量的金融緩和」が大きなテーマになっています.日銀が量的緩和を決定した数日前には,内閣府は戦後初の「デフレ宣言」を行っています.今回はこれらの問題をとりあげましょう.

・1999.02.12 日銀,短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を0.25%から0.15%に.「ゼロ金利政策」開始
・2000.08.11 日銀,ゼロ金利政策を解除.無担保コール翌日物の目標を0.25%に
・2001.03.16 3月の月例経済報告,「緩やかなデフレ」公式に認める.初のデフレ宣言
・2001.03.19 日銀,量的金融緩和決定.金利から当座預金残高に政策目標を変更.日銀当座預金残高の目標を5兆円に.事実上のゼロ金利復活.CPI上昇率がゼロ%を超えるまで継続.21日から実施

デフレとは
「2年以上の継続的な物価の下落」
物価の動きは,消費者物価指数の前年に対する上昇率でみます.
1999年はマイナス0.3%
2000年はマイナス0.7%
経済現象としては,物価が下がるだけではなく,景気も同時に悪くなっているのがふつうです.実質GDPの成長率は次のようになっています.
1997年度:マイナス0.1%
1998年度:マイナス1.9%
1999年度:0.5%

デフレスパイラルとは
ものが売れない→企業はさらに値段を下げる→物価は下がる→企業は利益がでない→給料が下がる→消費者は買い控える→ものが売れない
という悪循環が螺旋状(スパイラル)につづくこと.

その他,4月は年度の変わり目のため,新しい法律が多く施行されます.今年度は特に多いようです.より詳しい年表は,このサイトの年表を参照してください.

2001.04.01 証券版ペイオフ導入スタート.顧客資産分離し保管
2001.04.01 改正預金保険法施行
2001.04.01 郵政省,郵便貯金の自主運用開始
2001.04.01 財政投融資(郵便貯金資金,公的年金積立金)の自主運用開始.財投債発行
2001.04.01 大蔵省,保険商品の「銀行窓口販売」を解禁
2001.04.01 消費者契約法施行
2001.04.01 金融商品の販売等に関する法律施行
2001.04.01 情報公開法施行
2001.04.01 電子署名・認証法施行
2001.04.01 改正少年法施行
2001.04.01 家電リサイクル法施行
2001.04.01 食品リサイクル法施行

2000年4月の話題[top]

2000年4月現在の大きなテーマは「日本の景気は回復したのか?」です.最近のニュースからは,次のような記述が見られます.

2000.01.28 99年10-12月の鉱工業生産指数,前期比0.8%のプラス
2000.03.09  法人企業統計,10-12月期の設備投資,前年同期比0.7%減,下げ止まり
2000.03.17  月例経済報告,事実上の底離れ宣言
2000.03.29  日経平均20706円,96年12月以来の高水準
2000.04.03  3月の日銀短観,大手製造業ー9で,8ポイント上昇.景況感5期連続改善
2000.04.04  2月の家計調査,消費支出,前年同月比4.2%増加
2000.04.05  2月の景気動向指数,一致指数96年11月以来100%
2000.04.12  日銀,金融経済月報,「景気は一部に回復の動き」
2000.04.12  日銀総裁,「ゼロ金利政策」解除に意欲.時期は慎重判断

その一方,
2000.03.13  99年10-12月の実質GDP前期比ー1.4%,年率ー5.5%.2期連続でマイナス成長
2000.03.31  2月の完全失業率(季節調整値),前月比0.2%上昇し4.9%.過去最悪.有効求人倍率は0.52倍で前月と同水準
2000.04.14  米ダウ,史上最大の下げ幅.617.78ドル下げ10305.77ドル.ナスダックも355.49ポイントの史上最大の下げ幅で,3321.29ポイント

のような悪い材料もでています.

日銀総裁は「ゼロ金利政策」を早いうちに解除したい意向のようですが,4月14日の米ダウの暴落後に開かれた「G7」の会議で,日本はゼロ金利政策の継続を表明せざるをえない状況におかれてしまいました.


今後どのような経済統計に注目すべきでしょうか? 主なものをいくつかあげてみましょう.

・日経平均株価
・円相場
・NYダウ
・米ナスダック

・GDP統計
・日銀短観
・景気動向指数
・鉱工業生産指数
・完全失業率
・有効求人倍率
・家計調査報告
・公定歩合
・マネーサプライ
・月例経済報告
・景気ウォッチャー調査
・卸売物価指数
・消費者物価指数

キーワード
・「ゼロ金利政策」(99年2月12日開始)

注目企業名
・イトーヨーカ堂
・セブンイレブン
・ソニー
・ソフトバンク
・ヤフー
・アマゾン
・AOL
・シスコ
・マイクロソフト

これらの用語,企業名に注目しながらインターネット,新聞,雑誌,図書を十分に活用しましょう.

1999年4月の話題[top]

1999年の出来事の中からマクロ経済学に関するトピックスを拾い上げてみましょう.

1999.01.01 欧州連合(EU)11カ国通貨統合スタート
1999.01.08 日米の失業率逆転.米12月の失業率4.3%
1999.01.08 日銀,98年の卸売物価指数(95=100)97.5,前年比1.5%減.実質7年連続で下落
1999.01.19 日本最古の貨幣「富本銭」(683年)確認される
1999.01.29 島根県浜田市,地域振興券(商品券)配付第1号
1999.02.03 ルービン米財務長官,日本に対し日銀の国債引き受けを求める
1999.02.15 98年の経常黒字,前年比38.7%増の15兆8608億円で過去最大
1999.02.17 短期金利軒並み大幅低下.年0.08%で過去最低.日銀が資金供給.「ゼロ金利」目標
1999.02.26 経済戦略会議最終報告提出
1999.03.03 短期金利「実質ゼロ金利」一時0.02%
1999.03.04 大手15行,資本注入正式申請.総額7兆4592億円.利回り0.54-1.73%.不良債権10兆円処理
1999.03.12 金融再生委員会,資本注入を正式決定
1999.03.12 10ー12月GDP年率マイナス3.2%.5期連続のマイナス成長.98年の実質成長率マイナス2.8%で戦後最悪
1999.03.30 2月の完全失業率前月比0.2ポイント上昇の4.6%で過去最悪.初の300万人突破(313万人)(失業率のグラフ
1999.04.01 整理回収機構(日本版TRC)発足
1999.04.01 改正男女雇用機会均等法
1999.04.05 日銀短観,景況,下げ止まり感.大企業製造業-47で97年6月以来1年9カ月ぶりに改善
1999.04.12 国民銀行,債務超過712億円.日銀特融を実施

■地域振興券は景気回復に効果があるか?

地域振興券は98年11月の「緊急経済対策」23兆円の一部として実施された政策です.総額は7500億円です.15歳以下の子供のある家庭に1人2万円,65歳以上で所得のない人に同じく1人2万円の商品券が支給されます.有効期間は発行から半年です.
振興券が消費刺激策として効果があるかどうかですが,2つの異なった見方があります.

1.2万円分消費刺激効果がある.
  例えば,これまで毎月10万円を支出していた家庭は,商品券分の2万円を追加支出して12万円消費する.

2.ほとんど効果はない.
  これまで毎月10万円を支出していた家庭は,10万円のうち例えば2万円分を商品券で支出し,残り8万円は現金で支出するので,消費額自体はこれまでと同様10万円である.

はたして,みなさんはどちらの行動をとりますか?自分が商品券をもらったとして考えてみてください.

○教室でアンケートを実施したら,ほとんどの学生は2の方を選びました.

【参考記事】
「地域振興券の使途.大半が食料・日用品.特需は期待はずれ」『日本経済新聞』1999年5月1日朝刊

1998年4月の話題[top]

何と言っても日本版金融ビッグバンですね.ビッグバンの一環として1998年4月1日から改正外為法(正式名称「外国為替及び外国貿易法」)が施行されました.1998年はビッグバン元年.

日本版ビッグバンの3原則
フリー:市場原理が働く自由な市場
フェア:透明で信頼できる市場
グローバル:国際的で時代を先取りする市場

日本の金融資産1200兆円の争奪をめぐり,銀行,証券,保険の3業種の間で垣根を超えた競争が世界中の企業を相手に繰り広げられる.

1986年10月英国で金融制度改革(元祖ビッグバン)
1997.06.13  日本版ビッグバン最終報告書提出.98年開始2001年完了目指す(4年間かけて)

●改正外為法でどう変わる
1.日本国内の銀行で外貨預金が可能
2.銀行以外の業種も外貨の両替が可能(金券ショップパピルスの倉沢商事,ビックカメラ,ヨドバシカメラ)

手数料の自由化:
証券会社,大手機関投資家との取り引きで,株式委託手数料を大幅に引き下げ(売買代金5000万円超の手数料ゼロ)

●今後のスケジュール
1998年4月 改正外為法の施行
1998年7月 損害保険の料率自由化
1998年12月 銀行本体による投資信託の窓口販売解禁
1999年 株式委託手数料の完全自由化(99年末までに)
2000年 保険と銀行の相互参入を全面解禁(2000年末までに)
2001年 銀行窓口での保険販売解禁(2001年度をメドに)

●ヨーロッパでは通貨統合(ユーロ)ですね.
1999年1月から通貨統合がスタートします.
1998.03.25  欧州通貨基金(EMI)は通貨統合参加の11カ国を発表(ベルギー,ドイツ,スペイン,フランス,アイルランド,イタリア,ルクセンブルク,オランダ,オーストリア,ポルトガル,フィンランド)

1997年4月の話題[top]

1997年の講義での話題は以下のようなものでした.その後の日本経済の動きは,以下で指摘したことが現実のものとなり,1998年の4月時点での日本経済は不況にあえいでいます.

そこで,1998年4月9日橋本首相は,所得減税98年4兆円,99年2兆円,公共投資真水10兆円を表明し,景気回復に躍起となっています.

■1997年に話題になった経済に関する出来事といえば,「消費税」.消費税の上昇はどのような影響を経済に与えるだろうか.このようなことを理論的に考察するのがマクロ経済学の1つの役割.消費税が上昇するとどのような影響がでるかをみなさん自身の頭で考えてみよう.

多くの学生(1年生)が挙げた影響は,
●内税から外税へ
●5円玉が不足する
●便乗値上げがおこる
●高額商品の買い控えがおこる
●政府の税収が増える
●家計の出費が増える
●益税の問題

マクロ経済学を学べば,次のような論理の展開ができるようになるでしょう.

税金の上昇→家計の可処分所得(実際に使える所得)が低下→家計の消費支出の減少→企業の売上,生産の減少→経済全体の所得(GDP)の低下

経済学の学び方の参考文献[top]

経済学一般の学び方についての参考文献を1つ紹介しておきましょう.経済学部の学生を対象にした月刊雑誌として『経済セミナー』(日本評論社)がありますが,毎年4月には増刊号として経済学の学び方の特集号がでます.

1997年のタイトルは『電脳経済学のススメ:超・入門経済学1997』でした.ここでは経済学の各分野ごとに学び方やテキストの紹介,さらには公務員試験の情報なども掲載されています.97年の特集は,タイトルからもわかるようにインターネットとパソコンです.
なお,私の文章も掲載されていますので,参考にしてください.同じものがこのホームページでも読むことができます.

1998年の経済セミナー臨時増刊号は『経済学パーフェクトガイド』となっています.1999年のタイトルは『経済学パーフェクトガイド1999』です.

クイズその1[top]

1.日本のGDPはどれくらいか.
2.史上最低の日本の公定歩合は何%か.
3.1998年3月20日に就任した第28代日銀総裁の名前は.また,彼の国際通貨に関する代表的な著書の名前は何?
2003年3月20日に就任した第29代日銀総裁は誰でしょう.
4.日本銀行総裁と総理大臣の給与,どちらの方が高い? 日銀総裁の年収はいくら?
5.日銀総裁に相当する米国の役職名は何という.現在その人は誰.

クイズの答え

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University