2003年度の講義ノート
ここで講義内容を簡単に記録していきたいと思います。「簡単」な記録ですので、もちろん出席する代わりにはなりませんが、欠席しなければならない場合には、ここを見れば授業の流れなどが大体わかると思います。
私が書く「講義ノート」は皆さんのためにはなると思いますが、自分たちのノートの代わりにはなりません。講義に出席し、その内容を自分なりに理解し、ノートにまとめることはたいへん重要なことだと思います。この作業を通して講義内容が自分自身のものになっていきます。私が書く「講義ノート」と皆さんのノートを比較しながら更に考えを深めていってほしいと思います。逆に、私の「講義ノート」を暗記するだけなら皆さんのためにはならないと思います。試験について言えば、「講義ノート」の内容をよく理解していればいい点がとれると思いますが、「講義ノート」の単純な暗記だけで点がとれるような問題をできるだけ出さないようにします。
なお、このページの更新をできるだけマメにしていきたいと思いますが、毎年更新がかなり遅れてしまうことがあります。そこで皆さんに対するサービスを向上するために今年からは「更新の知らせ」を皆さんのメールアドレスに送りたいと思います。メールアドレス(携帯でも良い)を知らせてくれれば、更新する際に簡単なお知らせを送ります。中間試験や期末試験の時期が近くなってくると、この知らせは皆さんにとって特に有益だろうと思います。メールアドレスが外部に漏れないように注意しますので、気軽にmasden@kumagaku.ac.jp宛に「更新の知らせを受信したい」と書いたメールを送ったください。
9月22日、第1回
今回だけ441教室で授業を行った。今後、445教室で講義する予定だ。はじめに、この「講義ノート」へのアクセス方法やこのページの役割について説明した。また、この講義のサイトには本講義専用の掲示板があることを指摘した。掲示板は受講生と私の間のコミュニケーションを促進するために作った。その関連で、授業におけるコミュニケーションの大切さを印象づけるために2名の受講者に協力していただき、ドミノを使ったゲームをした。その後、木曜日に詳しく説明する「文化の定義」との関連で、日本と外国の証明写真を比較したビデオ(「日本の証明写真で笑っちゃいけないのは何でやねん?」、ニュース・ステーション)を見せた。次に、この講義における成績評定に関する説明を行った。途中から私語が多くなったので私語についてというレジメを使って私のスタンスなどを説明した。
9月25日、第2回
まず、「比較文化論」の「「論」」の意味を説明した。その関連で、本講義で私自身が展開する文化論を理解していただくために「私の目標」を説明してから「自己紹介」を行った。講義全体を理解するためにはこの目標を理解することが重要なので、是非覚えてもらいたいことを強調した。次に、「比較文化論」の「文化」の話にに移り、本講義で使う「文化の定義」を説明した。その関連で『パパラギ』という絵本の一部を朗読した。先進国の常識は必然性のない当たり前であることをよく示してくれる本だと思う。ビデオはMichael Breckerのジャズ演奏であった。
9月29日、第3回
はじめに、English Seminarを紹介してから、「文化の定義」の続きをした。その中で柔軟な発想が異文化理解には必要と主張しているが、その関連で「思い込むこと」について話した。ビデオは仏教とキリスト教との間の対話に関するものであった。「違い」を超えて良い関係を築くことは十分可能であることを教えてくれる良い例だと思う。ビデオの中でチベットのダライラマの思想がクローズ・アップされた。
10月2日、第4回
まず、「課題について」説明した。10月1日の朝日新聞からいくつの記事の講義との関連を説明した。次に、「『比較』について」というレジメで、終始比較中心に講義を進めていかない理由を説明した。ビデオは「思い込み」の恐ろしさの例として選んだもので、罪のない黒人が黒人であるというだけで犯罪者扱いされる内容であった。
10月6日、第5回
「『違い』について」講義した。ビデオはAna Bortzさんが起こした裁判にに関するものであった。講義では紹介しなかったが、この裁判について詳しく知りたい人は「Ana Bortzさんが起こした裁判について」を見てください。
10月9日、第6回
「コミュニケーションについて」講義した。ビデオは私が運営している「Kumamoto International」という名のメーリングリスト(ML)に関するものであった。地元での国際交流、あるいはインターネットを通じた国際交流に興味を持っている人に是非参加してほしいと思う。出席カードに書かれたコメントに答えるなかで、差別をなくすためには一緒に差別を受ける覚悟が必要であると主張した。
10月16日、第7回
「コミュニケーションについて」の講義の続きをした。ビデオはニューステーションで放送された学校における教師の生徒への言葉のかけ方に関するものであった。
10月20日、第8回
「コミュニケーションについて」の講義の続きをした。ビデオはアメリカにおける一気飲みに関するものであった。
10月23日、第9回
「コミュニケーションについて」の講義の続きをした。ビデオは戸田奈津子氏とのインタービューであった。
10月27日、第10回
「コミュニケーションについて」の講義を終了し、「英語の学び方について」の話を始めた。ビデオはリービ英雄氏(作家、法政大学第一教養部教授)とのインタービューであった。
10月30日、第11回
「英語の学び方について」の話の続きをした。 最初の項目の「翻訳主義→英語思考主義」に関する話を終了した。ビデオはアメリカにおける反タバコ運動に関するものであった。
11月6日、第12回
中間テスト。
11月10日、第13回
「英語の学び方について」の話の続きをした。ビデオはアメリカで活躍している日本人コメディアンTAMAYOに関するものであった。
11月13日、第14回
「英語の学び方について」の話を終了した。ビデオはアメリカにおける反タバコ運動に関するものであった。ビデオはBlue's Cluesというアメリカの幼児番組であった。
11月17日、第15回
「『国際語』について」講義した。また、課題に関する補足説明をした。その中で「愛国心」に関する意見を述べたが、その意見を簡単にまとめた文章はここにある。ビデオはマスデンの幼少期のhome movieであった。
11月20日、第16回
「名前について」講義した。ビデオは前回と同じhome movieであった。
11月27日、第17回
「言葉と文化」について講義した。ビデオはアメリカにおける子ども同士のセクハラや日本における大人同士のイジメに関するものであった。
12月1日、第18回
「言葉と文化」について講義を終了した。
12月4日、第19回
その後、「文化論の悪用」に関する講義を始めた。最初の項目の「戦争の手段 」との関連で、「Faces of the Enemy」というビデオを見せ、戦争と文化論の関係について解説した。ビデオと同じ主旨の本としてFaces of the Enemyがあり、『敵の顔』という題の日本語訳が図書館にあるので、関心のある方に見ていただきたい。また、ビデオで登場したJohn Dower教授のWar Without Mercyの日本語訳である『人種偏見』も図書館にある。ビデオに見られるような「敵」の描き方は今でも見られることがある。その例として、小林よしのりの『戦争論』(本学の図書館にはないが、『小林よしのり氏の「戦争論」批判』ならある)を取り上げた。OHPで小林氏がどのように「敵」を描き、どのようにその敵の人間性を否定しているかを指摘した上で、異質な外国人のイメージで日本人としてのアイデンティティーの強化を促す手法を指摘した。
12月8日、第20回
「文化論の悪用」について講議した。その4つ目の項目「改革の手段」の例としてNHKのドキュメンタリーを取り上げた。ワイドショーによるプライバシー侵害などを指摘するこの番組の中ではアメリカの報道が節度あるものとして紹介される。日本の報道の問題点を強調する目的でアメリカのメディアの一部しか取り上げていないので、アメリカの報道を美化する結果になっている。アメリカのメディアにも日本のワイドショーと同じ程度、あるいはそれ以上に節度のない、低俗な番組があることを示すために、アメリカのトークショー(talk show)を批判的に取り上げている討論番組(ABCのNightline)のビデオを見せた。なお、授業では紹介しなかったが、1998年に同じ問題について書いた新聞記事があり、ここをクリックすれば閲覧することができる。また、付属高校での授業のために準備した話「国際社会とイラク戦争」を紹介した。
12月11日、第21回
「文化論の悪用」の中の最後の3項目(「正当化の手」及び「議論を阻止する手段」「金儲けの手段」)について講義した。 ビデオは「金儲けの手段」と関連のあるもので、アメリカのLate Show (David Letterman司会)という番組の中でのMUJIBUR & SIRAJULのコーナーを見せて、問題点について説明した。
12月15日、第22回
姜信子先生によるゲスト講義。
12月18日、第23回
姜先生のゲスト講義の中で「国家」自体が必然性のない当たり前であることが見えてきたと思う。その関連、国家以外に人間の枠としてよく持ち出されるもう1つの必然性のない当たり前、すなわち「『人種』について」講義した。「人種」は科学的な概念ではなく、社会的に構築された概念であることを説明した。ビデオはビデオは黒人警察官が、警察官であるにもかかわらず黒人であるために犯罪者扱いをされることに関するものであった。思い込みの危険性を示すビデオだと思う。
12月22日、第24回
前回は皮膚の色などの体の特徴と「人種」との概念の希薄な関係について話したが、同様な関係は「ジェンダー」「世代」「障害者」などの概念にも見られる。その関係を紹介するために「社会的に構築された概念
」というスライドを見せた。前回のビデオはアメリカにおける人種差別に関するものであった。一部の学生さんはこうした問題はアメリカ独特の問題で日本にはないと考えていたようだったので、日本で同様の問題の例として北海道の小樽にある「湯の花温泉」による外国人排除と同温泉を訴えている有道出人氏に関するビデオを見せた。この日の主な講義内容は「外国人=犯罪者」についてであった。アメリカには「黒人=犯罪者」という固定観念がことを前回のビデオで紹介した。同様に、日本では「外国人=犯罪者」という固定観念が定着しつつある。その一因として、偏った統計のまとめ方、報道などが挙げられる。例えば、日本にいる外国人の犯罪者率は実は日本人と同じ程度、あるいはそれを下回っている事実はなかなかメディアには出てこない。こうした「外国人犯罪」をめぐるいくつかの問題をパワーポイントで紹介した。まったく同じではないが、ほぼ同じ主旨の話を昨年 「『外国人犯罪』Q&A」というスライドを使って行ったので、このスライドを見てください。
1月5日、第25回
最初に、アカデミー賞を<長編ドキュメンタリー部門>で受賞した「ボウリング・フォー・コロンバイン」の一部を見せた。アメリカの銃問題の背景には、メディアが視聴者の恐怖心を不必要に煽っていることを印象づける内容であった。その後、
「2つのタイプの思い込み」 というスライドを使って、人種、民族などをめぐるおのおのの固定観念の中身の問題以前に、そもそも1つの属性を通して人間を見ようとすることに大きな問題があると主張した。
1月8日、第26回
はじめに、1991年ごろにNHKが放送した「日米市民討論」という番組の中の日本人は働きすぎかどうかに関する部分をビデオで見せた。働くことをめぐって日本人とアメリカ人の価値観などが180度違うという通念(固定観念)が番組の前提になっていたが、その「常識」の型にはまらない日米の市民の発言が見事にその前提を崩して行った。ビデオを見せた主な目的は「日本人は働きバチ。アメリカ人はレジャーを大事にする」という固定観念の問題性、そしてマスメディアを鵜呑みにすることの危険性を認識させるためであった。その後、「中根千枝著の『タテ社会の人間関係』の中心的な概念」というスライドを使って、本で中根氏が展開している理論について開設した。
1月19日、第27回(最終回)
- 中間試験について
期末試験の準備として中間試験の結果を教室の壁に張り、各々の受講生に確認してもらった上で、それぞれの設問を分析し、どのように採点したかを説明する。当日確認できない人、あるいは再確認したい人のために結果をこのHPにも載せる予定である。また、実際に自分の答案を見て各々の問題の評価などを確認したい人は20日以降に研究棟の受付で答案を受け取ることができる。採点方法などに関する疑問があれば、説明するので、遠慮なく聞いてほしいと思う。なお、正当な理由で中間試験を受けられなかった学生、しかもその理由はすでにマスデンによって認められている人に限り、中間試験は免除とする。それらの学生の場合には、成績評定は期末試験9割、課題1割とする。
- 期末試験について
中間試験と同様に、講義に関する設問とテキスト(期末試験の場合は『タテ社会の人間関係』)に関する問題からなる。講義に関する問題の範囲は学期全体とする。中間試験と同様、期末試験で良い点をとるために設問を注意深く読み、解答がきちとん設問と噛み合うように注意しなければならない。このことは試験の特殊な「技術」ではなく、コミュニケーションの基本であると思う。つまり、相手の問いや発言をよく聞いて、返事やコメントがその問いなどときちんと噛み合うように努力することは異文化間コミュニケーションなどにおいても大事なことなので、試験でもこの点を重視する。また、期末試験の中のテキスト(中根千枝著の『タテ社会の人間関係』)に関する問題について若干の説明をする予定である。中根氏が本の中で展開する理論の中心的な概念は「場」と「資格」であり、この2つの概念を中心にどのような理論なのかが説明できるように準備してほしい。そして、その理論の例として本の中で取り上げられている事柄と中根氏の理論との関係が説明できるように準備することを勧める。例えば、「年功序列」と中根氏の理論で言う「場」とはどのような関係があるのかを説明できれば、その1つの事柄と中根氏の理論との関係を説明したことになる。なお、時間が許せば、講義において「日本の教育制度と『場』」というスライドも利用して説明する。
- ビデオについて
ビデオは司馬遼太郎氏の「21世紀に生きる君たちへ」を紹介する。司馬氏は私が27回にわたって伝えたいと思ってきたことを小学生にも理解しやすいことばで、巧みに表現なさったと思う。(このエッセイは司馬遼太郎著の『十六の話』[中央公論社、1997年]に含まれている。本学の図書館の一階にある。[914.6||SH15])
講義のレジメ
講義内容の見取り図である。これで全体の流れや構成を見ることができる。
- 講義の紹介
- 文化
- 「文化論」論
- 固定観念・偏見・差別
- 中根千枝氏の『タテ社会の人間関係』について
講義内容などに関する意見を掲示板に書いてください(匿名でも可)。掲示板を見るにはここをクリックしてください。(ちなみに、電子メールアドレスを記入する必要がありません。完全な「匿名」状態で投稿できます。)
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