2005年08月02日

ドキュメンタリーの表と裏

 日曜の夜、NHKドキュメンタリー「アフリカゼロ年」を見る。
 テーマは南アフリカにおけるエイズ感染者の爆発的増加について。
幸い、南アフリカにこの問題に詳しい知人が居るため、番組視聴後、幾つかの疑問点をメールで聞いてみた。(参考URL http://www.asahi.com/english/weekly/special/s05.html)

 その課程で自分が感じたのは、ドキュメンタリーでも何でも、作り手の見方によって伝えるべきポイントがずれてしまう事。(あるいは、ずらしてしまえる事)
 特に、NHKやBBCのドキュメンタリーなどのように、「この番組だったら大丈夫だろう」という人々の予断がある番組ほど、この傾向は顕著に思える。100%のウソより、99%の本当の中に混じった1%のウソの方が始末が悪いという事だろうか。



 以下、ポイントを。

(1)AIDS増加の原因
番組ではアメリカとの自由貿易協定締結のために、南ア政府が「知的財産所有権の問題」を重視する必要があり、それが安いコピー薬を作る妨げになっている。自由貿易協定は、弱者の敵だという論調
 一方、現地からの情報では、AIDS薬はすでに一月分1700円程度で入手可能になっており、安いコピー薬が手に入らないという事実は無い。本当の原因は、政府(特に大統領、厚生大臣)のAIDSの薬物治療に対する不信感と無策(「AIDS薬を飲むより、栄養のあるものを食べましょう」「私の知人には、AIDSで死んだ人は一人もいない」etcの発言がある。)

(2)誰がAIDSに感染するのか?
 番組を見た限りでは、「社会の最下層の人々が犠牲になっている」という描写の仕方をしている。
 実際のところは売買春、複数の異性との性交渉による水平感染が原因であるため、食うや食わずの社会の最下層の人ではなく、それよりも少し上、少なくとも買春するくらいの経済力を持った人が多い。

 結局は、「貧しく、可愛そうなアフリカ」「搾取する先進国」というイメージがすでに番組制作者の中にあり、その線に沿って番組が作られたのではないだろうか。
 また、(1)の知的財産所有権の問題については、「自由貿易協定、貿易の自由化は怖いよ」というメッセージを伝えるために、今回、南アがサンプルとして選ばれたような気がする。

 さて、この番組を見た人は、どう行動するだろうか。。
 個人的には少なくとも「貧しい国を救うためには、まず募金だ!」とならない事を願う。


 

ynoge1 at 05:54 │Comments(0)TrackBack(0)clip!雑感 

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