2005年12月15日

こだわる理由

 毎日新聞によると、「みずほ誤発注:証券三社が利益返上を検討」とのことだ。
 返上先は「「投資者保護基金」などへの拠出が有力だ。」との事。
 全く必要が無い事だと思う。みずほ証券への返金は論外としても、合法的に得た利益を、なぜ、さらなるタナボタを狙っている(政府系の?)第三者に渡さなければならないのか?
 また、名前は公開されていない、そのほかの群小証券会社はその利益をはき出さなくて良いのか?
 結局は、監督省庁(金融庁)に名指しされたか否かで、合法な利益を手元に留めておけるか否かが決まる。これは、結局、大臣が言ったような「道徳」の問題ではなく、「利権」の問題に思える。

 普段は金融、経済関係には興味がない私が、この件に対して妙にこだわっているのには訳がある。
 今回、誤発注が発生する際に、みずほ証券側のコンピュータで異常な発注を知らせる警告メッセージが表示された。しかし、熟練オペレータが、「警告がでるのはいつもの事だから」と、それを消して発注作業を続行したと聞いている。
 ソフトウェア技術者に取って、現場は戦場のようなものだ。この件にしても、もし、警告メッセージが出ていなかったら、開発を担当した会社はほぼ間違いなく巨額の損害賠償を請求されて倒産。開発者はおろか、直接は関係の無い従業員まで路頭に迷うことになっただろう。
 同業者に銀行・金融系システムは切迫した納期と過酷な労働条件での開発が多いと聞く。人々は労働時間が異常に長くなればなるほど創造的な考えを失い、自己防衛的になっていく。
 今回の、「無視された警告メッセージ」にしても、多分、開発者の頭の中には「与える損害の大きさに比例して、警告メッセージのアイコンや警告音を変えるような作りにした方が良いんじゃないか」というアイデアはあった筈だ。顧客側の判断によるものなのか、あるいは「これ以上、仕事を増やしたくない」と思って開発者が口に出さなかったのかは分からないが、結局は、「無駄な警告メッセージが出過ぎて、全部の警告メッセージが無視されるシステム」になってしまったという事だろう。
 
 プログラム開発者に取っての「開発に使える時間の量」は、建築工事での「鉄筋の量」と同じようなものだ。
 外から見たら分からないが、しっかりと時間を取って作ったプログラムと、「こんな顧客と仕事をするのはイヤだ!」と呻きながら大急ぎで作ったプログラムとでは、外から来るインパクト(この場合は誤操作)に対する強度がまるで違う。

 コンピュータが、ここまで生活に密接に関わっている時代、「建築基準法」ならぬ、「ソフトウェア作成基準法」でも作って、「xxxステップ規模の銀行オンラインシステムを開発するには、少なくとも3年の開発期間が必要。」「プログラマに週10時間以上の残業をさせるようなスケジュールを組んではいけない。違反した場合には2年以下の懲役」といった仕組みができたらなと思う。

 で、話が元に戻る。なぜ私がこの件にこだわっているか、だ。
 私としては担当省庁、担当大臣には、こういった「事故を防止する人的、法的なシステム」の事を気に掛けて欲しいのに、「美談ではない。」「ちょっとしたいい話になるような事ではない」とピントのはずれた事ばかり言っていると感じたため、少々逆上したという事だ。

 もっとも、今日、報道されたように「3社が利益を寄付」という事になれば、ピントがずれたどころか「極めて巧妙に計算された政治的な発言」という事になるのか。う〜ん。


 
 


ynoge1 at 08:19 │Comments(0)TrackBack(0)clip!雑感 

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